創作童話「隠れ里の決闘」
久しぶりの創作童話です。第6弾になります。
うさぎの生き肝を食べると空を飛べるようになる、などというデマが広まり、命を狙われることを恐れたうさぎたちは、人里離れた隠れ里に暮らすようになりました。
腕に自慢の5人のねこたちが用心棒を引き受けてくれました。
名付けて「神セブン」。
5人しかいないのですが、あと2人加わることを願って「セブン」です。
「七人の侍」に憧れているとのことです。
詳しくはこちらをご覧ください。
たにぐくのさ渡る極み、諸国をめぐっているカエルのけろきちくんは、3ヶ月ぶりにうさぎの隠れ里に行ってみることにしました。
連絡したら、うさぎのぴょん太くんが迎えに来てくれていました。
「やぁ、ぴょん太くん、久し振り。元気?
神セブンはちゃんと7人になったのかな?」
「久し振りだね。けろきちくん。
用心棒の件、ちょっと厄介なことになってしまって。
もの凄く柄の悪いのが3人やってきて、雇ってくれって言うんだよ。
こんな連中だよ。」
「わ! ほんとにガラ悪いね。
ま、加わってくれたら、用心棒は8人になるから、神セブンじゃなくて里見八犬士になるね。でも、ねこだからなぁ。ねこが八犬士はおかしいよね。」
「いや、そういう問題じゃなくて。あのガラの悪さ。いくら強そうでも、ああいう連中のお世話にはなりたくなくて。
それで、知り合いの親分に相談に行ったの。鰹一家の親分だよ。この親分もガラ悪いんだけど。(^_^)」
「相談したら、親分も、やめた方が良いって。
ちょうど親分のところにいる浪人さんに頼んで、その3人を追い払ってもらうことになったんだ。このご浪人さんだよ。」
「けろきちくん、ちょうどいいところに来たよ。これから3人組とご浪人さんとが戦うんだ。」
「ひえー! ご浪人さんも強そうだけれど、3対1だからなぁ。大丈夫かなぁ。」
「おい。おめえ、いい度胸してるじゃねえか。たった1人で、俺たち3人に勝てると思ってるのか?」
「……」
「黙ってねえで、何とか言え。」
「……」
「やっちまえ!」
浪人が少し体を動かしたと思ったら、3人組はその場に倒れ伏しました。
「つ、強い!」
「ご浪人様、ありがとうございます。3人とも死んじゃったんですか?」
「いや、峰打ちだ。そのうち息を吹き返すだろう。俺もムダな殺生はしたくない。
それに、あいつらがこの噂を広げれば、もう変なヤツらがこの里に来ることもねえだろう。」
「ご浪人様、ありがとうございます。どうぞこの里の用心棒になってくださいまし。
大したお礼はできませんが、ごはんは3食食べ放題。3食とも魚は付けます。そして、チュールも食べ放題でいかがでしょうか」
「3食食べ放題はありがたい。ではしばらくお世話になろう。ただ、チュールはいらねぇ。俺がチュールを食っていたらサマにならねぇ。」
「わかりました。ありがとうございます。
遅くなりましたが、ご浪人様のお名前は?」
浪人はあたりを見回すと、棗(なつめ)の木に目を留める。
「俺の名は、棗三十郎。とでも呼んでくれ。」
という次第で、うさぎの隠れ里は強力な用心棒を加えることができたのでした。
« ねこ時代劇 | トップページ | 黒猫感謝の日。クロネコヤマトにも感謝 »
「創作童話」カテゴリの記事
- 創作童話「どぐうくん、はにわくん、そして」(2024.07.21)
- 創作童話「上に候ふ御猫は」(2024.03.17)
- 創作童話「雛人形」(2024.03.03)
- 創作童話「タケミカヅチ異聞」(2024.02.11)
- NHK「鶴瓶の家族に乾杯」に淡路の線香(2024.01.16)
コメント