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2019年11月28日 (木)

明治42年の「名所かるた」(4)

 先日アップした「明治42年の「名所かるた」(3)」に、このかるたの地名を国別に集計したリストを載せましたが、国別の集計というのはあまり意味がなかったと思います。
 そこで、地名を地域別に分類してみました。おおよそ北から南へと並べてみます。

【東北】4
 象潟(出羽)、最上川(出羽)、松島(陸奥)、猪苗代湖(陸奥)

【関東】9
 筑波山(常陸)、霞が浦(常陸)、那須野原(下野)、日光(下野)、赤城山(上野)、
 伊香保(上野)、武蔵野(武蔵)、隅田川(武蔵・下総)、箱根(相模)

【中部】11
 浅間山(信濃)、姨捨山(信濃)、諏訪湖(信濃)、富士山(駿河)、清見潟(駿河)、
 三保の松原(駿河)、佐夜の中山(遠江)、遠州灘(遠江)、鳴海(尾張)
 長良川(美濃)、二見の浦(伊勢)

【近畿】23
 琵琶湖(近江)、鏡山(近江)、三井寺(近江)、嵐山(山城)、大井川(山城)、
 加茂川(山城)、淀川(山城)、井出の玉川(山城)、龍田川(大和)、泊瀬(大和)、
 吉野山(大和)、吉野川(大和)、難波浦(摂津)、住の江(摂津)、
 摂津の灘(摂津)、布引滝(摂津)、須磨(摂津)、和歌浦(紀伊)、熊野洋(紀伊)、
 那智滝(紀伊)、淡路島(淡路)、明石(播磨)、天の橋立(丹後)

【中国】1
 厳島(安藝)

【四国】1
 鳴戸(阿波)

【九州】1
 箱崎八幡(筑前)

 近畿が半数に迫る勢いで、圧倒的に多いですが、その一方、東北・関東・中部にも目配りしていますね。
 それに対し、中国・四国・九州に冷たいこと。もう少し配慮があっても良かったように思います。

 中国で唯一採られているのが厳島だなと思い、そういう目で見てみたら、松島と天の橋立も採られていますので、日本三景は拾っていることになります。

 話変わって、出典不明の歌の出典探索はなかなか進みません。

 伝承によるものもありそうです。そういう例を2つ。

 この歌について、
M42meishocard06

 『おくのほそ道』に次のような一節があります。
  朝日花やかに指出る程に、象潟に船をうかぶ。……むかふの岸に船をあがれば、「花の上こぐ」と読れし桜の老木、西行法師の記念をのこす。

 新編全集『松尾芭蕉集(2)』の「花の上こぐ」の頭注(109ページ)に、「伝西行歌「西行桜/象潟の桜はなみに埋れてはなの上こぐ蜑のつり船」(継尾集)」とあります。
 また、日本歴史地名大系『秋田県の地名』(平凡社)の「象潟」の項には次のようにあります。
  なお西行の歌と伝えて宗祇の「名所方角抄」に出る
    象潟の桜は波に埋もれて花の上漕ぐ海人の釣舟
  は「山家集」にはないが、芭蕉もこの伝えにより「花の上漕ぐとよまれし桜の老い木、西行法師の記念を残す」(奥の細道)と記す。

 宗祇の『名所方角抄』は、国文学研究資料館所蔵本の画像が同所のサイトにあります。その画像を勝手に貼ってはまずいでしょうから、URLのみ示します。
http://codh.rois.ac.jp/iiif/iiif-curation-viewer/index.html?pages=200021672&pos=95&lang=ja

 そこには、「きさかたや桜は波にうつもれて花のうへこくあまのつり舟」とあるのみで、西行作とは書かれていません。

 もう1枚。
M42meishocard07

 この歌に関しても、芭蕉の『更級紀行』に次のような一節があります。
  無常迅速のいそがはしさも我身にかへり見られて、あはの鳴戸は波風もなかりけり。

 これについても、新編全集『松尾芭蕉集(2)』の「あはの鳴戸」の頭注(69ページ)に、「兼好作と伝える「世の中を渡りくらべて今ぞ知る(一本、見る時は)阿波の鳴門は波風もなし」に拠る。」とあります。この頭注には「兼好作と伝える」とあるばかりで、具体的な出典の記載はありません。

 あれこれ探した結果、徒然草の注釈書である『野槌』(林羅山。寛永初年か)の国文学研究資料館所蔵本に次のような歌が見つかりました。その画像も同所のサイトにあります。
http://codh.rois.ac.jp/iiif/iiif-curation-viewer/index.html?pages=200015458&pos=8&lang=ja

 そこには次のようにあります。
   又兼好かうたなりとてある人のかたりしは
  世中を渡りくらへて今そしるあはの鳴戸は波風もなし

 これらの2つのケースは、芭蕉が伝西行作の歌、伝兼好作の歌を知っていて、それを踏まえた文章を書いたということでしょう。芭蕉は、(「全ての」というわけではなく、「ごく一部の」なのかもしれませんが)読者もこれらの歌を知っていることを前提にしてのことでしょう。

 「名所かるた」の編者も知っていたのでしょうね。本当に西行作か、兼好作かということはともかく、現代人とは知識のベースが違うことをしみじみと感じます。

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