万葉集

2018年8月15日 (水)

万葉集によまれた萩(2)

 先日アップした「万葉集によまれた萩(1)」の続編です。今回は表記についてまとめました。

 万葉集に見えるハギ141例の表記は以下の通りです。

【芽子】116
 巻二 2(笠金村2)
 巻三 1(余明軍)
 巻七 3(作者不明3)
 巻八 27(大伴家持6、笠金村3、文馬養2、沙弥尼2、大伴坂上郎女1、弓削皇子1、湯原王1、その他11)
 巻九 3(阿倍大夫1、遣唐使の母1、作者不明1)
 巻一〇 75(すべて作者不明)
 巻一七 1(大伴家持1)
 巻一九 4(大伴家持3、久米広縄1)

【芽】12
 巻二 1(弓削皇子)
 巻六 2(大伴旅人1、田辺福麻呂1)
 巻八 8(大伴旅人2、山上憶良1、山部赤人1、穂積皇子1、湯原王1、広瀬王1、藤原八束1)
 巻一三 1(作者不明)

【波疑】12
 巻一五 4(阿倍継麻呂1、秦田麻呂1、葛井子老1、遣新羅使人1)
 巻一九 1(大伴家持)
 巻二〇 7(大伴家持5、中臣清麻呂1、大原今城1)

【波義】1
 巻一九 1(光明皇后)

 以上です。正訓字の「芽子」と「芽」が合計128例、字音仮名の「波疑」と「波義」が合計13例で、「萩」は1例もありません。これは、「萩」字の原義が「草の名。かわらにんじん・かわらよもぎの類」「木の名。とうきささげ」(『角川新字源』)であることに依るのでしょう。「萩」は、ハギには相応しい文字ではないために用いられなかったものと思います。

 「芽子」「芽」がなぜハギの表記に用いられているのかはよく分からないようです。

 類聚名義抄には次のようにあります。観智院本の僧上24です。
Hagimanyo03
 1行目に「萩ハギ」があります。そして、2行目に「芽ハギ」、3行目に「芽子ハキ」があります。これで、「芽子」「芽」がハギと訓めることが分かります。

 ただ、3行目の「芽子ハキ」の下には「芽ウマツナキ キザス」という項目があります。こちらが我々が普段使っている「芽」字ですね。よく見ると、この「芽」は他の「芽」と文字の形が異なります。字音も、2行目の「芽ハギ」の方には「音護」、3行目の「芽ウマツナキ キザス」の方には「語嘉反」とあります。前者は「ゴ」、後者は「ガ」でしょうから、音も異なることになります。

 この件、岩波の古典大系本万葉集の1468番歌の頭注に以下のようにあります。
Hagimanyo04
 ということで、大系本万葉集ではハギの場合の「芽」「芽子」は、この字形ではなく、作字した文字を使っています。

 万葉集の写本では、西本願寺本ではざっと見たところでは、現代と同じ「芽」「芽子」で書かれているようです。まだ全例ちゃんと見ていません。

 現存最古の写本である桂本は巻4しか残っておらず、巻4には「芽」「芽子」は用いられていません。これに次いで古いと考えられる藍紙本の巻9では次のように書かれています。
Hagimanyo05
 右が1761番、左が1790番です。少なくとも1790番は現代の「芽」と同じ字形ですね。巻9にはもう1例、1772番に「芽子」があるのですが、この歌の前後は藍紙本では切り出されてしまっていて見ることができません。もしかしたら断簡として残っているかもしれません。

 今ここまでです。他の写本の複製も見て、引き続き考えてみます。

 万葉集の諸注釈に何か書いてありそうですが、手もとにありません。類聚名義抄は、昨日持ってきたのが早速使えました。他の本も早く渋川の家から持ってこねば。(^_^;

2018年8月11日 (土)

万葉集によまれた萩(1)

 昨日の記事「移ろふつきくさ」に萩さんから頂いたコメントを受けて、万葉集における萩を見てみました。

 万葉集中、萩をよんだ歌は全部で141首あります。集中、最も多くの歌によまれている植物が萩です。萩は万葉人に好まれた植物なのでしょう。
Hagimanyo01
 全141首のうち、四季分類のある巻8と巻10とに110首(78%)が集中しています。110首のうち109首は秋であり、萩は秋を代表する景物といえましょう。秋以外の萩をよんだ1首というのは、巻8の春の雑歌です。
  百済野の萩の古枝に春待つと居りし鴬鳴きにけむかも(8-1431)山部赤人
 この歌の主体は鴬で、萩はその鴬がとまっていた「萩の古枝」としてよまれています。

 山上憶良に「秋の野の花を詠む二首」があります。
  秋の野に咲きたる花を指(および)折りかき数ふれば七種(ななくさ)の花 其の一(8-1537)
  萩の花尾花葛花瞿麦(なでしこ)の花女郎花(をみなへし)また藤袴朝貌(あさかほ)の花 其の二(1538)
Hagimanyo02
 この歌でも萩は秋の七草のトップに歌われています。←ただ、旋頭歌の577577という歌体でよむ必要上、音数の関係でトップに持ってきたという可能性もあります。

 萩の花は鹿の妻であるとされ、たとえば次のような歌があります。
  我が岡にさを鹿来鳴く初萩の花妻どひに来鳴くさを鹿(8-1541)大伴旅人
  秋萩を  妻どふ鹿こそ  独り子に  子持てりといへ  ……(9-1790)遣唐使の母
 これらの歌では、鹿の妻問いの対象が萩であるとうたっています。動物が植物を妻とするというのは何ともユニークな(あるいは奇異な)発想といえましょう。他にも同じ歌に萩と鹿とがよみ込まれたものは23首ありますが、全141首に対しては16%ほどですので、そういつも両者がセットでよまれているわけでもありません。

 萩は山や野に自生している他、自宅の庭にも植えられています。
 野に自生している萩。
  高円の野辺の秋萩いたづらに咲きか散るらむ見る人なしに(2-231)笠金村
  秋風は涼しくなりぬ馬並めていざ野に行かな萩の花見に(10-2103)

 家の庭に植えられている萩。
  我が宿の一群萩を思ふ子に見せずほとほと散らしつるかも(8-1565)大伴家持
  我が宿の萩花咲けり見に来ませいま二日だみあらば散りなむ(8-1621)巫部麻蘇娘子
 この2首は、どちらも人に見せたいと思っていますね。きれいに咲いたのでしょう。

 これから咲くであろう萩をよんだ歌に次のようなものがあります。
  秋萩は咲くべくあらし我がやどの浅茅が花の散りゆく見れば(8-1514)穂積皇子
  我が待ちし秋は来たりぬしかれども萩の花ぞもいまだ咲かずける(10-2123)

 満開の萩をよんだ歌。
  草枕旅行く人も行き触ればにほひぬべくも咲ける萩かも(8-1532)笠金村
  見まく欲り我が待ち恋ひし秋萩は枝もしみみに花咲きにけり(10-2124)

 散る萩もよまれます。1首目は風に散る萩、2首目は雨に散る萩です。
  真葛原靡く秋風吹くごとに阿太の大野の萩の花散る(10-2096)
  明日香川行き廻る岡の秋萩は今日降る雨に散りか過ぎなむ(8-1557)丹比国人

 露の置く萩。
  秋の野に咲ける秋萩秋風に靡ける上に秋の露置けり(8-1597)大伴家持
  妻恋ひに鹿鳴く山辺の秋萩は露霜寒み盛り過ぎゆく(8-1600)石川広成

 黄葉する萩。
  雲の上に鳴きつる雁の寒きなへ萩の下葉はもみちぬるかも(8-1575)

 時雨に散るのを恐れる黄葉した萩。
  さ夜更けてしぐれな降りそ秋萩の本葉の黄葉散らまく惜しも(10-2215)

 歌数が多いので、様々な萩がよまれています。

 つきくさの場合は比喩としてよまれることが多かったのですが、萩の場合は実際の萩そのものをよんだ例が多かったです。

 萩のよまれ方について、さらに検討してみます。
 先行研究、たくさんありそうなので、それらにも目を通さねば。

2018年8月10日 (金)

移ろふつきくさ

 今朝、ゴミ出しをしようと、8時過ぎに玄関を開けたら露草が20輪ほど咲いていました。
Tsuyukusa05
 花が小さくてよく見えませんね。

 アップです。
Tsuyukusa06
 露出をちょっと失敗してしまいまして、何となく力の無い写真です。←よく言えば、幻想的な。(^_^)

 万葉集で「つきくさ」とよまれているのが今の露草とされます。

 全部で9首ありました。

 ・つき草の移ろひやすく思へかもわが思ふ人の言も告げ来ぬ(4-583)大伴坂上大嬢:相聞
 ・月草に衣そ染むる君がため斑の衣摺らむと思ひて(7-1255)古歌集:雑歌
 ・鴨頭草(つきくさ)に衣色どり摺らめども移ろふ色といふが苦しさ(7-1339)譬喩歌・草に寄す
 ・月草に衣は摺らむ朝露にぬれての後は移ろひぬとも(7-1351)譬喩歌・草に寄す
 ・朝露に咲きすさびたる鴨頭草(つきくさ)の日くるるなへに消ぬべく思ほゆ(10-2281)秋相聞・花に寄す
 ・朝(あした)咲き夕(ゆふべ)は消ぬる鴨頭草(つきくさ)の消ぬべき恋もわれはするかも(10-2291)秋相聞・花に寄す
 ・鴨頭草(つきくさ)の仮れる命にある人をいかに知りてか後も逢はむとふ(11-2756)寄物陳思
 ・うち日さす宮にはあれど鴨頭草(つきくさ)の移ろふ情わが思はなくに(12-3058)寄物陳思
 ・百(もも)に千(ち)に人は言ふとも鴨頭草の移ろふ情われ持ためやも(12-3059)寄物陳思

 譬喩歌や寄物陳思が大多数です。そして、「移ろふ」とよまれているのが5首、「消ゆ」とよまれているのが2首ありました。

 花は染料に使われたようですが、花そのものは朝咲いて昼には萎れてしまうし、染めた色もすぐに褪せてしまうということで、はかないものの比喩によまれることが多いのでしょうね。

 確かに、花が咲いているのはゴミ出しの時しか見ることができません。(^_^;

 しかし、こんなに小さな花を染料に使おうとしたら、集めるのが大変でしょうね。しかも、朝早くに取らないといけないし。

2018年7月25日 (水)

やはり気になる「百重なす」

 昨日、前期最後の授業のあと、夜は高崎市内で集まり(会議のような研究会のような)がありました。東京に帰ると遅くなるし、渋川の家はまた炎熱地獄かと思い、高崎駅近くのホテルに泊まってしまいました。贅沢なことです。(^_^;

 今日は全く予定はなく、東京に帰るだけですので、その前に渋川の家に行ってきました。といっても、渋川は完全に反対方向ですので、渋川の家に寄ると2時間余計にかかります。正味の移動時間とは別に、電車の本数の少なさがネックです。それで、渋川の家から足が遠のきます。(^_^;

 前回、咲きかけだった浜木綿、咲いていました。
Hamayu_h3007p
 背後の、立ち枯れ掛けている草が邪魔ですね。撮るときの注意が足りませんでした。咲いているもの、咲き終わったもの、これから咲くものが混在しています。一気に咲けばもっときれいなのでしょうけどね。

 今回もたっぷり水やりをしました。

 花を上から撮影。
Hamayu_h3007q
 葉を上から撮影。
Hamayu_h3007r
 「百重なす」は花の形容とも、葉の形容とも取れそうに思えます。

 もう一説、茎の中身説を考えるには茎を解剖したいところですが、そんなことをしたら実が成らなくなるので、踏み切れませんでした。研究よりも趣味の園芸を優先させてしまいました。(^_^;

2018年7月22日 (日)

浜木綿の解剖&三重なす

 発芽した浜木綿は順調に育っています。

 昨年、実は2つ採れたのですが、もう一方は変化がありません。発芽した実とは1ヶ月近くの差ができてしまいました。
Hamayu_h3007l
 まだ見守り続けようか、諦めようか、思案のしどころです。

 結局、諦めて、今後のために解剖してみることにしました。

 まずは何もなさそうな部位を切ったつもりだったのですが……。
Hamayu_h3007m
 一撃で胚芽を両断してしまったようです。

 実の内部は水気がありました。胚芽様のものは生きているかどうか不明です。

 90度、別の角度から切ってみました。
Hamayu_h3007n
 こちらでもまた何かを両断してしまったようです。どうしてまた一撃で。(^_^; この正体は分かりません。

 素人なので、解剖しても成果はありませんでしたが、実の内部がどうなっているのかは分かりました。今後に生かせればと思います。

 土中から顔を出した芽はこんな具合です。
Hamayu_h3007o
 葉が3枚あります。柿本人麻呂の歌で、浜木綿の何が「百重なす」なのか議論があります。花か、葉か、茎の中身か。

 こんなちびっ子なのに、もう葉が3枚も出ているところを見ると、葉かなぁ、という気になります。

2018年7月 1日 (日)

美夫君志会80周年記念大会(2)

 大会1日目の夜、名古屋観光ホテルで懇親会でした。

 会長挨拶、講演者挨拶は、昨日アップしたのと同じ方々ですので、省略します。

 乾杯の挨拶は二松學舍大学の多田一臣先生。
Mibukushi2018f
 講演者の菊地先生と、2日目の研究発表者の上野先生。
Mibukushi2018g
 お二人で掛け合い漫才をしているわけではありません。菊地先生が講演内で上野先生の論文を取り上げられたので、それにまつわるバトルです。(^_^) でも、和気藹々ですね。楽しい学会です。

 菅野雅雄先生の挨拶。
Mibukushi2018h
 大会2日目は研究発表会でした。7人の方々の興味深い発表が続きました。

 まほろばメイトもお二人発表されましたので、そのお二方のみ写真を載せます。お一人は院生なので迷ったのですが、ご許可を頂きましたので、載せることにしました。

 軽部利恵さん。
Mibukushi2018i
 志水義夫先生。
Mibukushi2018j
 軽部さんはまだ博士前期課程の2年生です。落ち着いた明瞭な発表でした。質疑応答も適切だったと思います。

 志水先生のは、文字のみならず、音声や映像をも視野に収めた、大変にユニークで興味深い内容の発表でした。

2018年6月30日 (土)

美夫君志会80周年記念大会(1)

 今日明日は名古屋市の中京大学で美夫君志会の大会があるため、名古屋に来ています。今回の大会は80周年記念大会です。80周年というと、この学会は昭和10年代に創設されたことになりますから、ずいぶん長い歴史がありますね。

 1日目の今日は特別講演会で、美夫君志会、萬葉学会、上代文学会の各代表者の講演会でした。

 開会の辞:美夫君志会会長の菊川恵三先生。
Mibukushi2018a
 挨拶:中京大学学長の安村仁志先生。
Mibukushi2018b
 特別講演
  「万葉の夢歌とその展開」:美夫君志会会長・和歌山大学教授の菊川恵三先生。
Mibukushi2018c
  「万葉集の「仮名」」:萬葉学会代表・関西大学教授の乾善彦先生。
Mibukushi2018d
  「「好去好来歌」の性格」:上代文学会代表理事・東洋大学教授の菊地義裕先生。
Mibukushi2018e

 それぞれに大変に興味深い内容でした。個人的な関心からはやはり乾先生の講演が一番興味深かったです。当然のことながら、聴講者それぞれ、自身の関心に応じて心惹かれた講演はさまざまだったと思います。

2018年5月29日 (火)

高崎商科大学前駅付近の万葉歌碑

 上信電鉄の山名駅附近から、山上碑を経て金井沢碑に至るまでの山名丘陵に30基ほどの万葉歌碑が建てられています。それらのリストは私のHPに載せてあります。

 これらの石碑を建てたのは、地元出身の会社社長、信澤克己氏です。氏は、昭和40年代の後半、山名丘陵に開発の手が入りはじめたのを残念に思い、ここは我々の心のふるさとであることを形にしようとして、私財を投じて万葉歌碑を建てていったそうです。

 その成果が多数の万葉歌碑として実現したわけですが、石碑自体は完成しながら、信澤氏の逝去により、設置されず仕舞いになっていた歌碑が十基数ほどあったそうです。

 これらの歌碑をきちんと設置・整備して信澤氏の遺志を生かそうと、森林整備のボランティアグループである高崎里山の会と、高崎商科大学の国際・地域交流センターとが、平成21年4月に「石碑の路再生プロジェクト」を発足させました。それが実って、放置されていた石碑のうちの何基かが設置されるに至りました。

 そのうちの2基が、上信電鉄の高崎商科大学前駅のすぐ近くに設置されています。

 今日、群馬県立女子大学の非常勤のあと、仕事で高崎商科大学に行きました。帰りに高崎商科大学前駅に行きましたので、その2基の歌碑を見てきました。ただ、もう7時を過ぎていましたので、よく見えません。(^_^; ストロボをたいて写真だけ撮りました。

 み空行く月の光にただ一目あひ見し人の夢(いめ)にし見ゆる(4-710)
Ishibumi_e
 山川も依りて仕ふる神ながらたぎつ河内(かふち)に船出せすかも(1-39)
Ishibumi_f
 どちらも東歌ではありません。

 暗闇の中での無理矢理の撮影ですので、肝腎な歌は読めませんね。今度改めて明るい時間に来て撮り直さないとダメです。(^_^;

2018年3月23日 (金)

おうふうの『萬葉集』が……

 昭和60年に就職して以来、授業で使う万葉集のテキストにはずっとおうふうの『萬葉集』(鶴久・森山隆)を使ってきました。もう30年以上です。

 来年度も非常勤が続きますので、いつものようにこれをテキストに指定していたところ、昨日、教務の担当者からメールが来て、この本は「品切れ・重版未定」のため用意することができないので、どうしましょう、とのことでした。

 早速、おうふうのHPを見てみたら、確かにそうなっていました。

 ううむ。4月は、1年中でこの本が一番売れる時期でしょう。それが品切れということは、おうふうはもうこの本を増刷しないつもりなのでしょうかね?

 新学期に備えて増刷中ならば、「品切れ・○月○日重版予定」などとなっていそうです。

 確かに、この本、刷を重ねて、大分版面が劣化していたのが気になっていました。消えてしまっている文字すらあります。

 例を示そうと思いましたが、いざ探してみると簡単には見つかりません。(^_^;

 劣化の例としては例えば次のような感じです。
Ofumanyo_h24
 1460の題詞の「宿」、1461の4句目の「君」、5句目の「和」などが少し欠けています。他にもふりがなにちょっと厳しいのがいくつかあります。これは平成24年の版です。

 昔の版ではこんなことはなかったはずです。手もとにあった平成7年の版では次の通りです。
Ofumanyo_h07
 ね、以前はこんなに鮮明だったのに……、というつもりでスキャンしたら、上に示した文字はもうすでに劣化の兆しが見えますね。(^_^; どうもあまり良くない版面での印刷をずっと続けていたようです。(^_^;

 活字ではなく、写真製版でしょうから、写真製版した時点からあまり変わっていないのかもしれません。

 比べるなら、活字の頃のとでなくては意味がなかったかもしれません。

 そんなわけで、もしもこの本を自炊するなら、なるべく古い刷を使うのが良いと思います。

 さて、テキスト。

 おうふうの『萬葉集』が入手できないとすると、別のを考えなくてはなりません。至急にということでしたので、あまり考えずに塙版を選びました。後から考えると、井手先生・毛利先生の万葉集(和泉書院)という選択肢もありましたね。

 おうふう版の復活がないとすると(復活があったとしても)、再来年度のテキストには何が良いか考えねばなりません。←再来年度も非常勤が続くことになるかどうかは分かりませんが。(^_^;

 来年度の新2年生が私の万葉集の授業を取るのは初めてなので、その学生さん達は全員塙版を買うことになります。しかし、3年生以上は、すでにおうふう版を持っている可能性が高いです。その学生さん達に塙版を買わせるわけにはゆきませんので、おうふう版で良いことにします。同じ教室に、異なったテキストを持った学生が混在することになります。

 ちょっと厄介。

2018年2月27日 (火)

代表的な万葉歌

 ブログの「まほろぐ」が始まる前、掲示板「まほろば」の頃だったでしょうか、代表的な万葉歌のリストを作ったことがありました。

 方法は、『万葉秀歌』(斎藤茂吉)、『万葉百歌』(山本健吉・池田弥三郎)、『私の万葉集』(大岡信)、『日めくり万葉集』(NHK)など、合計8種類のテキストが、それぞれどの歌を選んでいるのかを集計したものです。

 その際、100首しか選んでいないテキストと800首以上の歌を選んでいるテキストとを同列に扱ったのでは、1票の格差が生じてしまいますので、実際の集計は、総数100首のうちの1首に選ばれた歌は1首1/100ポイント、800首のうちの1首に選ばれた歌は1首1/800ポイントとして合計しました。

 先日、美夫君志会の『萬葉百首』を入手しましたので、今回そのデータを加えました。
Matsudamanyo01
 結果は以下の通りです。ベスト20を示します。

  1 あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る(額田王)1・20
  2 紫草のにほへる妹を憎くあらば人妻ゆゑにわれ恋ひめやも(天武天皇)1・21
  2 我が宿のいささ群竹吹く風の音のかそけきこの夕かも(大伴家持)19・4291
  4 み吉野の象山の際の木末にはここだも騒く鳥の声かも(山部赤人)6・924
  4 石走る垂水の上のさわらびの萌え出づる春になりにけるかも(志貴皇子)8・1418
  6 我が背子を大和へ遣るとさ夜更けて暁露に我れ立ち濡れし(大伯皇女)2・105
  7 磯城島の大和の国に人二人ありとし思はば何か嘆かむ(作者不明)13・3249
  8 わたつみの豊旗雲に入り日差し今夜の月夜清く照りこそ(天智天皇)1・15
  8 秋の田の穂の上に霧らふ朝霞いつへの方に我が恋やまむ(磐姫皇后)2・88
  8 笹の葉はみ山もさやにさやげども我れは妹思ふ別れ来ぬれば(柿本人麻呂)2・133
  8 夕されば小倉の山に鳴く鹿は今夜は鳴かず寐ねにけらしも(舒明天皇)8・1511
  8 稲つけばかかる我が手を今夜もか殿の若子が取りて嘆かむ(東歌)14・3459
 13 我はもや安見児得たり皆人の得かてにすといふ安見児得たり(藤原鎌足)2・95
 14 吉野なる菜摘の川の川淀に鴨ぞ鳴くなる山蔭にして(湯原王)3・375
 15 熟田津に船乗りせむと月待てば潮もかなひぬ今は漕ぎ出でな(額田王)1・8
 15 うらうらに照れる春日にひばり上がり心悲しも独し思へば(大伴家持)19・4292
 17 東の野にかぎろひの立つ見えてかへり見すれば月かたぶきぬ(柿本人麻呂)1・48
 17 葦辺行く鴨の羽交ひに霜降りて寒き夕は大和し思ほゆ(志貴皇子)1・64
 19 君が行く道のながてを繰り畳ね焼きほろぼさむ天の火もがも(狭野弟上娘子)15・3724
 20 一つ松幾代か経ぬる吹く風の声の清きは年深みかも(市原王)6・1042

 いかがでしょうか。著名な歌が並んでいます。それなりに納得できる結果ではないかと思います。

 ただ、美夫君志会萬葉百首を加えたことで、加える前よりも順位が下がった歌に以下のものがあります。

 15 熟田津に船乗りせむと月待てば潮もかなひぬ今は漕ぎ出でな(額田王)1・8
 15 うらうらに照れる春日にひばり上がり心悲しも独し思へば(大伴家持)19・4292
 17 東の野にかぎろひの立つ見えてかへり見すれば月かたぶきぬ(柿本人麻呂)1・48
 17 葦辺行く鴨の羽交ひに霜降りて寒き夕は大和し思ほゆ(志貴皇子)1・64

 「熟田津に」(額田王)と「うらうらに」(家持)の歌は、もとは「紫草の」(天武)と「我が宿の」(家持)の歌とともに、4首揃って第2位でした。それが、今回の美夫君志会萬葉百首は百人一首方式であるために、同一作者の歌は一首しか採れず、これらの歌はその割を食いました。「東の」(人麻呂)と「葦辺行く」(志貴)も事情は全く同様で、この2首とも、もとは6位であったものが大分順位を下げています。

 百人一首形式だとこういう問題が生じます。配点のウェイトを考える必要がありそうです。

 対象となる選歌集を増やすとともに、合理的な集計方法も検討してゆきます。

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