文火・武火
以前、当ブログで大正時代の料理本をご紹介したことがありました。もう7年も前です。
そこに載っている料理もさることながら、使われている語や表記にも興味深いものが多かったです。
その1つに「文火」があります。この語には「とろび」というルビが付いていました。
恥ずかしながら、「とろび」を「文火」と書くことは知りませんでした。(^_^;
ブログの記事は以下の通りです。
http://mahoroba3.cocolog-nifty.com/blog/2014/05/post-66d2.html
http://mahoroba3.cocolog-nifty.com/blog/2014/05/post-0160.html
日国を引いてみましたら、『養生訓』の例が挙がっていました。
・養生訓〔1713〕七「文火とはやはらかなる火也。武火とはつよき火なり」
なるほど、文武で対になっているのでした。
東大史料編纂所の古文書・古記録のデータベースや、岩波の古典大系本などには用例が見つかりませんでしたが、近代文学作品には、森鴎外、有島武郎などに「文火」の例がありました。
その後、三友亭主人さんから用例のご教示をいただきました。
大和本草(飲食の部)、鼎左秘録(飲食部)、物類品隲(飲食部)などの例で、いずれも飲食に関する例です。
どうも、「文火」も「武火」も、料理や薬を煎じるときの火加減の例で、かなり生活に密着した語と考えられます。それで、昔の文学作品や評論にはあまり用いられず、実用書の中で用いられているのでしょう。
昨日、「ねこあつめ」の「今日のあいことば」が「糖花」だったことで、ツイッターでご質問をいただき、調べていた過程で『和漢三才図会』の用例が見つかりました。
そこに「文武」の例がありました。
2行目の分注です。
アップにします。
訓読すれば、「火の文武は、宜しく其の中を得べし」となりましょうか。
火加減は、弱からず強からず、中間にせよ、ということなのでしょう。
ひょんなことで用例が見つかりました。
役に立つ「ねこあつめ」。
いえ、冗談ではなく、その「今日のあいことば」には、ただ事でない語が採り上げられている(ことがあります)。
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