創作童話「うさぎの隠れ里」
好評の創作童話の第4弾です。
かえるのけろきちくんが山道を歩いていると、向こうに何か赤いものが見えます。
近づいて見たら、束ねたにんじんでした。
「はて、お百姓さんが収穫したにんじんを運んでいて落としたんだろうか。落とし主が見つかると良いけど」
そこへ、向こうから慌てたうさぎがやってきました。
「こんにちは。この辺ににんじんが落ちていなかった?」
「あ、きみが落としたの? ここに落ちていたのをちょうど拾ったとこだよ」
「うわぁ、ありがとう。助かるよ。あ、ぼくうさぎのぴょん太っていうの」
「ぼくは、かえるのけろきちだよ。どうぞよろしく」
「ぼくたちの村はすぐそこなんだ。ちょっと寄っていかない? お礼にご馳走するよ」
「お礼だなんて、それには及ばないけど、ちょっとくたびれたので、休ませてもらおうか」
「ここだよ」
「へー。ぼくは本当にあちこちの土地に行ってきたけど、ここは知らなかったなぁ」
「けろきちくんは、あちこちの土地に詳しいの?」
「うん。たにぐくのさ渡る極み、だからね。それにしても、ここは分かりにくいところにあるね」
「そうなんだよ。うさぎの生き肝を食べると空を飛べるなんていうデマが流れたんで、ぼくたち、狙われかねないんだ」
「空を飛べる? ぼくが聞いたのは、うさぎの生き肝を食べると、陸上でも水中でも暮らせるっていうことだったけど」
「最初はそういうデマだったんだけど、それがエスカレートしちゃって。困ったことだよ」
「すてきな村だね。あ、あそこでにんじんを育てているんだね」
「そう。人間の畑から盗んで捕まると、大変だから。ペンフレンドのピー太くんのお父さんはパイにされちゃったんだって。それで、自分たちで作ることにしたんだ」
「あっちには子供たちがたくさんいるね」
「うん。あそこは学校だよ。20人学級で、担任と副担任がいるんだ。みんな真剣に授業を聴いているでしょ。真面目な子供たちだよ」
「あっちにはもっと小さい子達」
「ここは保育園だよ。オレンジ組とレモン組。どちらも、子供たち10人につき、保育士さんは3人付くんだ。手厚いでしょ」
「ほんと、すてきな村だねぇ。ヘンなデマに惑わされた連中が来ないと良いね」
「一応、ガードマンもいるよ。オーイ」
「この村の平和は、われわれ神セブンが引き受けた」「おー!」
「わっ! びっくりした。ガードマンの神セブンさん?」
「そう。行き倒れていたのを助けたら、この村のガードマンを引き受けてくれたんだ」
「われわれは勇者たち神セブンです」
「ふーん。そうか。うさぎさん達と違って、ねこさんは強力な爪や歯があるものね」
「それだけじゃないさ。象をも倒すねこパンチが第1の武器さ」
「いや、象は倒せないでしょ」
「う~ん、当たり所が良ければ。……いや、子象ならば。……えと、生まれ落ちたばかりで、足許もおぼつかない赤ちゃん象ならば」
「赤ちゃん象にねこパンチ浴びせちゃダメでしょ? あと、神セブンって言ったけど、5人しかいないよね」
「今はね。あと2人の勇者は募集中」
「なら、神ファイブって言わなくちゃ」
「いやいやいや。我々は『七人の侍』に憧れておるわけで、三船敏郎先生、志村喬先生他の先生方を見習いたく、ここは何としてもあと2人集めて7人になる所存でござる」
「急に侍言葉になっちゃったな。して、報酬は?」
「この村にある食べ物、なんでも。そして、チュール1日1本でござる」
というような隠れ里のうさぎ村。
この先、続きがあるかないか、それは分かりません。
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