明治10年の『新撰年代記』(6)外国の国名
度々ご披露している明治10年の『新撰年代記』、第6回目となります。
今回は外国の国名です。
「各国形勢」という項目があります。冒頭はこんな具合です。
国ごとに、まず国名があり、続いて、「幅員 人口」「都府」「鉄路」「土産」という4項目が並んでいます。
「幅員」というのは面積ですね。今、「幅員」というと道幅などに用いますので、面積に用いるのは新鮮な気がしました。
「土産」は各国の産物を指しているのでしょう。すると、読みは「みやげ」ではなく「とさん」か「どさん」なのでしょう。
挙がっている国は全部で22ヶ国で、以下の通りです。
英吉利〔イギリス〕(イギリス)
普魯西〔プロシア〕(プロシア)
瑞典〔ズウイデン〕(スエーデン)
比利時〔ベルジュム〕(ベルギー)
葡萄牙〔ポルトガル〕(ポルトガル)
埃及〔ヱヂプト〕(エジプト)
伯爾西〔ブラジル〕(ブラジル)
支那〔シナ〕(シナ)
仏蘭西〔フランス〕(フランス)
墺地利〔ヲースタリヤ〕(オーストリア)
嗹国〔デンマルク〕(デンマーク)
瑞西〔スイチル〕(スイス)
希臘〔ギリシヤ〕(ギリシャ)
米合衆国〔アメリカガツシフコク〕(アメリカ合衆国)
智利〔チリ〕(チリ)
比耳西亜〔ペルシヤ〕(ペルシャ)
魯西亜〔ロシヤ〕(ロシア)
以太利〔イタリヤ〕(イタリア)
和蘭〔ヲランダ〕(オランダ)
西班牙〔イスパニヤ〕(イスパニア)
墨西哥〔メキシコ〕(メキシコ)
白露〔ペイリユ〕(ペルー)
この年代記に付いているふりがなを〔 〕内に示し、現在の読みを( )内に示しました。
地域別の内訳は以下の通りです。
ヨーロッパ 14
アメリカ 5
アフリカ 1
アジア 1
中近東 1
だいぶヨーロッパに偏っています。
国名の排列順はよく分かりません。
国名表記は今と同じものもあれば、そうでないものもあります。
ま、「今と同じ」といっても、今はカタカナで書くことが普通ですが、たとえば、一太郎で「フランス」や「ポルトガル」を打とうとすると、変換候補の中に、この年代記と同じ「仏蘭西」や「葡萄牙」が出てきます。
外国の国名にはどうして難しい漢字を当てたのでしょうか。
理由として、次のようなことを考えました。
1.なるべく似た発音の文字を用いようとした。
2.その国の特徴と合う意味を持つ文字を当てようとした。
3.すでに清国で使われていた表記に準拠した。
4.外国の地名であることがすぐに分かるように、普段あまり用いない文字や文字列を選んだ。
まだ思い付くかもしれません。
いくつか兼ねたものもあったかもしれません。
さて、いかに。
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