創作童話「雛人形」
うさぎのぴょん太くんと、彼女のぴょん子ちゃんが一緒に道を歩いていると、道路脇の用水路を金魚の金太郎君達が泳いでいます。
なにか急いでいるように見えます。
「お~い。金太郎くんたち、どこに行くの?」
「あ、ぴょん太くん、ぴょん子ちゃん。いやぁ、かえるのけろきちくんのうちにお雛様が飾られているっていうので、みんなで見に行くところなの」
「あ、けろきちくんのところ初節句だね」
「お雛様、見たいなぁ」
「じゃ、僕たちも一緒に行くよ。かえるのお雛様かな。楽しみだなぁ。かえる雛♪ かえる雛♪」
「こんにちは。けろきちくん」
「あ、金太郎くんたちとぴょん太くん、ぴょん子ちゃん。こんにちは」
「初節句、おめでとう。お雛様が飾られているっていうので見に来たの」
「ありがとう」
「うちのお雛様だよ」
「かえる雛♪ かえる雛♪ かえ……。かえる雛じゃない!」
「あ、そうだね。このお雛様は、知り合いのおじさんが用意してくれたんだけど、かえるのお雛様は見つからなかったそうで、人間のお雛様なんだよ。NHK大河が平安時代だし、気に入っているよ」
「そうなの。素敵なお雛様だよ。御内裏様をよく見せて」
「男雛が向かって右側なのね」
「そうなの。その知り合いのおじさんが飾り付けてくれたんだけど、そのおじさん、男雛が右の方が落ち着くんだって」
「おじさんのこだわりなのね。横からも見せて」
「すてきね」
「ありがとう。おじさん、来年は、ぼんぼりの中に豆電球を仕込みたいとか言っていたよ。でも、おじさん口先ばかりだから、どうかなぁ」
「豪華五段飾りね。五段だと左大臣・右大臣はいないのね」
「そう。ちょっと残念。あ、「たのしいひなまつり」の歌には「赤いお顔の右大臣」って歌われているけど、おじさんに聞いたら、あれはおかしいって。そんな身分の高い人がSP役をするはずはないので、あれは随身と呼ぶのがいいって。歌詞の間違いみたいだよ」
「そうか。知り合いのおじさん、あれこれこだわりがあって、面倒臭い人だね」
「ちょっとね。(^_^)」
「随身がいないのは寂しいから、知り合いのねこさんに来てもらったの。こんなだよ」
「ぎゃー。折角のみやびな世界が、一瞬にしてガラが悪くなったね」
「本当にそう。バランスは大事だね。どっちのねこさんも強そうだけどね。平安貴族から見れば、武士なんて、あんなイメージだったのかも」
「あ、確かに」
などなど、みんなの語らいは夜まで続いたのでした。
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