傷に塩
今年の3月に『世界ことわざ比較辞典』(岩波書店)という本が刊行されたことを、昨日、フェイスブックで知りました。
フェイスブック経由で見たのは、この本の著者の一人である時田昌瑞氏のインタビューです。
https://dailyportalz.jp/kiji/comparing-world-proverbs?fbclid=IwAR16ftmeu9hJ2iRcxNweb-yj4VpIIWCdSjGA0tCmBjji-NKKN51puYdjNVw
外国のことに疎い私ですが、言葉に関する辞書ということで、大いに関心を持ちました。面白そうな本です。
ただ、このインタビューの中にこんな一節がありました。
いや、憶良の長歌に「いとのきて 痛き瘡(きず)には 鹹塩(からしほ)を 潅(そそ)くちふが如く」(巻五・897番歌)ってあるけど……、と思いました。
この歌の前には「沈痾自哀文」があって、そこにも「諺曰、痛瘡潅塩、短材截端、此之謂也。」(諺に曰はく、痛き瘡に塩を潅(そそ)き、短き材の端を截(き)るといふは、此の謂(いひ)なり。)とあります。
どうなんでしょ。当時、日本でこの諺が広く使われていたのか、あるいは漢籍に出典があるのか。
東京の家には万葉集の注釈はまだあまり持ってきていないのですが、沢瀉氏の注釈や多田氏の全解には漢籍の出典のことは全く触れられていませんでした。
遠く離れた国に同じような諺があった場合、一方から一方に伝播したのか、それとも、全く偶然に別々に発生したのか。可能性としては両方あり得ますよね。
傷に塩を塗ると痛いって、普遍的ですし。
とはいえ、さらに思うに、漁師さんなどでは、浜辺でケガをして、そこに海水が掛かって痛い、という経験は頻繁にするでしょうけど、漁師さん以外の人の場合、傷口に塩(あるいは塩水)が掛かるって、そうないことだと思います。
どういう状況で傷口に塩が掛かるんだろうと考えて、ひょっとしたら、傷口に塩というのは、ケガの治療法の1つだったのだろうかと思いつきました。
肉や魚の保存方法として塩漬けにするというのは古代からやっているわけですから、塩に消毒作用のあることは経験的に知っていたでしょうし。
以前、神田典城さんが研究発表で、八十神たちが稲羽の素兎に潮水を浴びろと教えたのは、必ずしも意地悪ではなくて、あれはあれで治療法だったのではないかと言われたような気がします。おぼろな記憶でお名前を出すのもいかがかと思いましたが……。
ただ、細菌の発見は17世紀くらいなのですよね。
済みません。まとまりなく書き進めていって、支離滅裂です。(^_^;
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