「オトギカルタ」
このようなかるたを入手しました。
現物ではなく復刻版です。奥付がなく、いつの復刻か分かりません。
解説が1枚入っていて、「このオトギカルタは、大正時代から昭和初期に各地に普及していたかるたを、主に復刻製作しました。」とあります。
「主に復刻製作しました」という部分が意味不明です。
絵札と読み札はこのようです。
今まで、当ブログでは、おとぎ話・昔話のかるたを3つ取り上げてきました。
昔話のかるた(戦前)
「おとぎかるた」(戦後ほどなくか)
「お伽カルタ」(戦前)
それぞれの内容を表にしてみました。
桃太郎が不動の1位です。それ以外の順位は4つのかるたでほぼ同様ですが、戦後、金太郎の躍進が目立ちます。
興味深いのは「に」の札と「も」の札で、いずれも桃太郎です。そして、「も」は不動の「桃から生まれた桃太郎」です。
「に」は「日本一の~」で、「日本一の桃太郎」だったり「日本一のキビ団子」だったりします。このかるたでは「日本一の旗を立て」ですね。
上の札では、金太郎の読み札2枚が興味深いです。
2枚続けると、「まさかりかついだ金太郎 熊にまたがりお馬の稽古」となります。
これ、童謡の歌詞とほぼ同じですね。明らかに童謡の歌詞を踏まえていることでしょう。
とすれば、このかるたの発行年を知る手掛かりになる、と思いました。
わくわくしましたが、ダメでした。
この童謡(というか唱歌)は、明治33年(1900年)6月発行の『幼年唱歌 初編上巻』に載っているのでした。
このかるた、明治33年以降ということしか分かりません。年代は絞れませんでした。
あと4組。
前のかるたでも朝倉山のオニさんからご指摘を頂きましたように、「うさぎとかめ」の話は舶来品ですね。
それにも関わらず、しれっと混ざっています。(^_^)
どの札でも、動物は丸ごと動物の姿をしているにもかかわらず、猿蟹合戦のカニは、頭だけがカニで、体は人間です。
語句に関しては、「ら」の札「楽に退治る鬼ヶ島」の「退治る」が少し気になりました。
名詞の動詞化ですね。現代では「退治する」が普通だと思います。
日国によると、古くは「退治す」だったのが、江戸の後半から「退治る」が使われるようになったようです。
最古の用例として、人情本の『春色梅美婦禰』〔1841~42頃〕のものが挙がっていました。
箱の絵は、この復刻に際して新たに描かれたもののようです。
絵札が3枚散らしてある他に、右下に一寸法師が、中央から左上に掛けて鬼の絵が描かれています。
この一寸法師、かるたの絵と全く違いますね。
箱の絵は中原淳一風です。←知らんけど。(^_^;
かなりミスマッチと思います。(^_^)
【追記】
一寸法師の装備って、お椀の舟に箸の櫂、そして剣は針でしたね。箱の絵の一寸法師の剣、柄頭の部分にちゃんと針のメドがありますね。細部がちゃんと描かれています。(^_^)
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コメント
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僭越ながら、中原淳一風の絵は高橋真琴氏のイラストのように思いました。
高橋真琴氏のイラストは1960年代から1970年代くらいに流行っていましたが、
1950年代から少女漫画などで仕事をされていたと思います。
中の絵札とはだいぶ違いますね。
投稿: 源さんの後輩 | 2020年4月29日 (水) 21時32分
源さんの後輩さん
早速のご教示をありがとうございました。
高橋真琴氏ですか。
どうも全く疎くてお恥ずかしいです。
そうしますと、このカルタが復刻された年代も何となく推測できますね。
ありがとうございます。
投稿: 玉村の源さん | 2020年4月29日 (水) 21時36分