明治5年の『日本地理往来』
このようなものを入手しました。上下2冊です。
角書きに「郡名産物」とあるのに惹かれました。
下巻の奥付に次のようにあります。
明治5年の刊行ですね。
巻頭付近に折り込みの地図があります。
関東地方。
旧国名が四角の枠で、府県名が楕円形の枠で囲まれて書かれています。現在の栃木・群馬は宇都宮・栃木・群馬に分かれています。現在の茨城・千葉は茨城・新治・印幡・木更津に分かれています。現在の埼玉の西は入間です。
中部地方。
現在の愛知から静岡西部にかけては愛智・額田・浜松です。現在の長野は、北部のみ長野で、信濃南部と飛騨とをあわせた地域は筑摩となっています。
本文は次の通りです。府県別ではなく、旧国別になっています。
頭注欄に郡名や産物が記載されています。
大和国の産物は次のように書かれています。
墨筆、葛粉、索麺、柿などは今も変わりませんね。
上野国の頭注欄。
1行目の「吾妻」、現在は「あがつま」ですが「あづま」となっています。3行目の「群馬」、少なくとも江戸時代の初め頃までは、古代と同じく「くるま」と読んでいたことが分かっていますが、明治の初めでもなお「くるま」と読まれていたのかもしれません。「邑楽」も今は「おうら」と読みますが、これも、古代に「おほあらき」→「おはらき」と変化したと考えられています。明治の初めにも「おはらき」と読んでいたとしたら興味深いです。
不審なのはその下の「新田」です。この本では「しんでん」とあります。この郡は、新田義貞の新田氏発祥の地ですので、古く「にひた」「にふた」などという読みはあったにせよ、「しんでん」は考えにくいところです。
同時代資料は貴重ですが、正しいとは限らないと思われます。そこがまた同時代資料の面白いところです。
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大和の名物・・・大方はなるほどって感じですが、煙草なんてのもとっていたんですねえ~
紙産業が昔から・・・てな感じだったので、合羽なんかはたぶん紙製のものなんでしょうねえ。
投稿: 三友亭主人 | 2018年8月18日 (土) 08時13分
三友亭主人さん
あ、煙草はもう栽培されていなさそうですか。煙草の消費自体、減っているのでしょうね。
紙が各種ありますね。他に、材木や檜細工もありますし、やはり大和は山に囲まれた木材の豊かな国なのですね。
投稿: 玉村の源さん | 2018年8月18日 (土) 14時44分