万葉集

2018年3月23日 (金)

おうふうの『萬葉集』が……

 昭和60年に就職して以来、授業で使う万葉集のテキストにはずっとおうふうの『萬葉集』(鶴久・森山隆)を使ってきました。もう30年以上です。

 来年度も非常勤が続きますので、いつものようにこれをテキストに指定していたところ、昨日、教務の担当者からメールが来て、この本は「品切れ・重版未定」のため用意することができないので、どうしましょう、とのことでした。

 早速、おうふうのHPを見てみたら、確かにそうなっていました。

 ううむ。4月は、1年中でこの本が一番売れる時期でしょう。それが品切れということは、おうふうはもうこの本を増刷しないつもりなのでしょうかね?

 新学期に備えて増刷中ならば、「品切れ・○月○日重版予定」などとなっていそうです。

 確かに、この本、刷を重ねて、大分版面が劣化していたのが気になっていました。消えてしまっている文字すらあります。

 例を示そうと思いましたが、いざ探してみると簡単には見つかりません。(^_^;

 劣化の例としては例えば次のような感じです。
Ofumanyo_h24
 1460の題詞の「宿」、1461の4句目の「君」、5句目の「和」などが少し欠けています。他にもふりがなにちょっと厳しいのがいくつかあります。これは平成24年の版です。

 昔の版ではこんなことはなかったはずです。手もとにあった平成7年の版では次の通りです。
Ofumanyo_h07
 ね、以前はこんなに鮮明だったのに……、というつもりでスキャンしたら、上に示した文字はもうすでに劣化の兆しが見えますね。(^_^; どうもあまり良くない版面での印刷をずっと続けていたようです。(^_^;

 活字ではなく、写真製版でしょうから、写真製版した時点からあまり変わっていないのかもしれません。

 比べるなら、活字の頃のとでなくては意味がなかったかもしれません。

 そんなわけで、もしもこの本を自炊するなら、なるべく古い刷を使うのが良いと思います。

 さて、テキスト。

 おうふうの『萬葉集』が入手できないとすると、別のを考えなくてはなりません。至急にということでしたので、あまり考えずに塙版を選びました。後から考えると、井手先生・毛利先生の万葉集(和泉書院)という選択肢もありましたね。

 おうふう版の復活がないとすると(復活があったとしても)、再来年度のテキストには何が良いか考えねばなりません。←再来年度も非常勤が続くことになるかどうかは分かりませんが。(^_^;

 来年度の新2年生が私の万葉集の授業を取るのは初めてなので、その学生さん達は全員塙版を買うことになります。しかし、3年生以上は、すでにおうふう版を持っている可能性が高いです。その学生さん達に塙版を買わせるわけにはゆきませんので、おうふう版で良いことにします。同じ教室に、異なったテキストを持った学生が混在することになります。

 ちょっと厄介。

2018年2月27日 (火)

代表的な万葉歌

 ブログの「まほろぐ」が始まる前、掲示板「まほろば」の頃だったでしょうか、代表的な万葉歌のリストを作ったことがありました。

 方法は、『万葉秀歌』(斎藤茂吉)、『万葉百歌』(山本健吉・池田弥三郎)、『私の万葉集』(大岡信)、『日めくり万葉集』(NHK)など、合計8種類のテキストが、それぞれどの歌を選んでいるのかを集計したものです。

 その際、100首しか選んでいないテキストと800首以上の歌を選んでいるテキストとを同列に扱ったのでは、1票の格差が生じてしまいますので、実際の集計は、総数100首のうちの1首に選ばれた歌は1首1/100ポイント、800首のうちの1首に選ばれた歌は1首1/800ポイントとして合計しました。

 先日、美夫君志会の『萬葉百首』を入手しましたので、今回そのデータを加えました。
Matsudamanyo01
 結果は以下の通りです。ベスト20を示します。

  1 あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る(額田王)1・20
  2 紫草のにほへる妹を憎くあらば人妻ゆゑにわれ恋ひめやも(天武天皇)1・21
  2 我が宿のいささ群竹吹く風の音のかそけきこの夕かも(大伴家持)19・4291
  4 み吉野の象山の際の木末にはここだも騒く鳥の声かも(山部赤人)6・924
  4 石走る垂水の上のさわらびの萌え出づる春になりにけるかも(志貴皇子)8・1418
  6 我が背子を大和へ遣るとさ夜更けて暁露に我れ立ち濡れし(大伯皇女)2・105
  7 磯城島の大和の国に人二人ありとし思はば何か嘆かむ(作者不明)13・3249
  8 わたつみの豊旗雲に入り日差し今夜の月夜清く照りこそ(天智天皇)1・15
  8 秋の田の穂の上に霧らふ朝霞いつへの方に我が恋やまむ(磐姫皇后)2・88
  8 笹の葉はみ山もさやにさやげども我れは妹思ふ別れ来ぬれば(柿本人麻呂)2・133
  8 夕されば小倉の山に鳴く鹿は今夜は鳴かず寐ねにけらしも(舒明天皇)8・1511
  8 稲つけばかかる我が手を今夜もか殿の若子が取りて嘆かむ(東歌)14・3459
 13 我はもや安見児得たり皆人の得かてにすといふ安見児得たり(藤原鎌足)2・95
 14 吉野なる菜摘の川の川淀に鴨ぞ鳴くなる山蔭にして(湯原王)3・375
 15 熟田津に船乗りせむと月待てば潮もかなひぬ今は漕ぎ出でな(額田王)1・8
 15 うらうらに照れる春日にひばり上がり心悲しも独し思へば(大伴家持)19・4292
 17 東の野にかぎろひの立つ見えてかへり見すれば月かたぶきぬ(柿本人麻呂)1・48
 17 葦辺行く鴨の羽交ひに霜降りて寒き夕は大和し思ほゆ(志貴皇子)1・64
 19 君が行く道のながてを繰り畳ね焼きほろぼさむ天の火もがも(狭野弟上娘子)15・3724
 20 一つ松幾代か経ぬる吹く風の声の清きは年深みかも(市原王)6・1042

 いかがでしょうか。著名な歌が並んでいます。それなりに納得できる結果ではないかと思います。

 ただ、美夫君志会萬葉百首を加えたことで、加える前よりも順位が下がった歌に以下のものがあります。

 15 熟田津に船乗りせむと月待てば潮もかなひぬ今は漕ぎ出でな(額田王)1・8
 15 うらうらに照れる春日にひばり上がり心悲しも独し思へば(大伴家持)19・4292
 17 東の野にかぎろひの立つ見えてかへり見すれば月かたぶきぬ(柿本人麻呂)1・48
 17 葦辺行く鴨の羽交ひに霜降りて寒き夕は大和し思ほゆ(志貴皇子)1・64

 「熟田津に」(額田王)と「うらうらに」(家持)の歌は、もとは「紫草の」(天武)と「我が宿の」(家持)の歌とともに、4首揃って第2位でした。それが、今回の美夫君志会萬葉百首は百人一首方式であるために、同一作者の歌は一首しか採れず、これらの歌はその割を食いました。「東の」(人麻呂)と「葦辺行く」(志貴)も事情は全く同様で、この2首とも、もとは6位であったものが大分順位を下げています。

 百人一首形式だとこういう問題が生じます。配点のウェイトを考える必要がありそうです。

 対象となる選歌集を増やすとともに、合理的な集計方法も検討してゆきます。

2018年2月21日 (水)

美夫君志会の「萬葉百首」かるた

 ネットオークションで入手しました。
Matsudamanyo01
 オークション上の品名は「萬葉百首 かるた 文学博士 松田好夫 監修 昭和58年 第2版」ということでしたが、届いた品を見たら、それに加えて、美夫君志会選定となっていました。初版は昭和49年10月刊で、これはその第2版です。

 読み札、取り札は以下の通りです。
Matsudamanyo02
 読み札の左下には小さい字で巻と歌番号が書いてあり、右下には歌番号順の一連番号が付いています。

 選ばれた百首の巻別内訳は次の通りです。

  巻 1:13
  巻 2:17
  巻 3:17
  巻 4: 6
  巻 6: 9
  巻 7: 2
  巻 8:14
  巻 9: 3
  巻10: 2
  巻11: 1
  巻13: 1
  巻14: 3
  巻15: 4
  巻17: 2
  巻18: 1
  巻19: 2
  巻20: 3

 巻1から巻3に手厚いですね。全体の半分近くを占めています。そして末4巻に冷たい気がします。(^_^; 巻20に3首あるうちの2首は防人歌ですし。

 巻5と巻16はともにゼロです。相聞歌が比較的多いですが、巻11・巻12は合計1しかありません。作者が分かっている相聞歌に手厚いようです。

 こういう万葉百首って、誰が作っても同じようになってはつまりません。選者次第で相違が見えるのが面白いところです。

2018年1月10日 (水)

古い「飛鳥名所」絵はがき

 飛鳥の古い絵はがきを手に入れました。またまたネットオークションです。4枚セットでしたが、最初からそうだったのかは不明です。

 (飛鳥名所)古来聞えし飛鳥神社
Asukameisho01
 4枚セットのうち、この絵はがきにのみオモテにスタンプが捺してありました。
Asukameisho02
 岡寺駅のです。「11.11.7.」とあります。郵便の消印を見たときもいつも悩むのですが、これ、昭和11年11月7日なのでしょうか、それとも昭和7年11月11日なのでしょうか。あ、昭和でしょうね。大正ということはないと思いますが。

 以前私が撮影した写真と並べてみました。
Asukameisho03
 結構違いますね。80年も経っていますから。

 飛鳥井の石柱は同じようです。ただ、現代の方が丸くなったように思います。
Asukameisho04
 女の子2人の姿に時代を感じます。存命ならば90歳くらいでしょうか。
Asukameisho05
 (飛鳥名所)聖徳太子の御誕生地橘寺の聖観
Asukameisho06
 橘寺には何度か行きましたが、HDDを探してもこれと同じ角度からの写真はありませんでした。残念。……というか、どうしてこういう真正面からの写真がないのか不思議です。(^_^;

 (飛鳥名所)飛鳥川の清流
Asukameisho07
 本当に清流という感じがします。

 (飛鳥名所)ゆきゝの岡より香具山、耳成山を望む
Asukameisho08
 この絵はがきセットを入手したいと思ったきっかけはこの絵はがきでした。

 「ゆきゝの岡」という語は聞いたことがありませんでした。そこで、あれこれ調べてみると、新勅撰集にこういう歌があります。

 「あすか河ゆききのをかの秋はぎはけふふるあめにちりかすぎなむ」(新勅撰集232)

 この歌に、「ゆききのをか」が出てきます。この歌と同じ歌と思われるものが万葉集にあります。

 「明日香河行き廻(み)る丘の秋萩は今日降る雨に散りか過ぎなむ」(1557。丹比国人)

 二句目の原文は「逝廻丘之」です。新勅撰集の歌は、この原文を「ゆききのをか」と訓んだのでしょう。

 飛鳥川がそばを流れている丘ということで、この丘は雷丘か甘橿丘を指しているのでしょうが、この絵はがきが作られた頃、「ゆききの丘」は固有名詞として認識されていたことになりますね。

 この絵はがきには、「ゆきゝの岡より香具山、耳成山を望む」とあります。さて、この写真、雷丘からの眺望でしょうか、甘橿丘からの眺望でしょうか。

 昔の資料は楽しいです。(^_^)

2017年12月23日 (土)

「トンボの眼」の万葉集講座07

 今日は池袋で講座をしてきました。

 毎月恒例の「トンボの眼」の講座です。今日のタイトルは「山上憶良」でした。レジュメはこちら

 絵がないと寂しいので貼っておきます。
Aki7a
 もう1枚、セットで。
Aki7b
 春日大社の境内で撮しました。

2017年12月15日 (金)

TSUTAYAが主婦の友社を買収

 NHKのニュースを見ていたら、「TSUTAYA」が「主婦の友社」を買収したという報道がありました。

 主婦の友社といえば、お茶の水図書館。お茶の水図書館といえば西本願寺本万葉集が思い浮かびます。

 お茶の水図書館もツタヤ図書館になってしまうのだろうか、西本願寺本の扱いは? などが気になりました。

 「お茶の水図書館」でググってみましたら、「一般財団法人 石川武美記念図書館(旧 お茶の水図書館)」のホームページがヒットしました。

 それによれば、お茶の水図書館は、平成25年4月1日をもって新法人「一般財団法人 石川武美(いしかわ・たけよし)記念図書館」に移行したとのことでした。「お茶の水図書館の事業を継承し、より一層公益の増進に寄与すべく努めてまいります。」とありました。

 ということは、お茶の水図書館はすでに主婦の友社からは離れていたということになりましょうか。

 このHPによれば、もと佐佐木信綱の蔵書であった約2000冊(約660タイトル)の万葉集関係の資料を、昭和19年に石川武美が購入したそうで、西本願寺本万葉集もそのコレクションの1つだそうです。
Nishihonganjibon
 万葉集のテキストとして極めて著名で貴重な西本願寺本万葉集ですが、私は不勉強でそうした来歴を知りませんでした。お恥ずかしいことです。(^_^;

 今回、TSUTAYA買収のニュースで知ることができました。

2017年12月 6日 (水)

新町公民館で古典文学講座5

 今日は、高崎市新町公民館の古典文学講座で話をしてきました。隔週で開講しているこの講座、第5回目になりました。最終回です。

 今日は「大津皇子・大伯皇女」というタイトルで話をしました。

 レジュメはこちら

 皆さん、大変熱心に聴いてくださり、とてもやりやすく、楽しかったです。
H27kenshu11

2017年12月 5日 (火)

富山の家餅(やかもち)

 富山駅構内の土産物店で見つけて、思わず買ってしまいました。ネーミングが良いです。(^_^)
Yakamochi01
 蓋を開けると、中はこんなです。
Yakamochi02
 本体です。
Yakamochi03
 中にはあんこが入っていました。
Yakamochi04
 食感はもちもちしていますけど、いわゆる「餅」ではありません。味は今川焼きに似ています。おいしゅうございました。

2017年12月 2日 (土)

富山大学で全国大学国語国文学会(1)

 今日明日は富山大学で全国大学国語国文学会の冬季大会があるので、昨日の夕方から富山市に来ています。

 今回の大会、先月ブログに書きましたように、第1日目は一部、富山県との共催です。
Nihonkaishishin
 昨日、19時前のNHKローカルニュースを見ていたら、そのお知らせが出ました。♪
H29zenkoku01
 昨日は小雨が降っていましたが、今日はきれいな青空でした。この季節の富山では珍しいとのことです。
H29zenkoku02
 学会会長の中西進氏の挨拶。
H29zenkoku03_2
 富山県知事の石井隆一氏の挨拶。
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 富山大学人文学部長の磯部祐子氏の挨拶。
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 基調講演の五木寛之氏と新井満氏は撮影不可ということで、五木氏の撮影は我慢しました。講演タイトルは「家持と親鸞」です。このタイトルは中西先生からの依頼だそうで、五木氏も困られたようです。

 新井満氏の撮影も控えました。講演タイトルは「音楽と文学の遭遇-もし大伴家持の和歌にメロディーをつけたなら-」で、これも中西先生からの依頼で、越中時代の家持の歌を対象にして欲しいということだったそうです。

 新井満氏は越中時代の家持の歌を繰り返し読まれて、立山の賦を選ばれました。

 作ってくださった歌は次の通りです。

   「神々の山・立山」
                 大伴旅人+新井満

1番
 ①都から 遠くはなれた ひなの地に
   その名も高き 立山がある
 ②さむき冬 暑き夏でも ふりつもり
  とけることなき 雪の峰峰
 ③はるかなる 彼方あおげば 青い空
  白く輝く 神々の 神々の山

2番
 ④立山に ふりおける雪を とこなつに
  見れども あかず かむからならし
 ⑤かたかひの かはの瀬きよく ゆくみずの
  たゆることなく ありがよひ見む
 ⑥立山の ゆきしくらしも はいつきの
  かはの わたりせ あぶみつかすも あぶみつかすも

 ⑦はるかなる 彼方あおげば 青い空
  白く輝く 神々の 神々の山 神々の山

 作詞・作曲された新井満氏が、みずから歌ってくださいました。撮影は遠慮していたのですが、遠景ならばいいかと思い、1枚だけ撮ってしまいました。
H29zenkoku06
 お二人の基調講演の後は公開講演が2本ありました。

 金沢大学名誉教授上田正行氏の「千石喜久という詩人-「日本海詩人」を視野に入れつつ-」
H29zenkoku07
 東北大学教授の佐藤伸宏氏の「室生犀星の〈抒情小曲〉-俳句と近代詩-」
H29zenkoku08
 豪華な1日でした。

2017年11月25日 (土)

「トンボの眼」の万葉集講座06

 今日は池袋で講座をしてきました。

 毎月恒例の「トンボの眼」の講座です。前回から講座名が「古代史を背景に『万葉集』をよむ」に変わっています。

 今日はその第2回目で、タイトルは「大伴旅人」でした。レジュメはこちら

 絵がないと寂しいので、貼っておきます。
Tabitocard
 万葉文化館の「万葉歌留多」です。勝手に使っていいかどうか。(^_^;

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