文字・言語

2023年9月19日 (火)

「英語かるた」

 「英語かるた」を入手しました。
Eigocard01

 かるたも集めていますけど、私の収集品の中で一番の変わり種です。
 珍しいものが手に入りました。

 絵札と読み札はこんな感じです。
Eigocard02
Eigocard03

 読み札には英語の他に、カタカナの読みと意味とが記されています。
 いろはかるたは、読み札の最初の音が絵札を取る時の最大の手がかりになりますが、このかるたでは、それは全く通用しません。
 読まれた読み札の内容を理解して、それに相応しい絵を選ぶ感じでしょうか。
 abc……も全く無意味ではなく、中心となる語の頭文字がabc……に選ばれています。

 このような説明書が付いています。
Eigocard04

 発行年月日は記されていませんが、旧字新仮名です。
 当用漢字と現代かなづかいが定められたのは、ともに昭和21年11月です。
 印刷所は、現代かなづかいにはすぐにでも対応できますが、当用漢字に対応するための活字はまだ用意できなかったのかもしれません。

 説明書の中程に(新中生、新高校生)とあります。
 これは、新制中学校、新制高等学校の生徒という意味と思われます。
 戦後の学制改革で、新制中学校が発足したのは昭和22年度、新制高等学校の発足は昭和23年度です。

 かるたの用紙は厚紙ですが、紙質はあまり良くありません。
 箱に描かれた「J」の絵札にはジープの絵があります。
 あれこれ思い合わせるに、昭和23年代から数年以内でしょうか。

 もう1つ手がかりになりそうなのが、上に示した「c」の絵札です。
 ここに日めくりカレンダーが描かれています。
 5月19日で土曜日です。
 昭和20年代、30年代で5月19日が土曜日なのは、昭和20年、26年、31年、37年です。
 とすると、昭和26年ですかね。
 「e」の札の電灯の絵も懐かしいです。

 あれこれおもしろいです。

2023年9月11日 (月)

根来麻子氏『上代日本語の表記とことば』

 本日、根来麻子氏『上代日本語の表記とことば』(新典社)が刊行されました。
Jodainihongo

 目次は以下の通りです。

    凡例

  序 本書の目的と構成

第一部 宣命特有の表現
  第一章 「現(御)神」と「明神」―両者の使い分けをめぐって―
  第二章 「現(御)神」「明神」の訓
  第三章 「オホヤシマクニ」の意義―「御宇天皇」の訓みをめぐって―
  第四章 「天地の心を労み重み」「天地の心も労く重く」をめぐって

第二部 宣命の表記に関する問題
  第一章 宣命の表記と読み上げ
  第二章 謙譲語「タマフ(下二段)」の表記「食」について

第三部 正倉院文書特有の表現
  第一章 督促の表現―「怠延」を中心に―
  第二章 「廻」字の用法と熟語

第四部 宣命と正倉院文書とのかかわり
  第一章 「緩怠(怠緩)」「公民」の典拠と運用
  第二章 「暫間」「暫之間」の成り立ちと運用

第五部 上代文献の諸表現
  第一章 『万葉集』「明津神 我が大君」をめぐって
  第二章 『播磨国風土記』賀毛郡雲潤里条の主題―「云尓而已」の解釈を端緒として―
  第三章 『古事記』における「登岐士玖能迦玖能木実」の位置づけ

    初出一覧
    あとがき
    索引

 章の下の節に当たる項目は省略しました。

 上代日本語研究の資料は、古事記、日本書紀、万葉集、風土記などが主に用いられてきましたが、それらの文献は文学作品や歴史書という偏りがあります。
 一方、本書で根来氏が対象とするのは、天皇の命令を宣読した宣命や、行政文書としての正倉院文書です。
 こういう種類の資料も含めて考察することで、上代の日本語のありさまがより明確になってゆくものと思います。
 私もじっくりと拝読し、勉強いたします。

2023年9月 9日 (土)

越中ことば番附の絵はがき

 越中ことばの絵はがきを入手しました。2枚です。
 1枚目。
Echukotoba01
 上半分の写真には、「立山連峰ノ雄姿(富山湾ヨリ望ム)」とあります。

 2枚目。
Echukotoba02
 下半分の写真には「高岡公園濠端の桜」という解説が付いています。

 越中ことばの部分だけを拡大します。
 1枚目。
Echukotoba03
 「越中ことば番附」という表題の下には、「左記方言は古老間に使はるゝが現代人はあまり使はず」という注記があります。
 これはいつの絵はがきか分かりませんが、今はさらに失われてしまっているかもしれませんね。

 2枚目。
Echukotoba04

 2枚の絵はがきは組なのかどうかは不明ですが、こちらの文章に使われている語は、もう1枚の絵はがきの番附に載っているものが多いです。

 大伴家持が越中守として赴任した頃の越中のことばも都とは違っていたようで、家持の4017番の「東風」には「越の俗語に東風を安由乃可是と謂ふ」とあります。
 当時の越中方言と都のことばとの差は今よりは小さかったのでしょうかね。

2023年9月 2日 (土)

和食の英文

 先日のお食事会のお品書きです。
Shunsai40
 字が小さくて見にくいですが、日本語の下に英語表記もあります。
 私は中学校以来英語が苦手で今に至っていますが、日本語との対比には関心があります。
 そこで、ちょっと見てみました。英和辞典はランダムハウスに拠ります。
 3分割して載せます。

 まず最初。
Shunsai41
 appetizer は知りませんでした。辞書には次のようにありました。
  アペタイザー,食前酒,前菜;食欲をそそる飲み物または食べ物.
 なるほどです。

 halta jute がモロヘイヤに当たるのでしょうが、辞書には載っていませんでした。
 jute は次のようにありました。
  1 ジュート(繊維),黄麻(こうま)
    2 ツナソ,ジュート,コウマ:ジュートを採るシナノキ科ツナソ属の植物 Corchorus capsularis (white jute)および C.olitorius (tossa jute);東インド原産. 
   3 2と同属の植物の通称.

 「おつくり」は刺し身のことですけど、「刺す」と言うのを嫌って、「つくり」と言ったものと思います。
 そうだとすれば忌詞ですね。
 日国の「つくり」の項には以下のようにあります。
  (3)魚などの刺身(さしみ)。おつくり。つくりみ。
  *雑俳・冠独歩行〔1702〕「いそがしや・涼の鯉の作り売」
  *兵隊の宿〔1915〕〈上司小剣〉七「造身(ツクリ)を十人前出けまへんやろかて」
  *青井戸〔1972〕〈秦恒平〉「鯛の造りもなくなると」
 元禄時代にはこういう言い方のあったことが分かります。忌詞という記述はありません。

 日国で「おつくり」には次のようにあります。
  (2)(「つくり」は「つくりもの」の略)「さしみ(刺身)」を丁寧にいう語。もと、女房詞。
  *青草〔1914〕〈近松秋江〉五「小い弁当箱に入った鮮麗な鯛のおつくりなどを食べつつ」
 こちらには「もと、女房詞」とありますが、やはり特に忌詞とは書いてありません。
 用例は大正まで降ります。

 2番目。
Shunsai42
 eel は次のようにありました。
  1 ウナギ:無足目 Apodes の腹びれのない長い魚の総称;アナゴ,ハモ,ウツボなどを含む
 穴子も鱧もeel なのですね。sea eelで鱧ということでしょうか。

 conger は次のようにありました。
  1 ヨーロッパアナゴ,モトアナゴ:3m にもなるアナゴ科の海産魚;食用.
  2 アナゴ:アナゴ科 Congridae の魚の総称. (また cónger èel)
 conger eel で穴子なのでしょう。

 最後。
Shunsai43
 赤出汁は miso soup ですね。単にみそ汁ということで、特に赤だしというわけではありません。

 Tempura と Sushi は1字目のみ大文字なのに対して、SASHIMI は語全体が大文字なのですね。

 あれこれおもしろいです。

【追記】
 モロヘイヤに当たると思われる Halta jute が気になりましたので、ネットのDeepl翻訳で、逆に日本語のモロヘイヤを英語に翻訳してみました。
 そうしたら、その結果は、Nalta jute と出ました。
 お品書きの Halta jute は Nalta jute の誤植だったようです。
 すっきりしました。

2023年7月 6日 (木)

「ふみづき」の語源は?

 一昨日、7月4日(火)のNHK「ゆう5時」の気象コーナーで、旧暦7月の異称「文月」の語源の話がありました。
 「諸説ありますが」ということで、書物の虫干しをする月から来ているという説が紹介されました。
Fumizuki01

 兵庫県の西宮神社では毎年この季節に虫干しをすること、かつては多くの寺社でも同じくこの季節に虫干しをしていたそうです。
Fumizuki02

 確かに旧暦だともう梅雨は明けている季節ですから、そうかもしれないという気はしますが、どうでしょう。

 万葉集ではただ一首、巻10・2069番歌に「……あらたまの 年の緒長く 思ひ来し 恋尽すらむ 七月の 七日の宵は 我れも悲しも」という歌があり、このうしろから3句目を「ふみづきの」と訓んでいますが、原文は「七月」ですので、「ふみづき」と訓む確証にはなりません。
 古写本では「はつあきの」と訓むものが多く、古い注釈も同様に訓んでいましたが、『万葉集略解』あたりから「ふみづきの」と訓むようになり、現代ではそれが定訓になっています。

 もしも万葉集の例を「ふみづき」と訓んで良いとしたら、「ふみづき」の語源虫干し説が成り立つためには、この時代から7月に本の虫干しをする風習があったのか、ということになりますね。

 語源は難しいです。

2023年7月 5日 (水)

明治5年の『改置府県概表』

 この様なものを購入しました。
M05fuken01
 題簽は失われてしまっています。

 表紙裏と第1ページ。
M05fuken02
 この記述によって、書名は『改置府県概表』であることなどが知られます。
 明治5年の刊行です。
 大蔵省編纂です。内容的には、現代ならば総務省の管轄かと思われます。

 左ページが第1ページで、凡例です。
 この本に記載されている各府県の府県庁所在地は緯度・経度で示されています。
 その基準位置については、次のように書かれています。
M05fuken03
 英国の「ギリンウヮチ」ですねぇ。これは今で言う「グリニッジ」でしょう。

 表の例として、最初の東京府・京都府を挙げます。
M05fuken04
 京都府の府庁所在地は二条城ですね。
 どの府県も同様の形式で作成されています。

 府県の排列は以下の通りです。
 府(東京、京都、大坂)、開港場のある県(神奈川、兵庫、長崎、新潟)、関東、近畿、東海道、東山道、北陸道、山陰道、山陽道、南海道、西海道。
 開港場はもう1つ函館がありますが、この本には北海道は載っていませんので、開港場のある県は4つです。

 新潟県から足柄県。
M05fuken05
 新潟の「潟」の字が異体字です。

 群馬県から奈良県。
M05fuken06
 現在の群馬県と栃木県の範囲が、群馬県・栃木県・宇都宮県の3県になっています。
 栃木の「栃」の字が異体字です。

 奈良県は、堺県(でしたっけ?)に含まれてしまった時期もありますが、この本の明治5年には奈良県は存在しています。

 あれこれおもしろいです。

2023年6月26日 (月)

複製本『宸翰』(5)孝謙天皇宸翰封戸勅書、施薬院請物文書、造寺司請沙金文書

 4回に亙って載せてきた、明治17年の「宸翰」。その5回目です。

 前回の次は孝謙天皇宸翰封戸勅書です。
M17shinkan18
 天平宝字4年(760)、東大寺に封戸5000戸を施すという文書です。
 この複製の文書名には「孝謙天皇宸翰封戸勅書」とありますので、これによれば、全文が孝謙天皇の直筆ということになりましょうか。

 その次は施薬院請物文書。
M17shinkan19
 天平宝字3年(759)、施薬院が東大寺に桂心100斤を請求する文書です。
 時の天皇は淳仁天皇です。

 その次は造寺司請沙金文書。
M17shinkan20
 天平勝宝9歳(757)、造東大寺司が東大寺に沙金2016両を請求する文書です。
 時の天皇は孝謙天皇です。

 上の2つの文書に大きな文字で書かれている「宜」の文字は、天皇のものと考えられます。
 別筆と思われますので、それぞれ淳仁天皇と孝謙天皇のものなのでしょう。

2023年6月23日 (金)

明治5年の『布令必携新聞字引』

 明治5年の『布令必携新聞字引』を入手しました。
M05shinbun01
 題簽は破れていて、角書きの部分しか読めません。
 また、右側には朱が見えます。蔵書印かもしれませんが、これまた解読困難です。

 先日、明治2年の『増補新令字解』を載せました。
 類友ではありませんが、何かを入手すると、似たようなものが手に入ることがしばしばあります。
 この2書は、ともに明治初期に出版されたわけで、当時はご一新でいろいろな言葉が作られたり、広く使われたりすることが増えたのでしょうね。
 それで、このような書籍が多く発行されたのでしょう。

 表紙裏。
M05shinbun02
 こちらに書名が明記されています。
 名古屋の書肆の発行です。

 裏表紙裏。
M05shinbun03
 明治5年秋の発行です。
 版元が名古屋の店である故か、ここに並んでいるのも、美濃、伊勢、三河、遠江、尾張の中でも近隣の店です。

 本文の最初のページ。
M05shinbun04
 1行目の書名の1番下に「天」とあります。
 この1冊が天地人に3分されています。

 文字がやや小さいので前半を拡大します。
M05shinbun05
 2行目に「一新」がありますね。「ノコラズシンキニナル」とあります。明治のご一新ですね。
 最後の行に「一斑」があり、「オホクチカノヒトカド」と読んでしまい、しばし首をひねりました。
 「オホクチカノ」ではなくて「オホクノナカノ」ですね。

 後半。
M05shinbun06
 1行目の「一敗」に「イツバイ」というルビがあります。「イツパイ」ではないのですね。
 4行目の「一般」にも「イツパン」ではなく「イツバン」です。
 同じ行の「一毫」に「ウノケホド」とあります。「兎の毛」でしょうね。うさぎ、いいです。

 明治初期の語が分かって、あれこれおもしろいです。
 また続くかもしれません。

【追記】
 私、このブログを毎日更新することにしています。
 平成25年(2013)8月以来、書かなかった日は3日しかなかったはずなのですが、4日目が起きてしまいました。
 テレビを見ながら書いているうちに、思いがけなくも「ブラタモリ」の再放送が始まってしまい、近江さん久しぶり、などと思ったり、冒頭に登場したひこにゃんに引っ掛かったり、タモさんと案内人の方との間の「離合」問答を喜んだりしているうちに、ふと気づいたら日付が変わってしまっていました。
 痛恨の極みです。
 最も直接的には「離合」です。
 また明日から、毎日更新に努めます。

2023年6月12日 (月)

『や、此は便利だ』(平凡社)復刻版

 大正2年に刊行された『や、此は便利だ』の復刻版が平凡社ライブラリーの1冊として刊行されました。
Yaben01
 書名は兼ねてから知っていましたが、現物を見たことはありませんでした。
 今回の復刻のことは、Facebookでフォロワーの木下信一氏の書き込みによって知りました。
 木下氏にはこれまでも様々な情報を教えていただいて、ありがたく存じています。

 目次を切り貼りして載せます。
Yaben02
Yaben03
Yaben04

 ということで、『現代用語の基礎知識』と用字用語辞典とを合体させたような内容です。
 私は、『現代用語の基礎知識』の前身と思っていたのですが、それは全くの誤解だったようで、版元も異なります。
 しかし、『現代用語の基礎知識』はこの本の影響を強く受けているものと思います。

 あれこれ見てゆくと、大正1ケタの時代の世相や言語・表記などを知ることができて、あれこれ楽しいです。

2023年6月 9日 (金)

複製本『宸翰』(3)東大寺献物帳、道鏡文書、聖武天皇勅書

 先日来の「複製本『宸翰』(1)(2)」の続きです。
 (2)の酒人内親王願文の次は、天平勝宝8歳(756)の東大寺薬種献物帳。
M17shinkan08
 3紙半を切り貼りしました。
 あまりにも小さすぎますね。

 冒頭部です。
M17shinkan09
 東大寺の盧舎那仏に、麝香、犀角など60種の薬を奉納した文書で、全面に天皇御璽が捺してあります。

 末尾の年月日と署名。
M17shinkan10
 5人の署名があります。
 藤原永手以外は紫微中台の官人です。
 ここに永手が加わっている理由は分かりません。

 その次は、天平宝字6年(762)の弓削道鏡真跡文書。
M17shinkan11
 弓削道鏡が東大寺の一切経司所に一切経目録を借り出そうとした文書です。
 署名のみが道鏡の自筆なのか、全文が道鏡の自筆なのでしょうか。

 その次は、天平勝宝元年(753)の聖武帝宸翰封戸勅書。
M17shinkan12
 末尾の「今帝」は孝謙天皇。
 聖武太上天皇、光明皇太后、孝謙天皇の勅命で、東大寺に5000戸を施入するという文書です。
 聖武太上天皇の自筆とされています。

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