創作童話「タケミカヅチ異聞」
うさぎのぴょん太くんが、彼女のぴょん子ちゃんと一緒に道を歩いていると、道路脇の用水路を金魚の金太郎君達が泳いでいます。
なにか急いでいるように見えます。
「お~い。金太郎くんたち、どこに行くの?」
「あ、ぴょん太くん。実は、かえるのけろきちくんのところに赤ちゃんが生まれたっていうんで、みんなで見に行くところなの」
「えっ! けろきちくん、奥さんいたんだ。知らなかったなぁ。じゃ、僕たちも一緒に行くよ。
かえるの赤ちゃんっていうとオタマジャクシだね。楽しみだなぁ。おたま♪ おたま♪」
「こんにちは。けろきちくん」
「あ、金太郎くんたちとぴょん太くん、ぴょん子ちゃん。こんにちは」
「けろきちくんに赤ちゃんが生まれたというので見に来たの」
「ありがとう。あ、こちら、僕の奥さんのけろ美ちゃん」
「こんにちは。はじめまして」
「はじめまして。どうぞよろしく」
「僕たちの赤ちゃんだよ」
「おたま♪ おたま♪ おた……。おたまじゃない!」
「あ、そうだね。うちの家は代々オタマジャクシじゃなくて、かえるの姿で生まれるんだよ」
「へ~。それは珍しいね。どうして?」
「どうしてかなぁ。それは分からないけど、うちの先祖は神様だったそうだから、それと関係あるかも」
「えっ? 神様?」
「そう。昔は常陸国の筑波山に住んでいたんだって。そして、常陸の鹿島からタケミカヅチの神様が白鹿に乗ってヤマトにいらしたときに、その先導をしたんだって。
で、先導もそうだけど、あちこち視察して、ヤマトが良いって、お勧めしたのもご先祖様なんだよ。たにぐくのさ渡る極みだからね。地理に詳しいよ。
タケミカヅチ様は白鹿だけど、うちのご先祖は今の奈良鹿の先祖に乗ってきたんだって。
こんな感じだよ」
鹿島を出発。
段々接近。
ヤマトに到着。
「わっ! でかっ! 鹿の顔つき、段々成長してません?」
「そうなんだ。鹿島からヤマトまで月日が掛かったから、鹿も大人になっちゃったんだ」
「ヤマトに着いたタケミカヅチ様は春日社の主祭神となり、鹿もかえるも奈良で子孫繁栄して今に至っているよ。
筑波に残った一族も四六のガマガエルとして繁栄しているんだ」
というタケミカヅチ異聞でした。
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