創作童話

2024年3月17日 (日)

創作童話「上に候ふ御猫は」

 今から1000年ほども昔のことです。時の帝に大層かわいがられている猫がいました。
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 五位の位まで賜わり、命婦のおとどという名で呼ばれていました。

 あるとき、お世話係の馬の命婦がふと見ると、命婦のおとどが横になって寝ています。
Okinamaro02
 「まぁ、なんてお行儀の悪い」と言って起こそうとしますが、命婦のおとどはぐっすり眠っていて、起きる気配もありません。
 そこで馬の命婦は、命婦のおとどをおどかそうと、「翁麻呂、命婦のおとどに噛みつけ」と言って、翁麻呂をけしかけました。

 翁麻呂というのは、中宮様がかわいがっていらっしゃる犬です。
Okinamaro03

 翁麻呂は、お許しが出たので、命婦のおとどに飛びかかりました。
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 命婦のおとどは必死で逃げ、丁度いらしていた帝の懐に飛びこみました。
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 帝は驚き、「馬の命婦よ。これはいかなることか?」とお尋ねになります。
 馬の命婦はかしこまり、訳を話しますと、帝は大変にお怒りになり、「翁麻呂を打ち据え、遠くに追放せよ。馬の命婦は世話役を解任する」と仰せになりました。

 かわいそうに、翁麻呂は引っ立てられて行きました。

 中宮様は、かわいがっていた翁麻呂がいなくなって、とても寂しい思いをしていらっしゃいました。
 事件から3~4日経った頃、犬が激しく鳴く声が聞こえます。

 何ごとかと思って、事情を聞きに遣らせると、犬を散々に打ち据えたところ、死んでしまったので、死骸は捨てたとのことでした。
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 犬を打ち据えたのはこの連中です。
 宮中にもこんなにガラの悪いのがいるのですね。

 その日の夕方、傷だらけの犬がやってきました。翁麻呂によく似ています。
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 「あれは翁麻呂ではないか?」
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 「翁麻呂ならば、名を呼べばやってくるはずだ」ということで、名を呼んでみましたが、反応がありません。
 エサを与えても食べません。
 「では、翁麻呂とは違うのだろう」ということになりました。

 その翌朝、中宮様がふと目をやると、柱の下に犬がうずくまっています。
 「ああ、翁麻呂は今頃来世で何になっていることだろう」と呟かれたところ、その犬は体を震わせて涙を流しました。
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 その犬は翁麻呂だったのです。また打たれるかと恐ろしかったのか、あるいは帝のお怒りを受けた身を憚ってのことでしょうか、一晩、身を隠していたのでしょう。
 女房達は、「翁麻呂は生きていた」「翁麻呂が帰ってきた」と大騒ぎです。
 その様子をご覧になった帝も、翁麻呂をお許しになりました。

 命婦のおとどは、自分のせいでひどい目に遭った翁麻呂を気の毒に思い、傷をなめてやりました。
 翁麻呂も、面白半分に命婦のおとどを追いかけまわしたことを反省して謝りました。
Okinamaro09
 その後、ふたりは仲良く暮らしたとのことです。

 今回のお話し、原作がありますので「創作」童話というには憚りがあります。(^_^;
 脚色童話でしょうか。

2024年3月 3日 (日)

創作童話「雛人形」

 うさぎのぴょん太くんと、彼女のぴょん子ちゃんが一緒に道を歩いていると、道路脇の用水路を金魚の金太郎君達が泳いでいます。
 なにか急いでいるように見えます。
Kaerugami01
 「お~い。金太郎くんたち、どこに行くの?」
 「あ、ぴょん太くん、ぴょん子ちゃん。いやぁ、かえるのけろきちくんのうちにお雛様が飾られているっていうので、みんなで見に行くところなの」
 「あ、けろきちくんのところ初節句だね」
 「お雛様、見たいなぁ」
 「じゃ、僕たちも一緒に行くよ。かえるのお雛様かな。楽しみだなぁ。かえる雛♪ かえる雛♪」

 「こんにちは。けろきちくん」
Kaerugami02
 「あ、金太郎くんたちとぴょん太くん、ぴょん子ちゃん。こんにちは」
 「初節句、おめでとう。お雛様が飾られているっていうので見に来たの」
 「ありがとう」

 「うちのお雛様だよ」
Minihina01
 「かえる雛♪ かえる雛♪ かえ……。かえる雛じゃない!」
 「あ、そうだね。このお雛様は、知り合いのおじさんが用意してくれたんだけど、かえるのお雛様は見つからなかったそうで、人間のお雛様なんだよ。NHK大河が平安時代だし、気に入っているよ」
 「そうなの。素敵なお雛様だよ。御内裏様をよく見せて」
Minihina02
 「男雛が向かって右側なのね」
 「そうなの。その知り合いのおじさんが飾り付けてくれたんだけど、そのおじさん、男雛が右の方が落ち着くんだって」
 「おじさんのこだわりなのね。横からも見せて」
Minihina03
 「すてきね」
 「ありがとう。おじさん、来年は、ぼんぼりの中に豆電球を仕込みたいとか言っていたよ。でも、おじさん口先ばかりだから、どうかなぁ」

 「豪華五段飾りね。五段だと左大臣・右大臣はいないのね」
 「そう。ちょっと残念。あ、「たのしいひなまつり」の歌には「赤いお顔の右大臣」って歌われているけど、おじさんに聞いたら、あれはおかしいって。そんな身分の高い人がSP役をするはずはないので、あれは随身と呼ぶのがいいって。歌詞の間違いみたいだよ」
 「そうか。知り合いのおじさん、あれこれこだわりがあって、面倒臭い人だね」
 「ちょっとね。(^_^)」

 「随身がいないのは寂しいから、知り合いのねこさんに来てもらったの。こんなだよ」
Minihina04
 「ぎゃー。折角のみやびな世界が、一瞬にしてガラが悪くなったね」
 「本当にそう。バランスは大事だね。どっちのねこさんも強そうだけどね。平安貴族から見れば、武士なんて、あんなイメージだったのかも」
 「あ、確かに」

 などなど、みんなの語らいは夜まで続いたのでした。

2024年2月11日 (日)

創作童話「タケミカヅチ異聞」

 うさぎのぴょん太くんが、彼女のぴょん子ちゃんと一緒に道を歩いていると、道路脇の用水路を金魚の金太郎君達が泳いでいます。
 なにか急いでいるように見えます。
Kaerugami01
 「お~い。金太郎くんたち、どこに行くの?」
 「あ、ぴょん太くん。実は、かえるのけろきちくんのところに赤ちゃんが生まれたっていうんで、みんなで見に行くところなの」
 「えっ! けろきちくん、奥さんいたんだ。知らなかったなぁ。じゃ、僕たちも一緒に行くよ。
 かえるの赤ちゃんっていうとオタマジャクシだね。楽しみだなぁ。おたま♪ おたま♪」

 「こんにちは。けろきちくん」
Kaerugami02
 「あ、金太郎くんたちとぴょん太くん、ぴょん子ちゃん。こんにちは」
 「けろきちくんに赤ちゃんが生まれたというので見に来たの」
 「ありがとう。あ、こちら、僕の奥さんのけろ美ちゃん」
 「こんにちは。はじめまして」
 「はじめまして。どうぞよろしく」

 「僕たちの赤ちゃんだよ」
Kaerugami03
 「おたま♪ おたま♪ おた……。おたまじゃない!」
 「あ、そうだね。うちの家は代々オタマジャクシじゃなくて、かえるの姿で生まれるんだよ」
 「へ~。それは珍しいね。どうして?」
 「どうしてかなぁ。それは分からないけど、うちの先祖は神様だったそうだから、それと関係あるかも」
 「えっ? 神様?」
 「そう。昔は常陸国の筑波山に住んでいたんだって。そして、常陸の鹿島からタケミカヅチの神様が白鹿に乗ってヤマトにいらしたときに、その先導をしたんだって。
 で、先導もそうだけど、あちこち視察して、ヤマトが良いって、お勧めしたのもご先祖様なんだよ。たにぐくのさ渡る極みだからね。地理に詳しいよ。
 タケミカヅチ様は白鹿だけど、うちのご先祖は今の奈良鹿の先祖に乗ってきたんだって。
 こんな感じだよ」

 鹿島を出発。
Kaerugami04

 段々接近。
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 ヤマトに到着。
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 「わっ! でかっ! 鹿の顔つき、段々成長してません?」
 「そうなんだ。鹿島からヤマトまで月日が掛かったから、鹿も大人になっちゃったんだ」

 「ヤマトに着いたタケミカヅチ様は春日社の主祭神となり、鹿もかえるも奈良で子孫繁栄して今に至っているよ。
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 筑波に残った一族も四六のガマガエルとして繁栄しているんだ」

 というタケミカヅチ異聞でした。

2024年1月16日 (火)

NHK「鶴瓶の家族に乾杯」に淡路の線香

 1ヶ月ほど前、「うさぎの拾った香木」という創作童話を載せました。
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 壬申の乱の頃、淡路島に住んでいた兎が海岸に流れ着いた香木を拾って、亀と2人でそれを少し燃やしてみたところ、よい香りがしたので、香木と分かり、大海人皇子に献上するという話です。

 さて、昨日のNHK「鶴瓶の家族に乾杯」の旅の舞台は淡路島。
 淡路島ではお線香の生産が盛んだということで、それにまつわるこんな話が紹介されていました。
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Tsurube20240115b
Tsurube20240115c

 ねっ。
 NHKに1ヶ月も先行して、しかもこれを踏まえた童話まで作って、いや、立派です。
 と、自画自賛。♪

2023年12月19日 (火)

ぐんまちゃんのアクスタを作成

 昨日の創作童話には、かめさんと、ぐんまちゃんのアクスタが初登場でした。
Sanai02

 ぐんまちゃんのアクスタ、ちょっと小さいので、他の劇団員さん達とのバランスがあまり良くありません。
Akusuta01
 このアクスタは自作しました。

 使ったのは、レジンによるアクスタ製作キットです。某アマゾンで買いました。
Akusuta02
 アクリルとレジンとは別物ではないかと思ったのですが、ググってみたら、レジンはアクリル樹脂に含まれるようです。

 セットの中身です。
Akusuta03
 右から、作業台、ホワイトマット(封入する紙にレジンが染み込んで滲まないようにするシートです)、台座に固定する凸凹のパーツ、液体レジンを塞き止める部品、液体レジンを固めるUVライト、液体レジンです。

 できあがったぐんまちゃんアクスタ。
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 向かって左側はまあまあですけど、右側はデコボコになってしまいました。
 失敗作ですけど、第1作なので、まあ仕方ないです。次回から頑張ります。

 台座です。
Akusuta05
 極めてシンプルに作りましたが、台座にも絵などを封入できます。
 図工は久しぶりです。
 楽しかったです。

2023年12月18日 (月)

創作童話「うさぎの拾った香木」

 今を去る1350年ほど前のことです。
 淡路島の海岸を1羽のうさぎが歩いていました。
 うさぎの名はサナイ。薪に使う材木を探しに来たのです。
 サナイは大きな材木を見つけました。どこからか流れ着いたのでしょう。
Sanai01
 「うわ! でかっ! こんなに大きい材木ならば、もう今日の材木探しはおしまいだ」

 サナイが材木を引きずって帰ろうとすると、そこにカメの亀足(かめたり)が通りかかりました。
Sanai02
 「サナイくん、ちょっと待った」
 「なに? 亀足くん」
 「いや、その木、ちょっと普通じゃないな。香木じゃないかな」
 「香木?」
 「そう、香木。焚くととってもいい香りがする木だよ。推古天皇の3年には、この淡路島に香木が流れ着いているんだ」
 「推古天皇の3年?」
 「今から80年近く前だね」
 「亀足さん、随分古いことを知っているんだね」
 「そうさ。あの時はもう大人になっていたからね」
 「あ! そういえば、鶴は千年、亀は万年って言うもんね」
 「うん。さすがに、万年は無理だけどね」

 ふたりは、その材木の端の方を少し折って燃やしてみました。
 するとえもいわれぬ良い香りが漂いました。
 「ああ。思った通りだ。これは香木だよ。それも随分高級な」
 「推古天皇3年の時の香木はどうなったの?」
 「あの時の香木は朝廷に献上したそうだよ。これもそうしたらどうだろう。でも、皇太子さまと皇太弟さまとが戦をなさっているそうだけど」
 そこに、かえるのケロ麻呂くんが通りかかりました。
Sanai03
 「あっ、ケロ麻呂くん。戦がどうなったか知らない?」
 「ああ、戦は皇太弟さまの勝利に終わったよ」
 「さすが、ケロ麻呂くんは情報が早いなぁ」
 「へへ。たにぐくのさ渡る極みだからね」

 「よし。決まったね。皇太弟さまの元に、戦勝祝いに献上したら良いんじゃないかな」
 「わかった。そうするよ。でも、皇太弟さまに直接だなんて考えられないし、どうしたらいいの?」
 「そうだなぁ。今、皇太弟さまの将軍、大伴吹負さまが、難波の小郡に駐屯していらっしゃるから、吹負さまを通して献上したらいいんじゃないかな」
 「ありがとう。将軍さまだって畏れ多いけど。ご家来にでもね」
 「そうだね。ここから難波は目と鼻の先だけど、海はどうやって渡る?」
 「それはワニ(サメ)くんに頼んでみるよ」
 「え! うさぎとワニって、ケンカしてたんじゃないの?」
 「うん。大昔にうさぎがワニをだまして、皮を剥かれたことがあったんだけど、大国主さまが仲裁してくださったんだ。それで、まずはうさぎが悪いけれども、ワニもやりすぎだという御裁定で、以後、ワニくんはたいていのお願いを聞いてくれているんだ。今回も頼んでみるよ」

 うさぎのサナイくんは、海岸でワニくんにお願いしました。
Sanai04
 「よし、分かった。お安いご用さ。君もその木も運んで上げよう」
 「ありがとうワニくん。恩に着るよ」

 こうして、サナイくんは無事に海を渡ると、難波の小郡に行きました。
 小郡の宮には門番が立っていました。
 サナイくんは、自分の名前と用件を告げ、吹負さまへの取り次ぎをお願いしました。
Sanai05
 「承知しました。吹負さまには確かにお渡しします。あ、僕の名前はぐんまちゃんです」
 「どうぞよろしくお願いします」
 「任せて。君は淡路島から来たんだね。ぼくは、上毛野国から来たんだよ。秘境と呼ばれるくらい遠い国だよ。皇太弟さまが挙兵されるというので、国造さまたちが相談して、皇太弟さまをお助けすることにしたんだ。ぼくたちは、大伴吹負さまが乃楽山の戦いに負けて、倭国をさまよっているときに、吹負さまの軍に合流して、巻き返しに成功したんだ。僕はそれ以来、吹負さまのおそば近くにお仕えしているんだよ」

 こうして、サナイくんが拾った香木は皇太弟さまに献上されました。
 やがて皇太弟さまは即位されて帝になりました。天武天皇です。
 この香木は大変に貴重なものとされ、三種の神器とは別に、天武直系の草壁皇子、文武天皇、聖武天皇に受け継がれました。
 やがて、皇位が天武系から天智系に移るに及び、この香木は聖武天皇遺愛の品として東大寺正倉院の宝庫に納められ、今に至っています。
 香木には、のちに「蘭奢待」という名が付けられました。
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 この文字には、「東大寺」の3文字の他に、発見者であるうさぎの「サナイ」の名も隠されているのです。
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*これはあくまで創作童話ですので、良い子の皆さんは、今読んだことを信じてはいけません。忘れてください。

2023年10月22日 (日)

創作童話「スピスピ、親子対面」

 大好評、創作童話の第9弾、前回の続きです。

 5億年前に生きていた古代魚、サカバンバスピスの女の子が、大地震で生じた時空の裂け目を通って現代の大和郡山市に姿を現しました。
 その女の子は、用水路で暮らす金魚の5兄弟、金太郎くんたちと出会い、仲良く暮らしていました。
Supisupi05
 しかし、両親とも離れ離れになって、5億年も後の時代にたった1人で迷い込んだ寂しさや不安感は拭いようもありませんでした。

 ちょうどその頃、琵琶湖のほとりを歩いていたうさぎのぴょん太くんは、波のまにまに魚のひれのようなものが動いているのを見つけました。
Supisupi06
 「あれ? あれはワニくん(サメ)じゃないかなぁ。
  でも、因幡の沖合いあたりにいるはずのワニくんが琵琶湖にいるというのも変だなぁ。
  ま、呼んでみよう」
 「おーい、ワニくん? ワニくんにしちゃ、ちょっと太ったかい?」
 「呼んだかい? 太ったのは、ここの魚が美味しいからだよ」

 その魚はこちらに向かって泳いできました。
Supisupi07
 顔がワニくんとは違うようです。
 「あれ? 顔の両側にあったはずの目が、前に来ちゃってるね」
 「ああ。君の顔がよく見えるようにね」
 「鋭い歯が生えていた大きな口も、小さくなっちゃったね」
 「ああ。君を怖がらせたくないからね」

 そこに、もう1匹、似たような魚が泳いできました。
Supisupi08
 「あんた! 何を赤ずきんちゃんの狼のマネなんかしてるのさ」
 「あ。ちょっと乗ってしまって」

 「ワニくんじゃなかったんだ。おふたりご夫婦? 失礼ながら、初めて見るお顔だけど」
 「あ、はじめまして。
  僕たちは海で暮らしていたんだけど、大地震が起きて、海が裂けて、こんな全く知らないところに来てしまっていたんだ。
  娘とも生き別れになってしまって」
 「へー。不思議な話だね。
  あ、向こうからやってくるのは、かえるのけろきちくんじゃないか。
  彼は物知りだから、何か分かるかもしれないよ。たにぐくのさ渡る極みだからね。
  おーい! けろきちくん」
Supisupi09
 やってきたけろきちくんに、ぴょん太くんは今聞いた話をしました。
 「何だって! 同じような話をしばらく前に聞いたよ。
  おさかなさん達は、5億年前の古代魚、サカバンバスピスです。
  娘さんらしき子にも、大和郡山市の用水路で遭いました。
  元気でしたよ」
 「なんと! なんと! それは嬉しいこと。今すぐにでも会いに行きたいです」
 「う~ん。ここからだと、瀬田川を通って、いったん大阪湾に出て、そこから大和川を逆上る感じかなぁ。
  ちょっと大変。むしろ、娘さんにこっちに来てもらう方が早いかも。
  ちょうど、空飛ぶぐんまちゃんに会ったところなんで、彼に連れてきてもらうのが早そうですよ」
 「えー。ぐんまちゃん、こっちに来てるの?」
 「うん。学会発表だって」
 「え! ぐんまちゃんが発表したの?」
 「そうなんだ。ぐんまちゃんすごいよ」
 「邪馬台国は群馬にあったとか。そういう内容?」
 「ううん。大昔に今の滋賀県の地下が大爆発を起こして、その岩盤や土砂などがそっくり飛んで行って淡路島になった。
  その跡地には水が溜まって琵琶湖になった、っていう発表」
 「それは壮大だねぇ」
 「うん。琵琶湖と淡路島の形と大きさが、偶然とは思えないほど似ているからって」

 「あ。ぐんまちゃん、来てくれた。じゃぁ、お願いね」
Supisupi11
 という次第で、ぐんまちゃんがひとっ飛びして、スピスピを連れてきてくれました。
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 そして、めでたく、親子対面。
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 「おお! 元気そうで良かった」
 「わー! お父さん、お母さん。会いたかったよ」
 「これで、また3人で暮らせるね。
  これも皆さんたちのお陰です。
  特に、ぐんまさんありがとうございました」
 「いえいえ。あ、ぼく、ぐんまちゃん。ぐんまさんじゃないので、そこんとこよろしく」

 5億年の時空を超えて、親子の対面が叶い、何よりでした。
 ただ、大和郡山では、後に残った金太郎くんが寂しい思いをしていました。
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 「折角仲良しになれたのに、寂しいね」
 「うん。寂しい。でも、仕方ないよね」
 「仕方ないね」
 「そうだ、今度会いに行こうか」
 「そうだね。遠いみたいだけど、いつかきっとね」

2023年10月 3日 (火)

創作童話「金魚とスピスピ」

 待望の創作童話の第8弾です。

 金太郎くんたち5兄弟が、いつものように用水路を泳いでいると、今まで見たこともないような魚に出会いました。
Supisupi01
 サメのようでもあり、フグのようでもあり、ナマズのようでもあります。
 「こんにちは。はじめまして」
 「あ、こんにちは。はじめまして」
Supisupi02
 「失礼だけど、君はだあれ?」
 「私、どこかの海で暮らしていたんだけど、大地震が起きて、海が裂けて、その裂け目に落ちてしまったの。そして、気がついたらここにいたのよ」
 「へー。不思議な話だね。海が裂けるって、聞いたこともないよ」

 「あ、かえるのけろきちくんだ。彼は物知りだから、何か分かるかもしれない。おーい。けろきちくん、ちょっと来て」
 「なんだい?」
Supisupi03
 「実は、かくかくしかじか」
 「そうかぁ。あっ! 君は!……。まさか!……」
 「なに、なに?」
 「いや、彼女、サカバンバスピスじゃないかな。5億年前の古代魚だよ。
  海が裂けてできた時空の裂け目に落ちて、この用水路に現れたんじゃないかな」
 「えー。5億年前の古代魚? じゃぁ、彼女は僕たちのご先祖?」
 「いや、そうとも限らないんだ。サカバンバスピスが天智天皇だとして、君たちの先祖が天武天皇なら、直接のご先祖じゃないよね。そういうこと」
 「ふ~ん。いつもながら、君は物知りだねぇ」
 「たにぐくのさ渡る極み、だからね。いや、サカバンバスピスは去年あたりからネットなどで話題になっているんだよ。かわいいからね。
  ま、僕の知り合いのおじさんは全然知らなかったらしいけど」
 「知り合いのおじさん?」
 「そう。仕事が溜っているらしいんだけど、毎日欠かさずブログを書いているヘンなおじさん」
 「ふ~ん。それはヘンだね」
Supisupi01
 「あ、挨拶が遅くなったね。僕は金太郎。力自慢だよ」
 「僕は金次郎。勤勉で勉強家」
 「僕は金三郎。キャラはまだよく分からないんだ」
 「僕は金四郎。正義感の強い遊び人で、腕も立つ」
 「僕は金五郎。落語が好きで、噺家になりたいと思っているよ」
 「という5人兄弟だよ。君の名前は?」
 「私には名前はないの。5億年前には、まだ名前ってなかったのよ」
 「そうか。じゃぁ、スピスピはどう?」
 「ありがとう。じゃぁ、私は今日からスピスピね」
 「うん。じゃぁよろしく。で、これからどうするの? 5億年前の世界に戻れるような方法を考える?」
 「そうねぇ。でも、それはとても難しいと思うから、ここで頑張ってみる。私の他にも時空の裂け目に落ちてしまった仲間もいると思うので、その仲間が来るかもしれないのを待つわ」
 「わかった。じゃ、またね」
 「ありがとう。またね」

 金太郎くんたちは家に帰るとすぐ、お母さんにこの話をしました。
Supisupi04
 「へぇ。不思議なことがあるのね。新しいお友達ができて良かったわね」
 「うん。とってもかわいい子だよ。でも、5億年前は天皇だったんだって。で、僕たちのご先祖も天皇だったらしいよ」←違
 「名前、なんていうの」
 「スピスピだよ。僕たちが付けたの」
 「その古代魚の名前は?」
 「あ、けろきちくんはすらすらと言ってたけど、長くて憶えられなかった」
 「なんとかかんとかスピスピ」
 「いや、濁りがあったよ。なんとかかんとかズビズバじゃなかった?」
 「う~ん。濁り、あったね」
 「オンベレブンスピスパじゃなかった?」
 「あ、それなら濁りも入っているね。それだ、それだ」
 「じゃ、忘れないように繰り返し唱えてみよう」
 「オンベレブンスピスパ」
 「オンベレブンスピスパ」
 「オンベレブンスピスパ」
 「よし。ばっちりだ」

 *正しくは、サカバンバスピスである。

 ということで、新しい劇団員をお招きしたことで、その紹介です。
 その割には長くなってしまいました。
 スピスピはまた登場することでしょう。

2023年9月 6日 (水)

創作童話「うさぎのしまこ」

 大好評、創作童話の第7弾です。

 昔々、あるところに子うさぎの男の子、しま子くんが住んでいました。
Shimataro01
 男の子なのにしま子ですから、これは蘇我馬子や小野妹子と同じ頃の時代です。
 しま子くんはまだ生後半年くらいです。好奇心旺盛で、特に海に関心がありました。

 いつものように海を見ていると、ワニ(サメ)がやってきました。
Shimataro02
 「やぁ、しま子くん。また海を見ているね」
 「あ、ワニさん。うん。海の果てはどうなっているんだろうと思って」
 「じゃぁ、これから海の果てに行ってみるかい? ぼくが連れて行ってあげるよ」
 「えーっ。うれしいな。お願いします」

 ということで、しま子くんはワニの背中に乗って海の果てに行きました。
 そこには海の神の宮殿があり、しま子くんは海の神の娘と仲良しになりました。
Shimataro03
 「お姫様。ぼくびっくりしたんだけど、海の神の娘はうさぎなの?」
 「いえ、そういうわけじゃないの。私は、ここに神様が来れば神様の姿に、人間が来れば人間の姿に、うさぎが来ればうさぎの姿に変身することにしているの。その方がお互いに気楽かと思って。おもてなしよ」

 その日から、しま子は手厚い接待を受けました。
 金魚の日本舞踊。
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 カエルたちによる「かえるのうた」の輪唱。
Shimataro05

 アヒルたちによるラインダンス。
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 アップです。
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 しま子くんは楽しい毎日を過ごしましたが、ある時ふと、気づきました。
 「家族が心配している……」
 そこで、海の神の娘に、家に帰りたいと告げました。
 海の神の娘は、こう言いました。
 「分かりました。では、この玉手箱を持って行きなさい。蓋は決して開けてはいけないよ」
 「はい分かりま……。でかっ!!」
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 「お姫様。これ玉手箱というよりつづらですよね。大きいのと小さいのとどちらかを選びなさい、なんてことはないのですか?」
 「いや、それじゃ、また別の話になっちゃうから」
 「分かりました。ではこれで失礼します」
 「じゃあね。またワニに乗せていって貰いなさい」

 しま子は無事に故郷に帰ってきましたが、なんか様子が違います。
 見慣れた家々はすっかりなくなってしまい、懐かしいわが家もあとかたもありません。
 そこにたまたま通りかかったうさぎに聞いてみました。
 「ぼくの名前はしま子といいます。僕の家族を知りませんか?」
 「しま子? 君、男の子でしょ。しま子なの?」
 「え? おかしい? 蘇我馬子や小野妹子っていますよね」
 「それは随分大昔の人ね。今、子のつく名前は女の人よ。今の帝のおおきさき様は彰子様と定子様よ」
 「え? おおきさき様が2人もいらっしゃるの?」
 「そうよ。今の帝はね」

 しま子は途方に暮れました。
 「お父さん、お母さん……」
 どうしていいか分からなくなったしま子は、禁じられた玉手箱の蓋を開けてしまいました。
 すると玉手箱からは白い煙が海の沖の方にたなびいて行きました。
Shimataro09
 *あ、白い紙のようなのは煙です。しょぼいですけど。

 しま子の毛はあっという間に真っ白になってしまいました。
Shimataro10
 「うわぁ。お爺さんになっちゃった」

 そこに、「しま子! しま子!」という声が聞こえてきました。
 目の前には懐かしいお母さんがいました。
Shimataro11
 「しま子、なにか夢を見ていたの?」
 「あっ! 今の夢だったのか。よかった」

 しま子はほっとしましたが、自分の体を見て、叫びました。
 「わああ! 白いまんまだ。お爺さんになっちゃった。まだ生後半年という若いみやこで」
 「みやこ? それ、みそらでしょ。若いみそら。みやことみそらと間違えちゃダメよ。あなた、ずっと冬眠していたのよ。その白いのは冬毛。暖かくなったらまた元のような色になるわ。安心して」

 というお話しでした。
 創作とは言い難いような。(^_^;

 ちなみに、「うさぎのしま子」を省略して「うさのしま子」。それが音韻変化を起こして「うらのしま子」。「子」が女性に使われる時代になったので、「うらのしま太郎」。さらにそれが約まって「うらしま太郎」になったとなむ語り伝えたるとや。
 知らんけど。

 余談ですが、さきほどのアヒルのラインダンス。大将がいれば真田日本一の兵になります。
Shimataro12

2023年8月16日 (水)

創作童話「隠れ里の決闘」

 久しぶりの創作童話です。第6弾になります。

 うさぎの生き肝を食べると空を飛べるようになる、などというデマが広まり、命を狙われることを恐れたうさぎたちは、人里離れた隠れ里に暮らすようになりました。
 腕に自慢の5人のねこたちが用心棒を引き受けてくれました。
 名付けて「神セブン」。
Kakurezato08
 5人しかいないのですが、あと2人加わることを願って「セブン」です。
 「七人の侍」に憧れているとのことです。
 詳しくはこちらをご覧ください。

 たにぐくのさ渡る極み、諸国をめぐっているカエルのけろきちくんは、3ヶ月ぶりにうさぎの隠れ里に行ってみることにしました。
 連絡したら、うさぎのぴょん太くんが迎えに来てくれていました。
Kakurezato03
 「やぁ、ぴょん太くん、久し振り。元気?
 神セブンはちゃんと7人になったのかな?」

 「久し振りだね。けろきちくん。
 用心棒の件、ちょっと厄介なことになってしまって。
 もの凄く柄の悪いのが3人やってきて、雇ってくれって言うんだよ。
 こんな連中だよ。」
Kakurezato09
 「わ! ほんとにガラ悪いね。
 ま、加わってくれたら、用心棒は8人になるから、神セブンじゃなくて里見八犬士になるね。でも、ねこだからなぁ。ねこが八犬士はおかしいよね。」
 「いや、そういう問題じゃなくて。あのガラの悪さ。いくら強そうでも、ああいう連中のお世話にはなりたくなくて。
 それで、知り合いの親分に相談に行ったの。鰹一家の親分だよ。この親分もガラ悪いんだけど。(^_^)」
Nekooyabun01
 「相談したら、親分も、やめた方が良いって。
 ちょうど親分のところにいる浪人さんに頼んで、その3人を追い払ってもらうことになったんだ。このご浪人さんだよ。」
Nekoronin

 「けろきちくん、ちょうどいいところに来たよ。これから3人組とご浪人さんとが戦うんだ。」
 「ひえー! ご浪人さんも強そうだけれど、3対1だからなぁ。大丈夫かなぁ。」
Kakurezato10
 「おい。おめえ、いい度胸してるじゃねえか。たった1人で、俺たち3人に勝てると思ってるのか?」
 「……」
 「黙ってねえで、何とか言え。」
 「……」
 「やっちまえ!」

 浪人が少し体を動かしたと思ったら、3人組はその場に倒れ伏しました。
Kakurezato11

 「つ、強い!」
 「ご浪人様、ありがとうございます。3人とも死んじゃったんですか?」
 「いや、峰打ちだ。そのうち息を吹き返すだろう。俺もムダな殺生はしたくない。
 それに、あいつらがこの噂を広げれば、もう変なヤツらがこの里に来ることもねえだろう。」
 「ご浪人様、ありがとうございます。どうぞこの里の用心棒になってくださいまし。
 大したお礼はできませんが、ごはんは3食食べ放題。3食とも魚は付けます。そして、チュールも食べ放題でいかがでしょうか」
 「3食食べ放題はありがたい。ではしばらくお世話になろう。ただ、チュールはいらねぇ。俺がチュールを食っていたらサマにならねぇ。」
 「わかりました。ありがとうございます。
 遅くなりましたが、ご浪人様のお名前は?」

 浪人はあたりを見回すと、棗(なつめ)の木に目を留める。
 「俺の名は、棗三十郎。とでも呼んでくれ。」

 という次第で、うさぎの隠れ里は強力な用心棒を加えることができたのでした。

2024年4月
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