『はじめて楽しむ万葉集』(上野誠)のデータを追加
私の「代表的な万葉歌」を充実させるためのデータ収集、鋭意継続中です。
この度、上野誠氏の『はじめて楽しむ万葉集』(角川ソフィア文庫)の歌を追加しました。
この本に収録されている歌は84首。これまで「代表的な万葉歌」作成のために使用した文献の中で収録歌数は最少です。
そのわずか84首の中で、これまで「代表的な万葉歌」の資料として用いてきた『万葉秀歌(茂吉)』(364首)、『万葉百歌(山本・池田)』(109首)、『万葉集講義(五味)』(418首)、『万葉の秀歌(中西)』(252首)、『私の万葉集(大岡)』(811首)、『日めくり万葉集(NHK)』(のべ480首)などなどのいずれにも採られていない歌が17首もありました。以下の通りです。
・君により言の繁きを故郷の明日香の川にみそぎしに行く(4・626)八代女王
・世間も常にしあらねばやどにある桜の花の散れるころかも(8・1459)久米女郎
・夕されば小倉の山に伏す鹿の今夜は鳴かず寐ねにけらしも(9・1664)雄略天皇
・石上布留の早稲田の穂には出でず心のうちに恋ふるこのころ(9・1768)抜気大首
・我が背子に我が恋ふらくは奥山の馬酔木の花の今盛りなり(10・1903)作者不明
・黙もあらむ時も鳴かなむひぐらしの物思ふ時に鳴きつつもとな(10・1964)作者不明
・人言は夏野の草の繁くとも妹と我れとし携はり寝ば(10・1983)作者不明
・遠妻と手枕交へてさ寝る夜は鶏はな鳴きそ明けば明けぬとも(10・2021)柿本人麻呂歌集
・我が宿に植ゑ生ほしたる秋萩を誰れか標刺す我れに知らえず(10・2114)作者不明
・物思ふと隠らひ居りて今日見れば春日の山は色づきにけり(10・2199)作者不明
・よしゑやし恋ひじとすれど秋風の寒く吹く夜は君をしぞ思ふ(10・2301)作者不明
・我が背子が言うるはしみ出でて行かば裳引きしるけむ雪な降りそね(10・2343)作者不明
・日並べば人知りぬべし今日の日は千年のごともありこせぬかも(11・2387)柿本人麻呂歌集
・ひとり寝と薦朽ちめやも綾席緒になるまでに君をし待たむ(11・2538)作者不明
・色に出でて恋ひば人見て知りぬべし心のうちの隠り妻はも(11・2566)作者不明
・笠なしと人には言ひて雨障み留まりし君が姿し思ほゆ(11・2684)作者不明
・かにかくに物は思はじ朝露の我が身ひとつは君がまにまに(11・2691)作者不明
上野先生、知られざる名歌を意欲的に収集なさっていますね。作者不明歌が目立ちます。
これらの歌、じっくり読んで、参考にさせて頂きます。
こういった著書の選歌に当たって、落とせない著名な歌がある一方で、著者としては、知られざる名歌をどれくらい拾い上げられるかというのも大きなポイントでしょうね。
そういった歌に新たに光が当たるのはすばらしいことと思います。
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以前ブログにも書いた通り、現在古典集成にて万葉集を読み進めていますが、改めて・・・・いろいろありますねえ・・・
ところで・・・上野先生といえば、今度の土曜日、三輪山セミナーにてお話を聞く機会がありそうです。
楽しもだなあ・・・
投稿: 三友亭主人 | 2019年8月12日 (月) 22時35分
三友亭主人さん
読み進めていらっしゃる万葉集歌の中に、「おお! こんな歌があったのか」という歌にも遭遇されていらっしゃることでしょうね。来年のお正月のブログ、楽しみにしています。
上野先生の講演、早速ググってみました。「令和」ですね。タイムリーです。
三輪山セミナー、今年もまた豪華メンバーですね。ご自宅から歩いて行かれる場所というのが何とも羨ましいです。
投稿: 玉村の源さん | 2019年8月12日 (月) 23時24分
ちなみに25日には同じ場所で桜井夏期大学というのがありまして、こちらでは万葉文化館の井上先生が「令和」についてのお話をなさいます。こちらもまた行く予定となっています。4月に関西大学の村田先生のお話(まあ、こちらはそれが主たるテーマではありませんでしたが・・・)を聞き、今度は上野先生と井上先生の「令和」についてのお話を聞き・・・それぞれのご主張についての聴き比べ・・・・楽しみですねえ・・・
投稿: 三友亭主人 | 2019年8月13日 (火) 08時35分
三友亭主人さん
おお。それは楽しみですね。
上野先生、井上先生、今年は殊の外お忙しいことでしょう。
大変とは思いますが、万葉ブームはありがたいことです。
投稿: 玉村の源さん | 2019年8月13日 (火) 14時46分