代表的な万葉歌(4)
昨日の「万葉かるた」を入力したことで、わがライフワークの1つである「代表的な万葉歌」の順位が大幅に変わりました。
あ、私のライフワークは、他に、忠臣蔵配役表の増訂や地名表記の研究など、あれこれあります。
長生きせねば。
さて、「代表的な万葉歌」ですが、「万葉かるた」のデータを加えたことだけでなく、計算式(というほどのものではありません)を変えたことも大きいです。
どうも、今までの計算式では戦前の教科書のウェイトが大きすぎることが気になっていました。
今後さらにデータを加えるとともに、計算式も見直してゆきたく思います。
その上位100位までは以下の通りです。
1.石走る垂水の上のさわらびの萌え出づる春になりにけるかも(8-1418)志貴皇子
2.銀も金も玉も何せむにまされる宝子にしかめやも(5-803)山上憶良
3.熟田津に船乗りせむと月待てば潮もかなひぬ今は漕ぎ出でな(1-8)額田王
4.あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る(1-20)額田王
5.憶良らは今は罷らむ子泣くらむそれその母も我を待つらむぞ(3-337)山上憶良
6.あをによし奈良の都は咲く花のにほふがごとく今盛りなり(3-328)小野老
7.我が宿のいささ群竹吹く風の音のかそけきこの夕かも(19-4291)大伴家持
8.東の野にかぎろひの立つ見えてかへり見すれば月かたぶきぬ(1-48)柿本人麻呂
9.ぬばたまの夜の更けゆけば久木生ふる清き川原に千鳥しば鳴く(6-925)山部赤人
10.春過ぎて夏来るらし白栲の衣干したり天の香具山(1-28)持統天皇
11.稲つけばかかる我が手を今夜もか殿の若子が取りて嘆かむ(14-3459)東歌(未勘国)
12.君待つと我が恋ひ居れば我が宿の簾動かし秋の風吹く(4-488)額田王
13.紫草のにほへる妹を憎くあらば人妻ゆゑにわれ恋ひめやも(1-21)天武天皇
14.多摩川に曝す手作さらさらに何そこの児のここだ愛しき(14-3373)東歌(武蔵)
15.旅人の宿りせむ野に霜降らば我が子羽ぐくめ天の鶴群(9-1791)遣唐使の母
16.家にあれば笥に盛る飯を草枕旅にしあれば椎の葉に盛る(2-142)有間皇子
17.若の浦に潮満ち来れば潟をなみ葦辺をさして鶴鳴き渡る(6-919)山部赤人
18.我が背子を大和へ遣るとさ夜更けて暁露に我れ立ち濡れし(2-105)大伯皇女
19.笹の葉はみ山もさやにさやげども我れは妹思ふ別れ来ぬれば(2-133)柿本人麻呂
20.田子の浦ゆうち出でて見れば真白にぞ富士の高嶺に雪は降りける(3-318)山部赤人
21.わたつみの豊旗雲に入り日差し今夜の月夜清く照りこそ(1-15)天智天皇
22.近江の海夕波千鳥汝が鳴けば心もしのにいにしへ思ほゆ(3-266)柿本人麻呂
23.夕されば小倉の山に鳴く鹿は今夜は鳴かず寐ねにけらしも(8-1511)舒明天皇
24.春の野に霞たなびきうら悲しこの夕影に鴬鳴くも(19-4290)大伴家持
25.磯城島の大和の国に人二人ありとし思はば何か嘆かむ(13-3249)作者不明
26.君が行く海辺の宿に霧立たば吾が立ち嘆く息と知りませ(15-3580)遣新羅使人の縁者
27.み吉野の象山の際の木末にはここだも騒く鳥の声かも(6-924)山部赤人
28.秋の田の穂の上に霧らふ朝霞いつへの方に我が恋やまむ(2-88)磐姫皇后
29.信濃なる筑摩の川の細石も君し踏みてば玉と拾はむ(14-3400)東歌(信濃)
30.君が行く道のながてを繰り畳ね焼きほろぼさむ天の火もがも(15-3724)狭野弟上娘子
31.新しき年の初めの初春の今日降る雪のいやしけ吉事(20-4516)大伴家持
32.我はもや安見児得たり皆人の得かてにすといふ安見児得たり(2-95)藤原鎌足
33.葦辺行く鴨の羽交ひに霜降りて寒き夕は大和し思ほゆ(1-64)志貴皇子
34.うらうらに照れる春日にひばり上がり心悲しも独し思へば(19-4292)大伴家持
35.あしひきの山川の瀬の鳴るなへに弓月が岳に雲立ち渡る(7-1088)柿本人麻呂歌集
36.わが妻はいたく恋ひらし飲む水に影さへ見えて世に忘られず(20-4322)若倭部身麻呂/遠江防人
37.たまきはる宇智の大野に馬並めて朝踏ますらむその草深野(1-4)中皇命
38.桜田へ鶴鳴き渡る年魚市潟潮干にけらし鶴鳴き渡る(3-271)高市黒人
39.春の野にすみれ採みにと来しわれそ野をなつかしみ一夜寝にける(8-1424)山部赤人
40.春の園紅にほふ桃の花下照る道に出で立つ娘子(19-4139)大伴家持
41.験なきものを思はずは一杯の濁れる酒を飲むべくあるらし(3-338)大伴旅人
42.あしひきの山のしづくに妹待つとわれ立ち濡れぬ山のしづくに(2-107)大津皇子
43.吉野なる菜摘の川の川淀に鴨ぞ鳴くなる山蔭にして(3-375)湯原王
44.君に恋ひ甚も術なみ平山の小松が下に立ち嘆くかも(4-593)笠女郎
45.士やも空しくあるべき万代に語り継ぐべき名は立てずして(6-978)山上憶良
46.百伝ふ磐余の池に鳴く鴨を今日のみ見てや雲隠りなむ(3-416)大津皇子
47.籠もよ み籠持ち ふくしもよ みぶくし持ち この岡に 菜摘ます児 家告らせ 名告らさね
そらみつ 大和の国は 押しなべて 我こそ居れ しきなべて 我こそ居れ 我にこそは 告らめ 家をも名をも(1-1)雄略天皇
48.み熊野の浦の浜木綿百重なす心は思へど直に逢はぬかも(4-496)柿本人麻呂
49.川の上のゆつ岩群に草生さず常にもがもな常処女にて(1-22)吹黄刀自
50.今朝の朝明雁が音聞きつ春日山もみちにけらし我が心痛し(8-1513)穂積皇子
51.旅にしてもの恋しきに山下の赤のそほ船沖を漕ぐ見ゆ(3-270)高市黒人
52.采女の袖吹きかへす明日香風都を遠みいたづらに吹く(1-51)志貴皇子
53.一つ松幾代か経ぬる吹く風の声の清きは年深みかも(6-1042)市原王
54.沫雪のほどろほどろに降りしけば奈良の都し思ほゆるかも(8-1639)大伴旅人
55.わが背子と二人見ませば幾許かこの降る雪の嬉しからまし(8-1658)光明皇后
56.秋山の木の下隠り行く水の我れこそ益さめ御思ひよりは(2-92)鏡王女
57.天地の 分れし時ゆ 神さびて 高く貴き 駿河なる 布士の高嶺を 天の原 振り放け見れば
渡る日の 影も隠らひ 照る月の 光も見えず 白雲も い行きはばかり 時じくそ 雪は降りける
語り継ぎ 言ひ継ぎ行かむ 不尽の高嶺は(3-317)山部赤人
58.忘らむて野行き山行き我れ来れど我が父母は忘れせのかも(20-4344)商長首麻呂/駿河防人
59.夕闇は道たづたづし月待ちていませ我が背子その間にも見む(4-709)豊前国の娘子大宅女
60.冬こもり春の大野を焼く人は焼き足らねかも我が心焼く(7-1336)作者不明
61.いにしへに恋ふる鳥かも弓絃葉の御井の上より鳴き渡り行く(2-111)弓削皇子
62.夏の野の繁みに咲ける姫百合の知らえぬ恋は苦しきものそ(8-1500)大伴坂上郎女
63.三輪山をしかも隠すか雲だにも心あらなも隠さふべしや(1-18)額田王
64.岩代の浜松が枝を引き結びま幸くあらばまた帰り見む(2-141)有間皇子
65.蝦鳴く神名火川に影見えて今か咲くらむ山吹の花(8-1435)厚見王
66.天の海に雲の波立ち月の舟星の林に漕ぎ隠る見ゆ(7-1068)柿本人麻呂歌集
67.防人に行くは誰が背と問ふ人を見るがともしさ物思ひもせず(20-4425)昔年防人妻
68.福のいかなる人か黒髪の白くなるまで妹が声を聞く(7-1411)作者不明
69.もののふの八十娘子らが汲み乱ふ寺井の上の堅香子の花(19-4143)大伴家持
70.ふたり行けど行き過ぎかたき秋山をいかにか君がひとり越ゆらむ(2-106)大伯皇女
71.馬買はば妹歩行ならむよしゑやし石は履むとも吾は二人行かむ(13-3317)作者不明
72.巨勢山のつらつら椿つらつらに見つつ偲はな巨勢の春野を(1-54)坂門人足
73.燈火の明石大門に入らむ日や漕ぎ別れなむ家のあたり見ず(3-254)柿本人麻呂
74.たけばぬれたかねば長き妹が髪このころ見ぬに掻き入れつらむか(2-123)三方沙弥
75.人言を繁み言痛み己が世に未だ渡らぬ朝川渡る(2-116)但馬皇女
76.勝鹿の真間の井見れば立ち平し水汲ましけむ手児名し思ほゆ(9-1808)高橋虫麻呂
77.妹が見し楝の花は散りぬべしわが泣く涙いまだ干なくに(5-798)山上憶良
78.天離る夷の長道ゆ恋ひ来れば明石の門より大和島見ゆ(3-255)柿本人麻呂
79.ますらをや片恋せむと嘆けども醜のますらをなほ恋ひにけり(2-117)舎人皇子
80.瓜食めば 子ども思ほゆ 栗食めば まして偲はゆ いづくより 来りしものそ
まなかひに もとなかかりて 安寐し寝なさぬ(5-802)山上憶良
81.朝寝髪我は梳らじうるはしき君が手枕触れてしものを(11-2578)作者不明
82.御民我れ生ける験あり天地の栄ゆる時にあへらく思へば(6-996)海犬養岡麻呂
83.楽浪の志賀の辛崎幸くあれど大宮人の舟待ちかねつ(1-30)柿本人麻呂
84.飛ぶ鳥の明日香の里を置きて去なば君があたりは見えずかもあらむ(1-78)元明天皇
85.淡路の野島が崎の浜風に妹が結びし紐吹き返す(3-251)柿本人麻呂
86.恋ひ恋ひて逢へる時だに愛しき言尽してよ長くと思はば(4-661)大伴坂上郎女
87.山吹の立ちよそひたる山清水汲みに行かめど道の知らなく(2-158)高市皇子
88.紫は灰さすものそ海石榴市の八十の衢に逢へる子や誰(12-3101)作者不明
89.楽浪の志賀の大わだ淀むとも昔の人にまたも逢はめやも(1-31)柿本人麻呂
90.たらちねの母が手放れ斯くばかり為方なき事はいまだ為なくに(11-2368)柿本人麻呂歌集
91.磯の上に生ふる馬酔木を手折らめど見すべき君が在りと言はなくに(2-166)大伯皇女
92.君が行き日長くなりぬ山尋ね迎へか行かむ待ちにか待たむ(2-85)磐姫皇后
93.ひさかたの天の香具山この夕霞たなびく春立つらしも(10-1812)柿本人麻呂歌集
94.秋付けば尾花が上に置く露の消ぬべくも我は思ほゆるかも(8-1564)日置長枝娘子
95.神奈備の磐瀬の社の呼子鳥いたくな鳴きそ我が恋増さる(8-1419)鏡王女
96.にほ鳥の葛飾早稲をにへすともその愛しきを外に立てめやも(14-3386)東歌(下総)
97.吾を待つと君が濡れけむあしひきの山のしづくに成らましものを(2-108)石川郎女
98.振り放けて三日月見れば一目見し人の眉引き思ほゆるかも(6-994)大伴家持
99.世間は空しきものと知る時しいよよますます悲しかりけり(5-793)大伴旅人
100.秋の田の穂向きの寄れる片寄りに君に寄りなな言痛くありとも(2-114)但馬皇女
いかがでしょうか。
当然入っていて然るべき歌がないとか、この歌がこんなに上位にあるのは納得できないとか、それぞれにご意見があるかと思います。
改訂を続けて行く所存です。
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どれもこれも納得の一首ばかりですね。
とはいえ、あの歌は?…と思ってしまう歌が他にいくつもありますから・・・いわゆる撰集を作るって作業は大変ですねえ…
投稿: 三友亭主人 | 2023年3月21日 (火) 07時52分
三友亭主人さん
コメントをありがとうございます。
本当に、万葉集にはかくも名歌が多いのかと、今さらながらに感じます。
もう上位の方は順序などどうでも良いように思えてきました。
以前、30位までを載せたときに、三友亭主人さんから、「敷島の大和の国に人ふたり」の歌についてコメント頂きましたね。あの時は、あの歌は54位でしたので、リストに載りませんでしたが、今回は堂々の25位です。
前回と今回とでそんな変動があります。
何か新しいデータを加えるたびに変動が起きます。もっともっとデータを増やしてゆけば、変動幅は次第に小さくなっていって、完成に近づいて行くのでしょう。
あと、今回は本文にも書きましたように、計算式を変更して、教科書のウェイトを落としたことも変動が生じた理由です。
教科書に載った歌というのは、それだけ多くの人の記憶に残っている歌ではあるのでしょうけど、ちょっとウェイトが大きすぎる(特に戦前の教科書)ように感じましたので。
投稿: 玉村の源さん | 2023年3月21日 (火) 08時29分