明治13年の『万国史略字引』
こういうものを入手しました。
明治13年の刊行です。
書名は、以前当ブログでも同種の例を取り上げましたように、『万国史略』という別の本があって、その「字引」ということになりましょう。「字引」は、その書籍の中に出てくる語の読みや簡単な意味を記したもの、といった意味です。
『万国史略』というのは世界史の教科書でしょうね。
巻頭部はこうなっています。
表紙題簽に「両点」とありますが、これは、語の右にふりがな形式でその語の音が示されているのと、語の下に訓または意味が示されているのと、その両方を指して「両点」と言っているものと思われます。
このページの最後の行にある「交通」などは、読みは簡単でしょうから、下にある「ヨシミヲムスブコト」という注記が眼目なのでしょう。
「漢土」の部は詳細で、唐とか元とか、そういった王朝ごとに項目が立っています。
上のページには、劉備や諸葛孔明の名が見えます。後ろから3行目にある「私」の「ハタクシ」という表記に興味を惹かれました。「ワタクシ」を「ハタクシ」と書いています。語中語尾ならともかく、語頭における「ワ」を「ハ」と書いていますね。仮名遣の混乱ということでしょうか。
国別の分量の内訳は以下の通りです。数字はページ数です。
漢土:28
印度:1.5
波斯(ペルシャ):1.4
亜細亜土児其(アジアトルコ):3.9
希臘(ギリシヤ):2.3
羅馬(ラウマ):7.3
人民ノ移転:1.5
仏蘭西(フランス):7.9
英吉利(イキリス):2.3
独逸(ドイツ):3
瑞西(ズーイス):1.4
和蘭(ヲルランド):1.4
嗹馬(テンマルク):2
西班牙(スベイン):3.3
以太利(イタリア):3.5
土児其(トルコ):0.6
露西亜(ロシヤ):1.4
亜米利加洲:1
合衆国:2.1
漢土が群を抜いて多く、28ページあります。第2位の仏蘭西(フランス)7.9ページの3.5倍以上です。次いで羅馬(ラウマ)の7.3ページ、亜細亜土児其(アジアトルコ)の3.9ページ、以太利(イタリア)の3.5ページ、西班牙(スベイン)の3.3ページとなります。
漢土が多いのは、歴史が長かったり、わが国に及ぼした影響が大きかったり、という理由もあるでしょうが、ふりがなを振るべき人名が多いということもありそうです。欧米の場合、国名は漢字表記ですが、人名は出てきません。『万国史略』で、欧米の人名はカタカナで表記されているのかもしれません。このあたり、国会図書館のデジタルライブラリなどで、『万国史略』を見てみれば良いのでしょうけど。(^_^;
フランスの項はこのようになっています。
語に関しては、最後の行の「豪猛」に付いている「タケシキ」という訓に興味をおぼえました。今なら「タケキ」となるところでしょう。
あれこれ興味深いです。
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