明治2年の『増補新令字解』
ネットオークションで見つけ、どのような本なのかもよく分からず、おもしろそうだったので、買ってしまいました。
お金のことを言ってはナンですけど、誰も入札しなかったので、1000円で買えました。♪
買った後で、どのような本なのかを調べてみると、明治初期の日本語を知る上で結構貴重な資料のようでした。
著者は荻田長三。『新令字解』は慶応4年刊。私の入手した増補版は明治2年刊です。
最初のページ。
残念ながら、下綴じのこよりも、本とじの糸も失われています。
散逸すると困るので、自分で綴じようかと思います。
いくつかのページを見てみます。
第1丁表。
このように、語の読みと意味とが、1文字目の画数順、文字別に排列されています。
書名の「新令」というのはどういうことでしょうね。
明治維新によって出された新たな法令ということでしょうか。
「一大革」「一層励精」「人材登庸」「人心一致」など、いかにも新時代の到来を思わせる語が並んでいます。
「八局」は明治新政府の役所ですね。
「了解」の意味として、「スッパリサトルコト」とあります。「スッパリ」がおもしろいです。
「人材登庸」には「キリヤウアル人ヲ……」とあります。見出し語の下に書かれている意味はおおよそは訓ですが、この様に「器量」という音が用いられているものもあります。
第1丁ウラ
「山陵」に「ミサヾキ」とあります。現代では「みささぎ」と読むことが普通と思いますが、古代には「みさざき」でした。この本では近代以前の読みが記されています。
2丁表
このページには「王政復古」が載っています。
最後のページ。39丁ウラになります。
「鰥寡孤独廃疾」が載っています。続日本紀に「鰥寡孤独自存不能」が時々登場します。こういう人々に物を与えたりする社会福祉の文脈で用いられています。純粋な社会福祉というよりも、社会的な弱者に天皇の徳を示すという意味合いの方が大きかったのでしょうが、上代の史籍に載っている語をこのような辞書に見つけて、感慨深いものがありました。
あれこれページをめくって、何かおもしろい読みや意味などが載っていたら、また取り上げるかもしれません。
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