創作童話「うさぎのしまこ」
大好評、創作童話の第7弾です。
昔々、あるところに子うさぎの男の子、しま子くんが住んでいました。
男の子なのにしま子ですから、これは蘇我馬子や小野妹子と同じ頃の時代です。
しま子くんはまだ生後半年くらいです。好奇心旺盛で、特に海に関心がありました。
いつものように海を見ていると、ワニ(サメ)がやってきました。
「やぁ、しま子くん。また海を見ているね」
「あ、ワニさん。うん。海の果てはどうなっているんだろうと思って」
「じゃぁ、これから海の果てに行ってみるかい? ぼくが連れて行ってあげるよ」
「えーっ。うれしいな。お願いします」
ということで、しま子くんはワニの背中に乗って海の果てに行きました。
そこには海の神の宮殿があり、しま子くんは海の神の娘と仲良しになりました。
「お姫様。ぼくびっくりしたんだけど、海の神の娘はうさぎなの?」
「いえ、そういうわけじゃないの。私は、ここに神様が来れば神様の姿に、人間が来れば人間の姿に、うさぎが来ればうさぎの姿に変身することにしているの。その方がお互いに気楽かと思って。おもてなしよ」
その日から、しま子は手厚い接待を受けました。
金魚の日本舞踊。
カエルたちによる「かえるのうた」の輪唱。
アヒルたちによるラインダンス。
アップです。
しま子くんは楽しい毎日を過ごしましたが、ある時ふと、気づきました。
「家族が心配している……」
そこで、海の神の娘に、家に帰りたいと告げました。
海の神の娘は、こう言いました。
「分かりました。では、この玉手箱を持って行きなさい。蓋は決して開けてはいけないよ」
「はい分かりま……。でかっ!!」
「お姫様。これ玉手箱というよりつづらですよね。大きいのと小さいのとどちらかを選びなさい、なんてことはないのですか?」
「いや、それじゃ、また別の話になっちゃうから」
「分かりました。ではこれで失礼します」
「じゃあね。またワニに乗せていって貰いなさい」
しま子は無事に故郷に帰ってきましたが、なんか様子が違います。
見慣れた家々はすっかりなくなってしまい、懐かしいわが家もあとかたもありません。
そこにたまたま通りかかったうさぎに聞いてみました。
「ぼくの名前はしま子といいます。僕の家族を知りませんか?」
「しま子? 君、男の子でしょ。しま子なの?」
「え? おかしい? 蘇我馬子や小野妹子っていますよね」
「それは随分大昔の人ね。今、子のつく名前は女の人よ。今の帝のおおきさき様は彰子様と定子様よ」
「え? おおきさき様が2人もいらっしゃるの?」
「そうよ。今の帝はね」
しま子は途方に暮れました。
「お父さん、お母さん……」
どうしていいか分からなくなったしま子は、禁じられた玉手箱の蓋を開けてしまいました。
すると玉手箱からは白い煙が海の沖の方にたなびいて行きました。
*あ、白い紙のようなのは煙です。しょぼいですけど。
しま子の毛はあっという間に真っ白になってしまいました。
「うわぁ。お爺さんになっちゃった」
そこに、「しま子! しま子!」という声が聞こえてきました。
目の前には懐かしいお母さんがいました。
「しま子、なにか夢を見ていたの?」
「あっ! 今の夢だったのか。よかった」
しま子はほっとしましたが、自分の体を見て、叫びました。
「わああ! 白いまんまだ。お爺さんになっちゃった。まだ生後半年という若いみやこで」
「みやこ? それ、みそらでしょ。若いみそら。みやことみそらと間違えちゃダメよ。あなた、ずっと冬眠していたのよ。その白いのは冬毛。暖かくなったらまた元のような色になるわ。安心して」
というお話しでした。
創作とは言い難いような。(^_^;
ちなみに、「うさぎのしま子」を省略して「うさのしま子」。それが音韻変化を起こして「うらのしま子」。「子」が女性に使われる時代になったので、「うらのしま太郎」。さらにそれが約まって「うらしま太郎」になったとなむ語り伝えたるとや。
知らんけど。
余談ですが、さきほどのアヒルのラインダンス。大将がいれば真田日本一の兵になります。
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