明治12年の『小学習字 名頭字尽』
このような本を入手しました。
題簽に「小学習字 名頭字尽 伊藤桂洲書 全」とあります。
書名からは、小学校の習字の手本として、人名等によく用いられる文字を集めたものという気がします。
表紙裏と最初のページ。
確かに、源平藤橘から始まっています。
源平藤橘は氏族名であって、人名ではありませんが、まあ同類です。
奥付。
明治12年に刊行されたものです。
第2ページ。
人名に用いられる文字というよりは徳目に関する文字という感じです。
ま、そういう文字は人名にもよく用いられる文字とは思います。
恩師のお一人である五味智英先生や、そのお兄さんの保義先生のご兄弟には、義と智が用いられています。
その次のページ。
これまた同様ではありますけれども、難しいですね。
このようなページもあります。
「郎」の字が3回出てきますが、それぞれ書体が異なります。
また左ページでは2回登場する「衛」の字の書体が異なります。
このページは「習字」というに相応しい内容ですが、このように同字に複数の書体をあげているのはこのページだけです。
全体としては、かなり難しい文字が多いです。
書名の角書きにある様に本当に小学校の習字の教科書なのでしょうかね。
書名の「名頭字」も気になりましたので、『日本国語大辞典』を見てみました。
日国には「な‐がしら【名頭】」が項目として立っており、以下のようにあります。
------------------------------------
(1)人の姓または名の最初の文字。姓名の頭(かしら)字。
(用例省略)
(2)江戸時代、寺子屋などで源・平・藤・橘・菅などのように、有名な姓氏の頭字を列記して、読み書きの教材に用いたもの。
*雑俳・柳多留‐七五〔1822〕「誉れなり名頭にない血鑓九郎」
*歌舞伎・綴合於伝仮名書(高橋お伝)〔1879〕五幕「子供の内に名頭(ナガシラ)から国尽し迄(実際は「占」にしんにょう)習ふのが関の山にて」
------------------------------------
このうちの(2)の伝統を引くものなのでしょうね。
明治5年に学制が発布され、学校制度が定められますが、何を教えるかについてはまだ模索中だったのかと思います。
あ、私、誤解していたと思います。
小学校でいきなりこれを習うのはハードルが高すぎると思ったのですが、「いきなり」ではないのかもしれませんね。
この前に、漢数字や、東西南北上下山川草木雪月花などを習って、その次の段階がこの本なのでしょう。
同時代資料は面白いです。
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