慶応2年の『横文字早学』
この様なものを入手しました。
題簽に「横文字早学 全」とあります。
表紙裏と最初のページ。
表紙裏の1行目で慶応2年の刊行ということが知られます。
第1ページの下には筆記体の練習法が書かれています。
後から2行目に「上ノ如ク経ヲ立ツテ習フベシ」とあります。この「経」というのがよく分かりません。
最終ページと裏表紙裏。
書肆は横浜の店ですね。さすが横浜です。
その右の林治郎八さんが著者かと思ったのですが、そうではなくて持ち主ですね。
まずはアルファベットから。
筆記体です。
Dには「ディ」、Tには「ティ」とありますが、それぞれの「イ」は大きいでしょうか、小さいでしょうか。
Vの読みは「ヴィ」とあります。「ウ」に濁点。
当時の(今もそうですけど)日本語にはない発音をどう表記したのかという点で、興味深いです。
筆記体のあとに活字体のアルファベットのページがあります。
右ページ上の欄外には「仝上階書」とあります。「階書」は「楷書」の意でしょうか。
活字体を楷書と称したのでしょうかね。
左ページには日本語の音のローマ字表記がイロハ順に示されています。
こちらも筆記体が主で、活字体が従です。
「ケ」から「シ」まで。
ハ行はHで表記されていますが、1行目の2字目にあるとおり「フ」はFで表記されています。
また、左ページの一番最後にあるとおり「シ」はSHIですね。ヘボン式と同じです。
イロハの次は数字の読みです。
これは数字の読みであるとともに、英語ですね。
「ヴ」も出てきます。
ローマ数字と五十音。
左ページの五十音は、右上隅にある様に、「母字」と「子字」との表組になっていることが明示されています。
サ行からハ行まで。
こちらでは、「シ」はshiではなく、siになっています。
そして、「フ」はFではなく、hです。
先ほどと矛盾しますが、五十音表ということで、このように書いたものでしょうか。
学習者は混乱するかもしれませんね。
マ行からワ行まで。
ワ行であるべき片仮名の「ヰ」「ヱ」がヤ行扱いになっていて、yi、yeと表記されています。
そして、ワ行にはwi、weがあります。これらは英語を表記するのに必要な音でしょうね。
あれこれ興味深いです。
いつもながらの結論ですが、同時代資料は楽しいです。
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