文学

2022年5月25日 (水)

去来本『おくのほそ道』

 去来本『おくのほそ道』の複製を買いました。
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 『おくのほそ道』が好きなのと、苦手なくずし字の勉強をしようと思ったのと、安かったのと、それらが理由です。

 帙に貼ってあった奥付。
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 昭和8年、岩波書店の発行で、コロタイプ印刷です。

 冒頭。
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 「月日は百代の過客にして」という有名な文で始まっています。

 巻末。
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 元禄8年に嵯峨の落柿舎で書写した旨の去来の奥書があります。
 1行目には「誤字・落字のおほからん事をおそれ侍るのみ」とあります。
 謙遜の気持ちもありましょうが、注意深く書写したつもりでも、誤った本文を後世に残してしまうことを恐れたのでしょうね。

 先日の大河がらみで、平泉の部分。
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 1行目から、

  偖(さて)も義臣すぐつて此城に
  こもり、功名一時の叢となる。国破
  れて山河あり、城春にして草
  青みたり、と笠打敷て、時のう
  つるまで泪を落し侍りぬ。
    夏草や兵どもが夢の跡

 読めない文字もあって、活字本を参照しました。
 つくづく名文と思います。

2022年5月12日 (木)

再来年の大河は紫式部。&定子・彰子の名

 再来年のNHK大河は紫式部の一生を描く「光る君へ」で、主演は吉高由里子とのことですね。
 昨日のSNSはその話題で盛り上がっていました。
 平将門が主人公だった「風と雲と虹と」はありましたが、平安中期の貴族社会を描くのは初めてですね。
 これが成功すれば、「飛鳥・奈良時代も」ということになるかもしれませんね。期待したいです。
 大河に付きものの合戦はなさそうです。陰謀渦巻く権力闘争は出てきましょうか。
 暗殺はあまりなさそうなので、善児のような人物は登場しないかも。

 紫式部の名前は「まひろ」という設定だそうで。
 確かに、最初から「紫式部」という名で登場はできませんので、何らかの名前は必要ですね。
 「まひろ」は、美称の接頭辞「ま」+形容詞「広し」の語幹でしょうか。
 当時の女の人の本名は知られませんので、こういう名が一般的かどうかは分かりませんけど、アリかと思います。

 万葉集の歌からは、男性が女性の名を尋ねることは求婚を意味し、女性が名を教えれば求婚を承諾、教えなければ求婚を拒絶したことが知られます。
 そして、女性の名は親と配偶者くらいしか知らなかったと思われます。
 といって、それでは不便なので、女の人は普段は通称(ニックネーム)で呼ばれていたのでしょうね。

 大宝年間の戸籍や奈良時代の戸籍が正倉院に残っていて、そこには女性の名も載っています。
 現代だと、戸籍に載っている名が本名ということになりますが、正倉院の戸籍もそうなのかどうか。
 古代の戸籍は主に徴税のために作成されたものなので、行政的には住民の男女の別と年齢が分かれば十分なので、掲載人名は必ずしも本名である必要はなく、通称でも良かったと考えます。

 平安時代も、女性の名についての意味は同様だったとすれば、女性は通称で呼ばれていたことでしょう。
 紫式部も清少納言もそうですね。
 ここで、定子や彰子はどうなのかという問題が生じます。
 皇后・中宮という公人中の公人なので、名が知られているという考え方もあると思いますが、公人とはいえ、天皇の奥さんの名前が公にされているというのも不思議なことです。
 そう考えると、定子や彰子という名は公的な通称なのかと。
 本名は親と天皇しか知らない。

 こういう考え方、どうなのでしょう。
 不勉強で全く知らないのですが、誰かが既に言っているのか、誰も言っていないのか、誰かが言ってすでに否定されているのか。
 常識なのか、非常識なのか。
 妄言でしたら、多謝です。

 絵がないと寂しいので、架蔵の双六などから少し貼っておきます。

 明治41年の雑誌『少女界』新年号の付録「歴史双六」から。
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 絵は、鏑木清方・宮川春汀の合作です。この絵をどちらが描いたのかは分かりません。

 大正2年の雑誌『婦人世界』新年号の付録「日本名婦双六」から。
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 どちらの双六も、紫式部の枠で「1」が出ると「清少納言」の枠に飛ぶことになっています。

 年代不詳の絵はがき「近江歴史」から。
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 「紫式部上東門院の命を受け石山寺に参籠して源氏物語を著し之を上つる文辞絶妙今に至り範を垂る」とあります。

 昔のものはあれこれ面白いです。

2022年4月10日 (日)

『出雲国風土記-地図・写本編-』

 八木書店に直接予約注文していた『出雲国風土記-地図・写本編-』(島根県古代文化センター編)が昨日届きました。
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 3月31日刊行予定だったのが、校正段階で大幅な修正が生じたために刊行予定が遅れたという、御丁寧なメールも届きました。
 より良い内容にするための遅延ならば大歓迎です。

 地図編の一部。
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 写本編の一部。
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 写本編のアップ。
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 写本編は、このように主要7写本の校本です。
 形式は『諸本集成 古事記』と同様で、出雲国風土記の全文を1行ずつ切り貼りする形で、諸本を対照させています。
 今後、出雲国風土記の本文研究には欠かせない文献になることでしょう。

2022年3月12日 (土)

浦島太郎+うさぎの端布

 このような端布を入手しました。
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 サイズは、おおよそ37×55センチです。

 絵柄はこれが1単位になります。
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 浦島太郎ですね。

 主役のアップ。
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 亀に乗る浦島太郎のうしろにうさぎがくっついています。
 入手したポイントはこのうさぎでした。何ともかわいいです。
 しかし、このうさぎ、なんでしょ?(^_^;

 浦島の話は、万葉集、日本書紀、風土記逸文に載っていて、さらに平安時代以降にも作品があります。
 でも、そんな中にうさぎの登場するものはありましょうかね。

 浦島の話と稲羽の素兎とが合体したのかも。
 浦島太郎が亀とうさぎを助けて、海神の宮殿に行くとか。
 しかし、海神の宮殿には一尋ワニがいたりして、うさぎはイヤでしょうね。

 この布は、子供の着物に使ったのでしょうね。
 子供はうさぎが好きなので(←たぶん)、うさぎを描き加えたのかも。

 あとはこんな絵とか。
Urashimahagire04
 鯛は分かります。うしろにいるのはかつおでしょうかね。
 魚、よく分かりません。

 こんな絵とか。
Urashimahagire05
 これはタコと、なんでしょ? フグでしょうか。
 魚、よく分かりません。

 楽しい端布です。

2021年12月10日 (金)

みやびなお煎餅・あられ

 お歳暮に源氏物語にちなんだお煎餅・あられの詰め合わせを頂きました。
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 京都の会社です。みやびです。
 ちょっと光量不足。

 これも。
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 ぼーっと生きているので、何も気づかずにうっかり1~2枚食べてしまったのですが、それぞれ味が違うのでした。

 おいしく頂いています。

2021年4月 8日 (木)

『現代語古語類語辞典』

 2日連続で本の紹介になります。
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 最近の刊行ではなく、2015年9月の刊で、版元は三省堂です。

 どういう辞書であるのか、箱の裏側に書いてあります。
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 端的に言えば、現代語から古語が引ける辞書です。
 この編者には、かつて同様の編著がありました。それの大幅な改訂版で、古語を時代別に分けたのが新しい部分です。
 大変な労作と思います。

 「うつくしい」の部分。
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 ここで切ってしまいましたが、このあと、「-・い色つや」「-・い顔」「-・い声」「-・いこと」などの句が3段にわたって続きます。

 「かわいい」の部分。
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 「りょうりにん」の部分。
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 上代には、ちゃんと「かしはで」が載っています。

 この辞書、かなり楽しいです。
 昨日買ったのですが、うっかり寝しなに開いてしまったために、寝るのがだいぶ遅くなってしまいました。(^_^;

2020年11月12日 (木)

菅原孝標の娘の上京1000年

 毎月愛読しているJR東日本の新幹線の車内誌『トランヴェール』の11月号の特集は「『更級日記』でめぐる、千葉・茨城」です。
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 9月号は『奥のほそ道』の俳句の英訳でしたし、しばしば古典を取り上げてくれるのは嬉しいことです。

 今号にはこんな解説もありました。
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 菅原孝標の娘が上京してからちょうど1000年なのですね。
 これは知りませんでした。

2020年10月13日 (火)

さわらぎ

 昨日に続き、また頂き物のお菓子です。

 箱。
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 みやびです。

 歌は百人一首でした。
 女性歌人の歌と絵とが並んでいます。
 次のような歌でした。
 「花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに」小野小町
 「あらざらむこの世のほかの思ひ出に今ひとたびの逢ふこともがな」和泉式部
 「有馬山猪名の笹原風吹けばいでそよ人を忘れやはする」大弐三位
 「大江山いく野の道の遠ければまだふみもみず天の橋立」小式部内侍

 中身です。
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 中身もまた風雅です。いずれも秋らしい絵柄ですね。
 赤い柿が印象的です。

 さはさりながら、やはり、うさぎ。(^_^)
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 親子のうさぎでしょうか。月を見ています。
 月と兎もよく似合います。

 このお菓子の名前「さわらぎ」とは?

 日国には次のようにあります。用例は省略しました。

 >さわら‐ぎ[さはら‥] 【椹木】〔名〕「さわら(椹)」に同じ。

 ということで、「さわら」を引いてみました。

 >さわら[さはら] 【椹】〔名〕ヒノキ科の常緑高木。各地で広く植栽されるが、本州や九州に自生が知られている。高さ三〇~四〇メートル、径一メートルに達する。ヒノキに似ているが樹形はより鋭い円錐形をなす。葉は扁平な鱗状で小枝や細枝に対生状に圧着し、小枝がちょうど一枚の葉のようになる。葉の先端はとがり、裏面の白斑がいちじるしい。雌雄同株。果実は球形の毬果で径七ミリメートルぐらい、一〇または一二個の鱗片からなり、黄褐色。種子は長さ約二ミリメートル、幅約四ミリメートルで翼がある。材はヒノキより軟らかいが湿気に強いことから、桶(おけ)材や、障子・ふすまの組子に使う。漢名に花柏を当てるが誤用。さわらぎ。学名はChamaecyparis pisifera

 桶の材に使うということですね。このお菓子の色合いなどがサワラ材のイメージと重なることによる命名なのでしょうかね。

2020年9月 3日 (木)

兵どもが夢の跡

 昨日乗った新幹線に、車内誌『トランヴェール』の9月号が置いてありました。
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 今号の特集は「『おくのほそ道』翻訳トラベル」です。
Trainvert20209b

 『おくのほそ道』の英訳は何種類か刊行されているのですね。
 この特集の前半では、『おくのほそ道』で句がよまれている土地を、アーサー・ビナード氏と深沢眞二氏(連歌・俳諧の研究者)が訪れて、その句の英訳を鑑賞します。範囲は白河から松島までです。
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 上の画像の右側の写真は、大高森から撮した松島です。大高森については、以前、三友亭主人さんがブログで触れられていて、その時に初めて名前を知りました。この写真のキャプションを見て、「おお、これが」と思いました。といっても、大高森から撮した写真ですので、大高森自体は写っていないのですが。

 両氏。
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 後半では、アーサー・ビナード氏が新訳に挑みます。範囲は平泉から象潟までです。
Trainvert20209e

 私は英語が苦手で、せっかくの特集が猫に小判だったのですが、それでも大変に興味深く読みました。

 「閑かさや岩にしみ入る蝉の声」をビナード氏は、
 「Up here,a stillness――the sound of the cicadas seeps into the crags」と訳しています。

 「閑か」を silence ではなく、stillness と訳したのはビナード氏の工夫のようです。

 英語に関することではありませんが、「夏草や兵どもが夢の跡」の解釈について、この「夢」は芭蕉の見た夢ではないかという説が紹介されていました。芭蕉が兵たちの夢を見た。はっと気づくと眼前には夏草がそよぐばかりであった、という解釈です。芭蕉の時代、「夢」は眠っているときに見る夢だけを指し、将来の希望という意味はなかったというのが根拠の1つになっているようです。

 考えたこともない解釈で、新鮮でした。

 日本の古典文学と英語という、その2つを組み合わせた、なんともアカデミックな特集です。

2020年7月19日 (日)

二千円札が生まれて20年

 もう世間から忘れ去られてしまった感のある二千円札ですが、今日で二十歳になりました。
 二千円札は、2000年の7月19日に発行されたそうです。
2000en
 珍しくて、手に入っても使わずに何枚か死蔵していました。
 そういう人が多かったせいでもないでしょうが、流通しませんでしたね。

 ATMが対応しなかった、自販機が対応しなかった、レジの機械に置き場がなかった、などもありましょうが、1と5があれば十分で、2は必ずしもなくても良かったということでしょうかね。五千円札がないと不便ですけど、二千円札は必ずしもなくてもよいのかも。
 二円玉、二十円玉、二百円玉もありませんけど、用は足りていますものね。

 二千円札のファンとしては残念なことです。

 今日が二千円札の誕生日だということを知ったのは、またまた「ねこあつめ」の「今日のあいことば」でした。
 今日の「今日のあいことば」は「鈴虫」です。
 鈴虫が盛んに鳴くようになるのはもう少し先のような気がしますし、なぜ今日なのか分かりませんでした。

 そうしたら、毎日拝見している「ねこあつめ今日のあいことば」さんのツイッターで、二千円札のことが指摘されていました。
 二千円札の裏面に描かれているのが源氏物語の鈴虫の巻で、そして、二千円札の発行が2000年7月19日なのでした。これで間違いありません。
 油断のならない「ねこあつめ」です。
 そして、「ねこあつめ今日のあいことば」さんのツイッター、よくぞ見破ったものと思いました。

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