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2020年1月25日 (土)

「増補漢語早見大全」(3)

 「増補漢語早見大全」の第3弾です。
 今回は、知らない語が出てきて不審に思ったものの、日国等を見て、その不審が解決した項目をとりあげます。
 言ってみれば、私の無知・不勉強さの公表ということになります。(^_^;

Kangohayami11
 3行目の「旧弊」に「ワルキシクセ」とあります。
 この「シクセ」が分かりません。「しゅくせ(宿世)」かなぁとも考えましたが、ちょっと意味が違うように思います。
 日国で「しくせ」を引くと、次のようにありました。用例は省略しました(以下同)。

 >し‐くせ 【仕癖】〔名〕(「しぐせ」とも)
 > ある一定の仕方が繰りかえされて、型になった傾向、習慣、性質など。

 これですね。

Kangohayami12
 3行目の「異日」に「マヱド」とあります。これは全く分かりません。
 日国の「まえど」には次のようにありました。

 >まえ‐ど[まへ‥] 【前度】〔名〕
 > 以前。昔。せんだって。また、先年。

 また、見出し語の上の音の「いじつ」は、日国には次のようにありました。

 >い‐じつ 【異日】〔名〕
 > その日とは別の、過去または将来のある日。他日。

 両者、重なりますね。「マヱド」は「前度」のようです。

Kangohayami13
 3行目の「僻論」の「フリクツ」が分かりません。「ヘリクツ」の誤りでしょうか。一応、日国で「フリクツ」を引いたら、ありました。

 >ふ‐りくつ 【不理屈】〔名〕
 > 理屈に合わないこと。道理に合わないこと。不道理。

 これですね。不理屈という語の存在は知りませんでした。

Kangohayami14
 3行目の「娼婦」に「ヲヤマ」とあります。「おやま」というと歌舞伎の女形が思い浮かびますが、意味が合いません。
 また日国です。

 >おやま 【お山・女形】〔名〕(歴史的かなづかいは「をやま」「おやま」のどちらか未詳)
 >〔一〕(お山)
 > (1)遊女、娼妓の異称。上方で用いる。
 > (2)遊女のうち、特に、上級の太夫、天神以外のものをさしていう。
 > (3)船遊女をいう。
 > (4)一般に、美しい女を称していう。
 >〔二〕
 > (1)歌舞伎劇で、女の役をする男の役者。現代では、「女形」の字をあてることが多い。おんながた。
 > (2)操(あやつり)人形劇で、女役の人形をいう。おやまにんぎょう。

 「おやま」には、歌舞伎の女形の他に遊女の意があるのですね。これまた知りませんでした。

 なお、最後の行の「愕然」に「ビツクリ」とあります。明治時代にもう「びっくり」という語があったのかとびっくりしました。また日国を見ると、

 >びっくり〔副〕
 > (1)(「と」を伴って用いることもある)不意の出来事、また意外なことに驚くさまを表わす語。現代では多く「びっくりする」の形をとる。
 > *玉塵抄〔1563〕一九「鳥は木のまがりひきたわめて弓のやうな木をみてもびっくりとおどろくぞ」
 >  (以下、用例省略)
 > (2)微動するさまを表わす語。ぴくり。

 でした。戦国時代からあるのですね。またびっくりです。

Kangohayami15
 3行目の見出し語の「珍察」。意味が「ヨウダイヲミル」となっていますので、診察のことでしょうね。言偏と玉偏と間違えたのでしょうか。ただ、音も「ちんさつ」です。漢字表記に音も引かれてしまったのでしょうか。

 日国には「ちんさつ」は立項されていませんでしたが、国文学研究資料館の「新日本古典籍総合データベース」に『眼病珍察弁論』(がんびょうちんさつべんろん)が載っていました。写本1冊。完本ではなく、うしろが欠けているとのことです。東洋医学の眼科書だそうです。いつのものか分かりません。
 例は少ないものの、「珍察」という語も実際に使われていたことが分かります。誤字の可能性もありますけど。

 以上が今日の成果です。
 知らないことがたくさん。そして、日国はさすがに有用。

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コメント

さすが日国ですねえ。
それにしても日国を、これといった事情がないまま、はじめから最後まで全部を読むわけにもいかないしねえ・・・
そんなきっかけを与えてくれるのも、今回のお買い物のせいかでしょうか(笑)

三友亭主人さん

 コメントをありがとうございます。
 ほんと、さすが日国と、改めて感じました。伊達に大きくはありません。

 今野真二氏は日国全巻を精読して『『日本国語大辞典』をよむ』(三省堂)という本を出されていますけど、そういう人は極めて例外的ですよね。ただ事ではありません。

 今回の発掘品、いろいろと勉強になります。ありがたい買い物でした。

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