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2021年2月12日 (金)

明治10年の『新撰年代記』(6)外国の国名

 度々ご披露している明治10年の『新撰年代記』、第6回目となります。
 今回は外国の国名です。
 「各国形勢」という項目があります。冒頭はこんな具合です。
M10nendaiki23
 国ごとに、まず国名があり、続いて、「幅員 人口」「都府」「鉄路」「土産」という4項目が並んでいます。
 「幅員」というのは面積ですね。今、「幅員」というと道幅などに用いますので、面積に用いるのは新鮮な気がしました。
 「土産」は各国の産物を指しているのでしょう。すると、読みは「みやげ」ではなく「とさん」か「どさん」なのでしょう。

 挙がっている国は全部で22ヶ国で、以下の通りです。

  英吉利〔イギリス〕(イギリス)
  普魯西〔プロシア〕(プロシア)
  瑞典〔ズウイデン〕(スエーデン)
  比利時〔ベルジュム〕(ベルギー)
  葡萄牙〔ポルトガル〕(ポルトガル)
  埃及〔ヱヂプト〕(エジプト)
  伯爾西〔ブラジル〕(ブラジル)
  支那〔シナ〕(シナ)
  仏蘭西〔フランス〕(フランス)
  墺地利〔ヲースタリヤ〕(オーストリア)
  嗹国〔デンマルク〕(デンマーク)
  瑞西〔スイチル〕(スイス)
  希臘〔ギリシヤ〕(ギリシャ)
  米合衆国〔アメリカガツシフコク〕(アメリカ合衆国)
  智利〔チリ〕(チリ)
  比耳西亜〔ペルシヤ〕(ペルシャ)
  魯西亜〔ロシヤ〕(ロシア)
  以太利〔イタリヤ〕(イタリア)
  和蘭〔ヲランダ〕(オランダ)
  西班牙〔イスパニヤ〕(イスパニア)
  墨西哥〔メキシコ〕(メキシコ)
  白露〔ペイリユ〕(ペルー)

 この年代記に付いているふりがなを〔 〕内に示し、現在の読みを( )内に示しました。

 地域別の内訳は以下の通りです。
  ヨーロッパ 14
  アメリカ   5
  アフリカ   1
  アジア    1
  中近東    1

 だいぶヨーロッパに偏っています。
 国名の排列順はよく分かりません。

 国名表記は今と同じものもあれば、そうでないものもあります。
 ま、「今と同じ」といっても、今はカタカナで書くことが普通ですが、たとえば、一太郎で「フランス」や「ポルトガル」を打とうとすると、変換候補の中に、この年代記と同じ「仏蘭西」や「葡萄牙」が出てきます。

 外国の国名にはどうして難しい漢字を当てたのでしょうか。
 理由として、次のようなことを考えました。

 1.なるべく似た発音の文字を用いようとした。
 2.その国の特徴と合う意味を持つ文字を当てようとした。
 3.すでに清国で使われていた表記に準拠した。
 4.外国の地名であることがすぐに分かるように、普段あまり用いない文字や文字列を選んだ。

 まだ思い付くかもしれません。
 いくつか兼ねたものもあったかもしれません。

 さて、いかに。

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