万葉集

2018年11月17日 (土)

青木生子先生ご逝去

 青木生子先生が11月14日に逝去されました。97歳だったそうです。今日付の複数のネット版の新聞に載っています。

 日本女子大学のHPにも昨日付でお知らせが掲載されていました。

 青木先生は長年月に亙り、上代文学研究を領導され、また日本女子大学の学長、理事長として、大学教育、大学運営にも大きな功績を残されました。

 謹んでお悔やみ申し上げ、ご冥福をお祈り申し上げます。

 平成12年4月29日に開催された橋本達雄先生の会(退職記念の会だったと思います)の折りに挨拶される青木先生。
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 今から18年前ですね。79歳でしょうか。お元気でした。

 同じ会で橋本先生と談笑される青木先生。
Aokitakako02
 『万葉ことば事典』の監修をお二人でされるなど、仲良しだったようです。この辞書の刊行は翌平成13年でした。

 デジカメがまだ発展途上の頃で、画質がいまいちなのが残念です。金屏風がバックにあると、さらに難しいです。←と、言い訳。

 この後はあまりお目に掛かる機会もありませんでしたが、何かの会でご挨拶をされたときに、「青木たかこと申します。『なまこ』ではありません」と言われたのがおかしくて、記憶に残っています。

2018年10月30日 (火)

塙書房の『萬葉集』が……

 今年の3月に「おうふうの『萬葉集』が……」という記事を載せました。

 毎年授業のテキストに使っていたおうふう版の『萬葉集』が「品切れ・重版未定」になってしまい、テキストを急遽塙版に変更したという内容です。どうも、おうふうはあの本をもう作らないようです。

 さて、後期授業が始まりましたが、テキストを持っていない学生が目に付きました。そんな折、教務からメールが来て、塙版の数が足りず、入手できない学生が17人いるとのことです。

 塙書房のHPを見たら、この本は「現在増刷中です。12月上旬出来予定です。」となっていました。
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 思うに、おうふう版がなくなってしまったことで、私のように塙版に変更した教員が何人もいたのではないでしょうか。それで、塙版が品切れになってしまったものと思います。

 思わぬところに影響が出ました。

 12月までテキストなしというわけには行きませんので、持っていない学生(全員、注文済み、増刷待ちです)には、必要箇所のコピーを配布しました。

 通常であれば、本のコピーをテキストとして使うのは違法行為でしょうが、今回の場合は、コピーを受け取った学生も、増刷出来次第、本を買うことになりますので、法の趣旨からはOKと思います。

2018年10月15日 (月)

新町で公開講座、上野国東歌

 今日は、新町公民館で公開講座をしてきました。テーマは「上野国東歌」です。→レジュメはこちら。

 連続5回なので今回が最終回です。いろいろと撮りためた写真などもありますので、プロジェクターでそれらも見て頂きました。

 それで時間が掛かったせいか、終わりませんでした。(^_^;

 もしも来年も依頼されれば、来年の第1回目は「上野国東歌2」となりそうです。
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 上の写真は佐野の舟橋の万葉歌碑です。江戸時代に建てられたもので、群馬県内の万葉歌碑としては最古級のものです。

 背後に新幹線が見えています。歌碑から新幹線が見えるのなら、新幹線からも歌碑が見えるはずだと思い、一時、新幹線からの撮影に凝っていました。今はもうしていません。(^_^) 2階建ての新幹線Maxの2階からだと良く撮れます。

 新町公民館の担当の方々には、昨年も今年も大変にお世話になりました。厚く御礼申し上げます。

2018年10月11日 (木)

小川町の万葉パネルと『万葉うためぐり』

 昨日チラとご紹介しましたように、小川町には随所に万葉集の解説パネルが設置してあります。基本的にこういう形です。
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 内容はこのような感じです。
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 万葉歌の訓読文が挙げられていて、大意と解説、そして、補足の画像と文章です。補足は小川町と絡めた内容が多いです。小川町をよんだ万葉歌はないので、補足はいずれもやや強引ですが、地元の方々にとっては、地元と引きつけることで万葉歌に親しみが湧くかもしれませんし、町外から来た方々には小川町の宣伝になるでしょうから、よいのではないかと思います。

 基本的に1枚1首ですが、関連する歌を2首載せたパネルもあります。
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 上の歌については、補足も小川町絡みではありません。こういうパネルもあります。

 あとから気付いたのですが、パネルの右上隅にある数字は一連番号でした。歌番号順に付いています。

 1番は額田王の熟田津の歌ですが、残念ながら壊れています。
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 最後は68番で、家持の万葉集最終歌です。
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 ということで、万葉歌のパネルは全部で68枚あることになります。

 総数が分からないままに、見つける都度撮していって、結果的に61のパネルを撮していました。あと7枚。(^_^)

 宝探しではありませんので、どれも目立つところに設置してあります。特に、中央公民館の前の道には、道の両側に短い間隔で並んでいます。ただ、車道の両側ですので、ジグザグに見て行くわけにはゆかず、片側をずーっと見ていって、それから向こう側に渡ってまたずーっと見て行くことになります。帰路、駅に向かうときにこの道を通りましたので、駅の方まで行って、引き返し、また駅に向かうということになりました。

 パネルはもう1枚ありました。
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 これは番外といいますか、まとめの解説板ですね。

 万葉歌の解説はおおむね適切と思いますが、こういうパネルもありました。
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 梅花の宴の折の歌というのは誤りですね。

 案内所でこういう本を入手しました。
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 68枚の万葉パネルの解説本です。小川町観光協会編で、青山学院大学の小川靖彦先生の監修。平成26年笠間書院刊です。

 この本では、先ほどの歌はこのようになっています。
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 パネルの誤りはきちんと直されています。また、解説の分量が違うとはいえ、本の方がずっと適切な解説になっていましょう。小川先生、きっちりと監修されています。(^_^)

2018年10月10日 (水)

小川町の仙覚顕彰碑

 埼玉県比企郡小川町に僧仙覚の顕彰碑があります。……ということを知って、行ってみたいとは思いつつも、ちょっと遠いので、先送りしていました。昨日、玉村で非常勤のあと、群馬に泊まったのを好機として、今日、行ってきました。小川町駅にはJR八高線と東武東上線とが通っています。高崎からだと八高線で1時間ほどで行けます。

 八高線に乗るのは初めてでした。2両編成のワンマンカーです。
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 小川町駅で列車を降りて、跨線橋から撮りました。
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 上の2枚の写真でお気づきでしょうか。車両にはパンタグラフがありません。そして、線路上には架線がありません。八高線は高麗川以北は電化されていないのでした。空中に架線がないと、ずいぶんすっきりした印象になります。

 仙覚顕彰碑は高台の古城跡にあります。下の画像の中央部にある道を入って行きます。案内板がないので迷うところです。
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 道を入るとすぐに行き止まりになり、突き当たりを左折します。
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 この先は道なりに上って行けば目的地に着けます。

 入口に標柱が立っていました。
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 途中には道しるべもありました。
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 道しるべの右側にあるのは万葉歌の解説板です。町中に時々あるのを見かけては撮影していましたが、全部で68あるということがあとで分かりました。それはまた別稿で。

 顕彰碑と解説板。顕彰碑はかなり大きなものです。
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 顕彰碑。
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 解説板。
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 解説板には触れられていませんが、顕彰碑の碑文は佐佐木信綱が執筆したものだそうです。

 碑の近くには露草が咲いていました。露草、憶えました。(^_^)
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 付近の地形は確かに古城跡を思わせます。
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 帰りは違う道を通って駅に戻りました。その途中に案内所がありました。
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 この案内所ではレンタサイクルも扱っていました。前籠がおしゃれです。(^_^)
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 私、今回大誤算がありました。いつものリュックにはノートパソコンなども入っていて結構重かったので、荷物は駅のコインロッカーに預けて、身軽に動くつもりでした。ところが、小川町の駅にはコインロッカーがなかったのです。←見つけられなかっただけという可能性もありますが。

 それで、重いリュックを背負った状態での移動になり、疲れました。体力ないです。(^_^;

 それが、この案内所にはレンタサイクルはあるし、荷物も預かってくれるのでした。行きにこの道を通れば良かったです。

 ともあれ、無事に見学できました。帰りは、小川町駅から東武線に乗り、和光市駅で地下鉄線に乗り換え、そのまま自由が丘駅に着きました。相互乗り入れでずいぶん便利になりました。それでも、小川町を出てから帰宅するまで2時間近く掛かりました。東京の家からの往復でなく、高崎から小川町経由で東京の家に帰宅というのは正解だったと思います。

2018年10月 6日 (土)

大伴家持文学賞

 今日は早稲田大学で開催された某学会の委員会に出席しました。

 冒頭の会長挨拶で、今日は旧暦の8月27日。明日28日は大伴家持の命日である旨のお話しがありました。

 富山県では、家持生誕1300年を記念して、「大伴家持文学賞」と「高志の国詩歌賞」という賞を新しく制定したそうです。「大伴家持文学賞」の趣旨は、世界の優れた詩人を顕彰することで、実際に第1回の受賞者には北アイルランドのマイケル・ロングリー氏(78)が選ばれたそうです。国際的な賞ですね。

 会長挨拶がこういう話から始まるというのは、なんとも国語国文学系らしい学会であるなぁと感じました。すてきです。
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2018年10月 1日 (月)

新町で公開講座&新町駅の壁画更新

 今日は、新町公民館で公開講座をしてきました。テーマは「山上憶良」です。→レジュメはこちら。

 前回は大伴旅人でした。やはり、旅人と憶良はセットになリます。

 新町駅に飾ってある、学童保育の子供たちの手になる壁画が新しくなっていました。

 過去2回は小品3点だったのですが、今回はまた以前のようにパネル全体を使った大作になりました。
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 上の画像でも分かりますが、大きな魚は多数の小さな魚から成り立っています。
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 金魚を飼っているので、赤い魚には親近感が湧きます。(^_^)

 こういうデザインにしたのかと思いましたが、以前見た「ダーウィンが来た!」で、多数の小さな魚たちが密集することで、遠目には大きな魚と見せかけて身を守る、というのを見ましたので、あるいはそれを描いたのかと思いました。どっちでしょうね。

 土台に折り紙を貼っているだけではなく、上から糸で吊してあるものもあって、立体的です。
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 左上には、クラゲがクラゲなす漂っています。
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 これはカバーのビニールに描いたのでしょうかね。確かに、折り紙で折ったのではクラゲの透明感が出せないかもしれません。

 左下には珊瑚と熱帯魚。
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 これも遠近が工夫されていますね。

 いつもながらよくできていると思います。

 今日は東京から群馬に向かいました。電車の中などで小学生くらいの子供連れのお母さんを何組も見ました。夏休みはとっくに終わっているし、平日だし、不思議です。日曜日に開催された運動会の代休かもしれないなと思いましたが、だいぶ時間が経ってから、あ、今日は東京都民の日だ、と気付きました。それで小学校は休みなのでしょう。東京都民じゃなかった期間が随分長かったので、なかなか思い至りませんでした。

2018年9月24日 (月)

「方言研究の魅力」&新町で公開講座、大伴旅人

 今日は、午前中に群馬県立女子大学で開催された国文学科主催のシンポジウム「方言研究の魅力」を聴きに行きました。
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 学科長市川祥子先生の挨拶。
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 司会の新井小枝子先生。
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 発表者の学生さん達。2年生と3年生です。
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 六合地域の方言調査は、「やま・さと応縁隊」から今の「六合(くに)えむプロジェクト」まで毎年継続的に活動しています。本当に継続は力と思います。

 生活と密着した言語活動の報告。興味深かったです。

 午後は新町公民館で公開講座をしてきました。テーマは大伴旅人です。レジュメはこちら

 前回の額田王から一気に時代を降らせてしまいました。次回は山上憶良です。

2018年9月23日 (日)

ゆききの岡(3)

 昨日、万葉文化館でのシンポジウムと兼ねて、懸案の「ゆききの岡」の探索もしてきました。

 「ゆききの岡」から撮影したという戦前の絵はがき。
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 万葉文化館の展望ロビーからの撮影。
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 かなり雰囲気は似ていると思われます。ポイントの1つ、耳成山と香久山の裾野の重なり具合はよく似ていますが、万葉文化館からの撮影の方が、裾野はより大きく重なっています。とすると、絵はがきの写真は万葉文化館よりももう少し西(左)からの撮影ということになりましょうか。
 耳成山の西(左)側に複数見えている森のような岡のような様々な固まりも、上の2つの写真では必ずしも一致しませんが、もう少し西から撮せばかなり重なってくるように思います。

 以前、「ゆききの岡」に、Kさんから「万葉文化館のすぐ横(西)の高台」ではないかとの御指摘を頂きましたが、実際に現地に来てみると、よく納得できました。

 館内で、乾善彦先生、井上さやか先生、大谷歩先生が一緒にいらっしゃるところに遭遇しましたので、絵はがきの写真を見て頂いたところ、お三方とも同意見でした。大谷先生からは飛鳥寺の瓦窯ではないかとの具体的なご意見を頂きました。

 瓦窯の位置は以下の通りです(中央付近の「1」とある場所)。
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 瓦窯の解説板。
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 瓦窯の発見された岡(北側から撮影)。
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 Kさんのおっしゃる「万葉文化館のすぐ横(西)の高台」も同所と思われます。

 瓦窯の少し北から見た飛鳥寺。
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 絵はがきの左端に写っている建物。
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 この絵はがきにいう「ゆききの岡」は瓦窯の岡と見て良いようです。

2018年9月22日 (土)

第15回 万葉古代学公開シンポジウム

 今日は、万葉文化館にこのようなシンポジウムを聴きに行きました。
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 報告は3件とも全く知らないことばかりで、大変に刺激的であり、勉強になりました。

 会場で三友亭主人さんと晴南さんにお目に掛かりました。そもそもこのシンポジウムは三友亭主人さんのブログで知ったのでした。改めてお礼申し上げます。

 1本目の田中大士氏の報告は、校本万葉集にも取り上げられていないひらがな傍訓本についてのものでした。新点本の傍訓は片仮名であることが普通で、ひらがなの傍訓は稀であること、このひらがな傍訓本(写本)が6点ほど知られていて(1点は万葉文化館蔵)、それらは美麗な表紙・丁寧な装幀等から嫁入りの調度として製作されたらしいこと、本文自体のみならず、改行箇所や改ページ箇所まで一致しているので、相互に深い関係にあるものと考えられる、ことなどが述べられました。
 そして、これら諸本の本文や改行・改ページ箇所は寛永版本とよく一致しているので、これら諸本は寛永版本を書写したものと考えられるとのことです。
 この先が面白く、寛永版本は活字附訓本を製版にしたものなので、両者は非常によく似てはいるものの、仔細に比較すると、相違もあり、その相違点について、ひらがな傍訓本と比較すると、ひらがな傍訓本の中に、寛永版本と一致するものと活字附訓本と一致するものとがあることが分かったということです。
 そのことが分かったのは、今回の発表資料の原稿締め切りの直前だったとのことです。田中先生「おお!」と思われたことでしょうね。
 活字附訓本から寛永版本までの移行の経緯はこれまでほとんど分かっていなかったということで、ひらがな傍訓本はそれを明らかにする上で大きな手がかりになりそうです。

 2本目の池原陽斉氏の報告は、三代集のうち古今集・後撰集に採られた万葉歌は20首前後であるのに対して、拾遺集には125首の万葉歌が採られていること、その背景には天暦五年(951)の村上天皇の命による古点本の成立が大きな意味を持っているのではないか。
 976年以後に成立した古今和歌六帖にも多くの万葉歌が採られているが、これまた古点本の成立と深い関係があり、次点本で訓の付いていない歌は古今和歌六帖に採られていないことや、古今和歌六帖中の万葉歌の配列の中に、万葉集の配列と共通するもののあることから、古今和歌六帖の編纂者は、伝誦歌として万葉歌を採録したのではなく、ちゃんと手もとに万葉集の写本を置いていたと考えられることなどが述べられました。

 3本目の大石真由香氏の報告は、これまで原本も忠実な写本も知られていなかった「禁裏御本」についてのもので、京都大学国文研究室に所蔵される万葉集写本のうち巻二・巻三が「禁裏御本」の転写本である可能性があるということで、その調査結果の報告でした。
 その結果、京大国文研究室本には、現存する仙覚寛元本・文永本のいずれとも一致せず、次点期の一部の写本にのみ存在する本文を採用する例のあること、また、この写本は、歌意や本文と訓との対応を考えながら校訂を行っていた形跡が見られるとのことでした。
 私は、巻十四についてだけ、諸本の本文と訓とを比較したことがありましたが、書写の際に、本文は本文、訓は訓で書写を行うと、どこかで誤写が生じた場合、本文と訓とが合わないケースが出てくるわけで、そういったケースに遭遇したことがありました。京大国文研究室本の書写者はちゃんと考えながら書写を行っていたわけですね。

 これらの3本の報告の後に総括討論があったのですが、私は電車の都合で総括討論は伺わずに失礼してしまいました。

 でも、ほんと刺激的で面白かったです。

 三友亭主人さんにも久しぶりでお目にかかれましたし。

 あ、かねて懸案の「ゆききの岡」の位置も、大体万葉文化館のあたりということが分かりました。厳密にはもう少し西、以前、Kさんがコメントしてくださった位置が正解ではないかと思えました。

 これについては明日にでも。

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