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2020年9月 3日 (木)

兵どもが夢の跡

 昨日乗った新幹線に、車内誌『トランヴェール』の9月号が置いてありました。
Trainvert20209a

 今号の特集は「『おくのほそ道』翻訳トラベル」です。
Trainvert20209b

 『おくのほそ道』の英訳は何種類か刊行されているのですね。
 この特集の前半では、『おくのほそ道』で句がよまれている土地を、アーサー・ビナード氏と深沢眞二氏(連歌・俳諧の研究者)が訪れて、その句の英訳を鑑賞します。範囲は白河から松島までです。
Trainvert20209c
 上の画像の右側の写真は、大高森から撮した松島です。大高森については、以前、三友亭主人さんがブログで触れられていて、その時に初めて名前を知りました。この写真のキャプションを見て、「おお、これが」と思いました。といっても、大高森から撮した写真ですので、大高森自体は写っていないのですが。

 両氏。
Trainvert20209d

 後半では、アーサー・ビナード氏が新訳に挑みます。範囲は平泉から象潟までです。
Trainvert20209e

 私は英語が苦手で、せっかくの特集が猫に小判だったのですが、それでも大変に興味深く読みました。

 「閑かさや岩にしみ入る蝉の声」をビナード氏は、
 「Up here,a stillness――the sound of the cicadas seeps into the crags」と訳しています。

 「閑か」を silence ではなく、stillness と訳したのはビナード氏の工夫のようです。

 英語に関することではありませんが、「夏草や兵どもが夢の跡」の解釈について、この「夢」は芭蕉の見た夢ではないかという説が紹介されていました。芭蕉が兵たちの夢を見た。はっと気づくと眼前には夏草がそよぐばかりであった、という解釈です。芭蕉の時代、「夢」は眠っているときに見る夢だけを指し、将来の希望という意味はなかったというのが根拠の1つになっているようです。

 考えたこともない解釈で、新鮮でした。

 日本の古典文学と英語という、その2つを組み合わせた、なんともアカデミックな特集です。

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コメント

奥の細道,旅してみたいですね。
萩原は,千住と松島,平泉,大垣ぐらいしか行ったことありません。
山寺,行きたいなあ。
でも,東北は遠い。特に今年は,自粛だし。

ところで,関係ない話。
群馬での講演,旅費はどうなっているの?
ちょっと心配になりました。
(答えないでください。)

萩さん

 おくのほそ道、いいですよね。私もあの雑誌を読んで行きたくなりました。
 私も行ったことがあるのは、多賀城、松島、金沢、大垣くらいです。
 いつか、あちこち行ってみたいです。

 旅費のご心配、ありがとうございます。
 旅費は出るところと出ないところとあります。(^_^;
 なかなか。

金沢なら行ったことはあるけれど,芭蕉はどこで詠んだのですか?
不勉強ですね。すいません。
平泉はいちばんいいですね。高館・・・。

旅費が出なくても,誠実に講演をされる源さんの姿,目に浮かびます。
頑張ってください。

萩さん

 金沢は、「卯の花山・くりからが谷をこえて、金沢は七月中の五日也。」とあって、その地で、前年に亡くなった一笑という俳人の追善の句会に参加して句をよんでいます。
 具体的な場所は分かりませんが、金沢城下(現在の金沢市内)と思われます。

自分も調べてみましたが,どうも兼六園と野町に石碑があるみたいですね。
どちらも行ったことがありますが,その時には芭蕉のことなんかあまり気にしていなかったので
まったく素通りです。

金沢市に研修で行ったとき,野町小学校も見学させてもらいました。
野町界隈,いいところです。

萩さん

 亡き俳人一笑のお兄さんが追善の会を催した場所は、お兄さんの自宅だったのか、あるいは、お寺か料亭の一室を借りたのか、『おくのほそ道』には書いていないので、何か別の資料がないと分からないですね。
 土地に伝わる伝承があったとしても、しばしば怪しいし。(^_^;

『斉藤一美 ニュースワイドSAKIDORI!』という番組内の「アーサー・ビナード午後の三枚おろし」というコーナーで、アーサーさんが「 silence ではなく、stillness と訳した」理由や事の発端等を一昨日、昨日と話されていました。
ご興味がおありでしたら radiko サイトで「sakidori」で検索して、12月14日、15日の2時間5分くらいを経過したあたりからお聴きください。
それぞれ1週間、タイムフリーで聴けます。
今週、おそらく金曜日まで芭蕉の句について語ると思われます。
Silence ではセミさえ鳴いていないはずになりますし、stillness に音の静寂以外も含意させたこともわかり、いつも日本や日本語の知識の豊富さに驚かされていますが、彼のこの句への理解の深さがうかがい知れます。
冒頭の up here に相当することを芭蕉は詠んでいませんが、芭蕉はこの句を立石寺で詠んだことから、海外の方が読んだときに芭蕉がどこかを登ってこの句を詠んだことがわかるように、そして1行目(の母音数)が5音になるように巧みに状況を織り込んだあたりも秀逸な翻訳だと思っています。
長くなりました。
失礼申し上げます。

通りすがりさん

 お知らせをありがとうございます。

 ご紹介くださった番組では、この雑誌に載っていたことが、もっとずっと詳しく、かつご本人の肉声で聴くことができるのですね。

 貴重な情報をありがとうございました。

 アーサー・ビナードさん、ただものではありませんね。

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