今日は前橋で講演をしてきました。「ばらの会」という団体で、これは、8月に講演をした「みくの会」の姉妹団体です。どちらの会も、ともに前橋市内でほぼ毎月学習会を開いています。レジュメはこちら。
会長さん等数人の幹部は共通です。そういう関係で、今日の「ばらの会」も8月の「みくの会」と同じ「万葉集入門」というタイトルで、という依頼でした。
同じ内容で良いというのは楽ですけど、全く同じというのもなんだかなぁと思い、「主な万葉歌」という章を追加しました。これは、時々当ブログでもご披露しているもので、様々な万葉集の解説書、万葉かるた、教科書などに収録されている万葉歌を集計したものです。対象となる材料が加わると微妙に順位が変動します。
現時点の順位20位以内は以下の通りです。
1.田児の浦ゆうち出でて見れば真白にそ不尽の高嶺に雪は降りける(三・三一八)山部赤人
2.銀も金も玉も何せむに勝れる宝子に及かめやも(五・八〇三)山上憶良
3.天地の 分れし時ゆ 神さびて 高く貴き 駿河なる 布士の高嶺を 天の原 振り放け見れば 渡る日の 影も隠らひ 照る月の 光も見えず 白雲も い行きはばかり 時じくそ 雪は降りける 語り継ぎ 言ひ継ぎ行かむ 不尽の高嶺は(三・三一七)山部赤人
4.瓜食めば 子ども思ほゆ 栗食めば まして偲はゆ 何処より 来りしものそ 眼交に もとな懸りて 安眠し寝さぬ(五・八〇二)山上憶良
5.石ばしる垂水の上のさ蕨の萌え出づる春になりにけるかも(八・一四一八)志貴皇子
6.東の野に炎の立つ見えてかへり見すれば月傾きぬ(一・四八)柿本人麻呂
7.わが屋戸のいささ群竹吹く風の音のかそけきこの夕かも(一九・四二九一)大伴家持
8.うらうらに照れる春日に雲雀あがり情悲しも独りしおもへば(一九・四二九二)大伴家持
9.淡海の海夕波千鳥汝が鳴けば情もしのに古思ほゆ(三・二六六)柿本人麻呂
10.あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る(一・二〇)額田王
11.憶良らは今は罷らむ子泣くらむそを負ふ母も吾を待つらむそ(三・三三七)山上憶良
12.熟田津に船乗りせむと月待てば潮もかなひぬ今は漕ぎ出でな(一・八)額田王
13.若の浦に潮満ち来れば潟を無み葦辺をさして鶴鳴き渡る(六・九一九)山部赤人
14.多摩川に曝す手作さらさらに何そこの児のここだ愛しき(一四・三三七四)武蔵国東歌
15.ぬばたまの夜の更けゆけば久木生ふる清き川原に千鳥しば鳴く(六・九二五)山部赤人
16.ささなみの志賀の辛崎幸くあれど大宮人の船待ちかねつ(一・三〇)柿本人麻呂
17.紫草のにほへる妹を憎くあらば人妻ゆゑにわれ恋ひめやも(一・二一)天武天皇
18.春の野に霞たなびきうら悲しこの夕かげに鴬鳴くも(一九・四二九〇)大伴家持
19.み吉野の象山の際の木末にはここだもさわく鳥の声かも(六・九二四)山部赤人
20.あをによし寧楽の京師は咲く花の薫ふがごとく今盛りなり(三・三二八)小野老
なるほどという歌が並びます。有名な歌なのに20位までのこのランキングに出てこない歌もたくさんあり、万葉集の層の厚さを感じます。
20位以内には赤人の歌が最も多く、5首も入っているのはちょっと意外でした。トップも赤人の歌です。
会場は、前橋駅の南にある昌賢学園前橋ホールです。これも8月の「みくの会」と同じでした。
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