史料・資料

2025年1月19日 (日)

明治37年の「因幡の兎」

 明治37年発行の『高等小学読本一』を入手しました。
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 最初に載っている話は「因幡の兎」です。
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 概ね古事記に準拠していますが、話の順序を少し変えたところがあります。

 次の見開き。
M37koto1c

 右ページの最後の部分を拡大します。
M37koto1d
 兎が住んでいた島は「沖の島」ではなく「隠岐の島」となっています。
 また、ワニは「わにざめ」となっています。

 その次の見開き。
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 セリフは、「 」で括った上に、1字下げで書かれています。
 左ページの最後の行に「がまのほ」とあります。蒲の花粉ではありません。

 さらにその次の見開き。
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 表記に関しては、先日の同じく明治37年発行の修身の教科書と同じく、オ段長音が長音記号で表記されています。
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 歴史的仮名遣いの中に長音記号が現れると、なんかミスマッチといいますか、違和感があります。←楽しいです。(^_^)

2025年1月15日 (水)

「ハナ ハト マメ マス」

 昨日に続き、また昔の教科書を取り上げます。
 今日のは、大正7年の『尋常小学国語読本 巻一』です。
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 右側中央に何か跡があります。
 この教科書を右手に取ってみると、この跡の部分に丁度右手の親指が当たります。
 この教科書の持ち主はよく勉強したのでしょう。
 裏表紙に持ち主の名前が書いてあり、つま子さんです(←個人情報ですので、名字は省略します。大正初め生まれで「子」のつく名前はハイカラだったかもしれません)。

 これは例の「ハナ ハト マメ マス」の教科書です。
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 私の亡き両親は大正12年の生まれですので、この教科書を使ったのではないかと思います。
 しかし、昔の人は「ハナ ハト マメ マス」だの、「サイタ サイタ サクラガ サイタ」だの、最初に習った教科書の冒頭を良く憶えているものです。
 私なんぞ、全く記憶はありません。(^_^;

 「ハナ ハト マメ マス」の先はどうなっているのか知りませんでしたが、この様になっていました。
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 そして、さらに先には猿蟹合戦の話が載っています。
 その末尾はこうでした。
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 さりげなく書いてありますけど、子ガニが猿の首を挟み切ったのですね。
 さすがにその絵はありませんけど。

2025年1月14日 (火)

長音表記&リンコルン

 明治時代の修身の教科書を入手しました。
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 明治37年発行の高等小学修身書の第2学年用です。

 中身はこんな感じです。
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 右ページから左ページの4行目までは第十課「忍耐」の後半で、前野良沢と杉田玄白とを中心とする人々によるオランダの解剖書の翻訳をめぐる話です。
 左ページの残りは第十一課「勉学」の冒頭で、アメリカのリンコルンが主人公です。

 眺めていると、表記に関してあれこれ興味深いことが目に付きました。
 文字が小さいので、部分的に拡大します。
 左右ページに跨がる部分。
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 長音が「よーになり」「そーこー」「こーぞー」と、長音記号を使って表記しています。

 もう1つは何といっても「リンコルン」です。
 アメリカ合衆国大統領のリンカーンのことですが、このように表記されています。
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 「リンコルン」は以前入手した「東西英雄絵巻双六」(小学館の『せうがく3年生』昭和5年新年号の付録)にも登場していました。
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 リンカーンの綴りは「Lincoln」なので、綴りからはリンコルンと読まれても不思議はありません。
 ただ、明治から昭和1ケタまでずっと「リンコルン」だったわけではなく、「リンカーン」表記も並行して行われていたようです。

 いつもながら、同時代資料は楽しいです。

2024年11月24日 (日)

広瀬中佐の評価は

 昨日に続き、また戦前の教科書です。
 今回は昭和2年の尋常小学校の修身書です。
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 最初のページのテーマは「カウカウ」です。
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 挿絵がカラーですね。
 いや、そうではなくて、色鉛筆などで塗ったものです。
 持ち主が塗ったのでしょう。
 裏表紙に持ち主の名前が書いてあり、女の子です。
 いろいろな色を使って、丁寧に塗っています。

 この教科書に、日露戦争で戦死した広瀬中佐のことが載っています。
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 テーマは「チュウギ」ですけど、違うんじゃないでしょうかね。
 わが身の危険を顧みず、行方不明の部下を捜し求めた広瀬中佐の思いは、「部下に対する深い愛情」か「全員をボートに収容しようという責任感」が適切だと思います。「チュウギ」はちょっとズレていましょう。

 文章は分かち書きになっています。
 スペースなしよりは読みやすいですけど、助詞を切り離しているのは読みにくいように思います。
 助詞はくっつけた文節単位の分かち書きの方が読みやすいのではないでしょうか。

2024年11月23日 (土)

老農船津伝次平

 最近、戦前の教科書も収集品に入ってきました。
 結局、私は昔のものが好きなのでしょう。

 この様なものを入手しました。
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 昭和2年の高等小学読本です。
 「農村用」とあります。
 一般用の他にこういうのもあったのですね。
 他に、商業用や工業用もあったのかどうかは不明です。

 この教科書にこういう単元がありました。
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 この「船津伝次平」の話は全部で5ページに及びます。
 船津伝次平は、幕末から明治にかけて活動した農業研究者であり、教育者です。
 今、この人物のことを知っている人は少ないことでしょう。

 しかし、群馬県だけは違います。
 群馬県民はほぼ全員が知っているのではないかと思います。
 その理由は「上毛かるた」です。

 このかるたは戦後しばらくして生まれたもので、群馬県の子供は誰でも知っています。
 その中に「老農船津伝次平」という札があるのです。
Funatsudenjibei
 群馬県の地理、人物、産業、産物などを幅広く学ぶことのできるこのかるたはなかなか貴重です。

 今や「上毛かるた」の中だけの人物になってしまったかのような船津伝次平は、かつては「農村用」限定とはいえ、高等小学読本にも載る全国区の存在だったのですね。もっと顕彰されても良い人物と思います。

2024年11月 5日 (火)

ちりめん本『俵藤太』と『稲羽の白兎』

 一昨日、明治20年刊行のちりめん本『俵藤太』のことを書きました。
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 ちりめん本は、もう1冊『因幡の白兎』も持っています。
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 奥付を比べたら。
 『俵藤太』
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 『因幡の白兎』
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 この2つ、同じシリーズなのでした。
 どちらも発行者は長谷川武次郎さんです。
 『因幡の白兎』が11号で明治19年12月発行、『俵藤太』が15号で明治20年9月発行です。
 号数順に発行されたとすれば、2ヶ月弱に1冊ずつ発行されたことになります。

 1冊だけでも興味深い本ですけど、2冊揃うとさらに面白いです。

2024年11月 3日 (日)

明治20年ちりめん本の『俵藤太』

 明治20年発行のちりめん本『俵藤太』を入手しました。
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 大きさはほぼ文庫本大です。

 裏表紙。
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 最初のページ。
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 左側が表紙裏で奥付になっており、右ページが巻頭になります。

 奥付を拡大します。
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 明治20年の発行ですが、「著作権登録不許複製」などと、今と同じようなことが書いてあります。
 こんな時代にもう著作権法があったのですね。意外でした。油断ならない明治。
 「日本昔噺第十五号」とあります。いろいろな日本の昔話が英訳されて海を渡ったのですね。
 訳者はチェンバレンです。
 発行者は上根岸の長谷川武次郎さん。
 裏表紙に手紙の絵が描かれていますが、その封筒の宛名がこの人の住所氏名です。

 巻頭ページも冒頭の段落を拡大します。
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 タイトルの「MY LORD BAG-O’-RICE」が俵藤太に当たるのでしょう。
 直訳すると「米俵大名」でしょうか。「藤太」までは訳出されていません。
 「O’」は「OF」と同じでしょうか。英語苦手です。
 冒頭は「ワンスアポンナタイム」ですね。♪

 次のページは見開きに絵が描いてあり、文章もあります。
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 内容は俵藤太のムカデ退治の話のみです。
 俵藤太といえば、私などはNHK大河「風と雲と虹と」で露口茂が演じていたのを思い出します。
 平将門と戦って勝利を収めたわけですが、その話はありません。

2024年10月18日 (金)

鳥居強右衛門

 昨日の「紫式部の兄弟」に続いて、また大河と明治の教科書絡みの話題です。
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 明治36年の『高等小学読本 三』に鳥居強右衛門が登場しています。
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 鳥居強右衛門は、昨年のNHK大河「どうする家康」で、岡崎体育が演じていました。
 鳥居強右衛門って、教科書にも載っていないし、あまり知られていない人物なので、大河で知ったという人も多かったのではないでしょうか。
 私も、鳥居強右衛門を知ったのはやはりNHK大河でした。但し、大昔の「太閤記」です。緒形拳が秀吉を、高橋幸治が信長を演じていました。
 鳥居強右衛門は北村和夫です。北村有起哉のお父さんです。
 強右衛門が徳川の陣所に着いてだったか、武田に囚われてだったか、どちらか覚えていませんが、出された食事に長ネギがあって、それをそのままバリバリと食べていた姿が記憶に残っています。ワイルドでした。

 鳥居強右衛門は高等小学読本に載っていたのですから、高等小学校を出た子供はみな知っていたことでしょう。

 国定教科書を話題にするのは昨日が最初だったと思います。
 ネットオークションで入手したものです。
 しばらく前にネットオークションで国定教科書を入手したら、その後、「ダンナ、こんなのもありますぜ」ということで、あれこれ国定教科書を薦められるので、あれこれ買ってしまいました。また登場するかもしれません。

2024年9月23日 (月)

明治34年の「一新講社」引き札付き

 久し振りに道中記(定宿帳)の話題です。
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 これが表紙です。表紙の左側に3枚の引き札が重ねて綴じてあるのをめくりました。

 引き札を元に戻してみます。
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 奈良のいんばんや庄右衛門で、右に「さる沢池西かど樽井町」、左に「興福寺南円堂下」とあります。
 鹿の絵が描いてあるのが嬉しいです。明治時代も奈良は鹿。

 2枚目の引き札。
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 こちらは大阪の大こくや音治郎の引き札です。

 3枚目の引き札。
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 こちらは京都の扇屋正七の引き札です。
 左側に「停車場及途中宿引車夫ノ奸策御注意ヲ乞」とあります。
 悪質な客引きや車夫がいたのでしょうね。
 「奸策」というのが物々しい言い方です。

 裏側。
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 伊勢山田外宮前の高千穂館北村屋甚蔵とあります。
 3枚の引き札にもこの宿の印が捺してあります。

 外宮のページ。
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 ここにもこの宿が載っていて、同じ印が捺してあります。

 奈良のページ。
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 奈良には、いんばんや庄右衛門と、うをや佐兵衛が載っています。
 いんばんやは、表紙に引き札が綴じてある宿です。
 もう1軒のうをや佐兵衛は、かつて存在した魚佐旅館の前身です。

 奈良の名所。
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 法華寺が「法花寺」、唐招提寺が「せうたつ寺」とあります。これは「せうたい寺」の誤植でしょうか。
 下の解説には「唐松堤寺」とあります。
 法隆寺は「法流寺」とあります。
 あれこれ自由な表記で、楽しいです。

 表紙に綴じてある引き札はどういう性格のものでしょうね。
 全部に伊勢の外宮前の高千穂館の印が捺してあるということは、3枚の引き札は高千穂館でもらったのでしょうか。
 どういう仕組みになっているのか、頭をひねったのですが、筋が読めませんでした。

2024年9月18日 (水)

明治3年の『絵入智慧の環 二編上』(5)

 日が空いてしまいましたが、明治3年『絵入智慧の環 二編上』の続きです。
 この本には世界地図だけではなく、国旗も掲載されています。
 明治3年といえば、今から154年前。変わらない国旗もあれば、変わってしまった国旗もあります。

 アジア。
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 アジアはこれだけです。この中で、今も変わらないのは日本だけですね。
 他は国自体が変わってしまいました。

 ヨーロッパ。
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 イギリスの国旗は、今はこの絵の国旗の左上の部分が全体像になっています。
 イギリスについては、他に赤・青・白の各艦隊の旗が載っています。
 フランス国旗は変わりません。
 イスパニアはスペインとなり、国旗も変わっています。

 つづき。
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 この中で国旗は左下の「すいつゝる」(スイス)だけで、これは今と変わりません。ただ、今のスイスの国旗は正方形ですね。
 他の4つは軍艦旗、1つは商船旗です。
 イタリアの軍艦旗は、真ん中の絵を削除すれば今の国旗になります。
 ギリシャの軍艦旗は、左上の部分中央の絵を削除すれば今の国旗になります。
 トルコの軍艦旗は、今の国旗とよく似ています。

 つづき。
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 この中で今と同じなのはオランダ国旗のみです。
 オーストリアの軍艦旗と商船旗の中の絵を削除すれば今のオーストリア国旗になります。

 つづき。
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 この中では、一番下のでんまるく商船旗と、ろしや商船旗が、それぞれ今のデンマーク国旗、ロシア国旗と同じです。
 左上のすゐでん商船旗の左上の部分を削除して、黄色の十字を左にずらすと今のスェーデン国旗になります。

 こんな感じです。
 あれこれおもしろいです。
 国旗よりも軍艦旗や商船旗が多いですね。

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