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2020年1月26日 (日)

「増補漢語早見大全」(4)

 「増補漢語早見大全」、まだ続きます。(^_^; 第4弾の今日は、見出し語の上に付いている字音について、現代と異なるものを挙げます。

Kangohayami16
 3行目「比較」に「ひきやう」とあります。
 日国では、「比較」は、「ひかく」と「ひこう」が立項されていましたが、「ひきょう」は立っていませんでした。
 ツクリを同じくする「校合」を「きょうごう」とよむところから考えるに、「ひきょう」もあり得るかと思います。

Kangohayami17
 3行目「断然」に「だんねん」とあります。現代では「だんぜん」ですね。「だんぜん」が漢音、「だんねん」が呉音です。日国には「だんぜん」しか立項されていませんでした。日国に挙がっている「だんぜん」の例は、形容動詞は報徳記(1856年)が最古、副詞は米欧回覧実記(1877年)が最古ですので、幕末明治に生まれた新しい漢語のようです。新語なので、呉音・漢音いずれか読みがまだ定まっていなかったのでしょうかね。

Kangohayami18
 呉音・漢音ということでは、3行目「協力」に付いている「けうりき」は呉音ですね。現代は「きょうりょく」という漢音。明治が呉音で現代が漢音というのは、上の「だんねん」と同様です。

Kangohayami19
 2行目の「出納」に「すいのふ」と附訓されています。日国には「すいとう」「すいのう」両方立っていて、次のようにあります。用例は省略しますが、出典名だけ挙げておきます。

>すい‐とう[‥タフ] 【出納】〔名〕(「すい」は「出」の音の一つで、「だす」の意に用いるものか。「とう」は「納」の慣用音)
> (1)金銭や物品の出し入れ。現在、主に営業上の出し入れにいう。すいのう。
> *西洋事情〔1866~70〕、*増補布令字弁〔1872〕、*会計法(明治二二年)〔1889〕、*高瀬舟〔1916〕、*二つの話〔1946〕
> (2)〓しゅつのう(出納)。
>補注 「色葉字類抄」や「節用集」の類では「シュツナウ」と読んでいる。金銭の出し入れに「すいとう」と読むようになったのは比較的新しい時代になってからだと思われる。

>すい‐のう[‥ナフ] 【出納】〔名〕(「のう」は「納」の呉音)
> 「すいとう(出納)(1)」に同じ。
> *明治月刊〔1868~69〕、*日誌字解〔1869〕、*改正増補和英語林集成〔1886〕「Suino〓 スイナフ 出納」

 明治初年には「すいとう」「すいのう」両方の読みがあったようです。

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 1行目の「保護」に「はうご」とあります。日国には「ほご」とともに「ほうご」も立項してあります。そこに、(「ほう」は「保」の漢音、「ほ」は慣用音)とありますので、「ほご」よりも「ほうご」の方が正当と言えそうです。
 また、日国の「ほうご」には、布令字弁〔1868~72〕「保護 ハウゴ ダイジニスルコト」という例が挙がっています。「増補漢語早見大全」の「はうご 保護 ダイジニスル」と重なります。この点、当ブログの「増補漢語早見大全」(2)で源さんの後輩さんが指摘してくださった、布令字弁〔1868~72〕「目的 モクテキ メアテ」のケースが思い起こされます。「増補漢語早見大全」と『布令字弁』とには深い関係がありそうに思えます。

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 3行目「確証」に付いている「くはうしやう」はどうでしょうか。「かくしょう」でしょうから「くはう」は不審です。

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 3行目「透徹」に付いている「とうてい」も不審です。「てつ」じゃないかと。

Kangohayami23
 3行目「抜群」に付いている「はつりつ」も不審。「ばつぐん」ですよね。これについては、前の行の項目の音「けいりつ」の「りつ」と目移りで生じた誤りの可能性がありそうに思えます。

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コメント

見事にツボにはまってしまいました。笑

「理解」の「ワケヲツゲル」の、理解をワケとするのは、現在使われている、いわゆるcomprehension の訳語より古い意味ですね。

「抜群」の「人並ニスク(グ)レル」は、最初分かりませんでした。日国に「ひとなみすぐれる(一般の人とかけ離れて優秀である)」が立項されていて、人並「より」優れている意味だと気が付きました。

合併を日国で引くと、ペイと半濁点の付いた読みが安愚楽鍋(1871-1872)のルビにあるようですが、
この資料の半濁点は、パしかないですね。面白いです。

源さんの後輩さん

 コメントをありがとうございます。
 ツボにはまってくださってありがとうございます。
 取り上げた甲斐があったというものです。
 この資料、おもしろいですよね。興味が尽きません。

 「ワケ」は、「あっ!」でした。これ、ずっと「フケヲツケル」と読んでいて、意味が全く通らなかったのです。「フケ」って何だろうと。「ワケ」なら分かります。「わけを付ける」か「わけを告げる」かは考えるとして。

 ありがとうございました。

 文字としては明らかに「フケ」だと思うのですが、何らかの印刷上の問題で「ワ」が「フ」になってしまったのでしょうね。

 半濁音はパだけですか。これまた興味深いですね。

「ツケル」は濁点なしですから確かに「付ける」ですね。
ありがとうございます。

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