大正12年の『市町村大字読方名彙』と六合村
このような本を入手しました。
奥付です。
この本があれば大正時代の大字以上の地名の読み方が分かります。
良い資料が手に入りました。
ところが、群馬県のあたりを見ているうちに、次のような箇所に目が留まりました。
「六合」村に「ロクガフ」という読みが付いています。
この村は、明治33年に6ヶ村が合併してできた村です。
村名は、6ヶ村の合併なので表記は「六合」としましたが、読みは「くに」です。
「くに」という読みの典拠は日本書紀にあります。
「六合」は、日本書紀の神代紀に3例、神武紀に2例あります。そのうち、神武紀の1例を兼右本で示します。
東西南北と天地の6つで世界といった意で、「六合」を「くに」と訓ませています。
六合村に日本書紀の訓を知っている人がいたのでしょうね。アカデミックではありますが、ちょっと凝りすぎという気がします。(^_^;
そういう次第で、この村名は「くに」であるはずなので、この本の「ロクガフ」という読みは誤りであると思われます。
大正12年以降に「ろくごう」から「くに」に変わったということは多分ないと思います。←要確認。
この本において、地名の読みを決めるに当たっては、
・明治十三年十二月、内務省地理局出版の『郡区町村一覧』
・明治十八年四月、同地理局出版の『地名索引』
・明治十三年以降継続出版された、農商務省地質調査所発行の『欧文日本地形図及地質図』にローマ字で表示された地名
・陸地測量部発行の五万分の一、廿万分の一などの地図に付された難読地名
・海軍省水路部発行の日本水路誌に付されたローマ字による地名
・明治四十三年五月、東京自治舘発行の『帝国韓満地方名鑑』
などを資料としたことが、その「緒言」に記されています。
ところが、依拠した資料間において、読みに相違のあるものが多数あったということです。
それについて、次のように書かれています。
疑わしい地名は、現地の役場に照会して正確を期したとのことです。
「六合」は明治33年成立の村なので、資料が少なかったのかもしれません。たまたま「ロクガフ」という読みのある資料を見て、これならば表記に相応しい読みということで疑問を抱かず、そのまま載せてしまったものかもしれません。
良い資料を入手しましたが、絶対ではないということになりますね。
どんな資料も絶対と思ってはいけないという、良い教訓になりました。気を付けます。
他に、よく知っている地名を見てみようと思い、なじみのあたりを見てみました。
「平塚」の下に「戸越トゴエ」とあります。以前、国文学研究資料館のあった地です。
今は「とごし」といっています。ただ、この地名については、『日本歴史地名大系』(平凡社)の「戸越村」の項を見ると、見出しには「とごし」の読みを付けているものの、解説に、「なお戸越を古くはトゴエとよんだともいう。」という記述がありました。
地名は難しいですけど、面白いです。
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