「今御門町」のよみ
8月4日に、明治21年の『一新講社 道中宝鑑』のことを取り上げました。
この道中記を見ると、奈良に次のような記載があります。
奈良の旅館、魚屋佐兵衛と升屋伊兵衛の所在地が「今ゴ門丁」となっています。
漢字で書くと「今御門丁(町)」です。よみはずっと「いまみかどちょう」と思い込んでいましたが、「今ゴ門丁」の表記だと「いまごもんちょう」になってしまいます。
「いやぁ、そんなはずは」と思って、他の史料を見ると、例えば次のようなものが見つかりました。
『奈良名所絵図』(年代不明)
「いまみかどはたごや」とあります。
『真誠講』(明治32年)
「ならいまみかど町」です。
「いまみかど」が正しいのではないでしょうかね。
「今ゴ門丁」とある明治21年の『一新講社 道中宝鑑』は長野県で刊行されたものです。
そういった地理的な遠さも影響しているのかもしれません。
あるいは、長野といえば善光寺。ひょっとして善光寺近辺では、善光寺の門にちなむ町を「○○ごもん町」と言っていたとか。
……などと、単なる妄想を書いてはいけません。(^_^;
同時代資料は貴重ですが、同時代資料であっても、必ずしも常に正しいとは限らないということになりましょう。
厄介なことではありますが、面白いことでもあります。
なお、「今御門」の名は、元興寺の北門に由来するようです。
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