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2018年8月28日 (火)

ゆききの岡

 今年の1月に「古い「飛鳥名所」絵はがき」という記事を載せました。

 その中に「(飛鳥名所)ゆきゝの岡より香具山、耳成山を望む」という1枚がありました。
Asukameisho08_2
 画面中央奥やや右に耳成山が見えます。その右に山裾を接するようにして香具山が見えます。

 関係地図です。
Yukiki01
 この「ゆきゝの岡」というのは幻の地名と思われます。

 万葉集の巻8に次の歌があります。

 明日香河行き廻(み)る丘の秋萩は今日降る雨に散りか過ぎなむ(1557)丹比国人

 二句目の原文は「逝廻丘之」です。

 万葉集諸本の訓は、類聚古集・紀州本・広瀬本・西本願寺本・寛永版本などすべて「ユキヽノヲカ」(類聚古集はひらがな)です。

 注釈書では、仙覚抄・拾穂抄・代匠記・考・略解などは「ゆききのをか」、古義・全釈・総釈・万葉集評釈などは「ゆきたむをか」で、評釈万葉集・古典全書など以降は「ゆきみるをか」になり、今に至っています。

 近現代ではもう「ゆききの岡」は過去の訓になっていたはずですが、よく読まれた寛永版本や略解が「ゆききの岡」であるために、意外と定着していたのでしょうかね。この絵はがきでは、「ゆきゝの岡」を固有名詞として扱い、その岡から撮った写真としてキャプションを付けています。

 「ゆきゝの岡」がどこを指すのかについては、三友亭主人さんから、太田登先生のご著書「日本近代短歌史の構築: 晶子・啄木・八一・茂吉・佐美雄」ではこの「ゆききのをか」を 「雷丘」としていらした旨のご教示をいただきました。

 ということで、実地踏査に行ってきました。(^_^)

 まず、雷丘に登りました。木が多くてあまり眺望がききませんでしたが、耳成山と香具山の位置関係は絵はがきとは合わないように思いました。下に降りようとしたら道が分からなくなって、しばし焦りました。

 無事に下に降りて、甘樫丘に登りました。きつかったです。気温や日射しのせいもありましょうが、それ以上に、日ごろの運動不足と、老化による体力の低下を実感しました。もっと体を動かさねばと反省しました。

 甘樫丘からの眺望です。
Yukiki02
 違いますねぇ。絵はがきでは山裾同士を接している耳成山と香具山とが完全に離れてしまっていて、その中間に雷丘が位置しています。この写真を見ると、絵はがきで左側手前に位置しているこんもりとした森のようなものは雷丘のように思えます。

 耳成山と香具山の位置関係からは、絵はがきの撮影場所はもっと東のように思います。

 そこで、雷の交差点から東に進みました。下の地図にマークした位置から撮影しました。
Yukiki03
 そこから撮ったのが下の写真です。
Yukiki04
 耳成山と香具山の位置関係はピッタリです。ただ、雷丘は真横ですので全く写っていませんし、絵はがきは高い位置から撮っているように見えるのに対し、この写真はそうではありません。

 絵はがきの撮影位置はこの位置からもっと南の高台と思われます。

 それで、南を見渡したのですが、うまい候補地が見つかりません。飛鳥寺のあたりは高台ではありませんし。祝戸なら高台ですが、遠すぎてもっと沢山のものが写り込みそうです。

 不思議です。

 橿原神宮前駅から雷丘方面に向かうには、丈六の交差点から、石川池の北沿いの道を東に進んでいました。今回もその道を通るつもりでいたら、昨日のブログに登場したレンタサイクル店のご主人から別の道を教えて貰いました。もう少し北を東西に走る道です。新しく開通した道なのでしょうかね。やや遠回りにはなりますが、車道と歩道とがきっちりと分かれていて、安心して走れます。
Yukiki05
 ありがたい道ができました。

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コメント

楽しいご旅行になったようでよろしゅうございました。

実地調査もしておらず奈良の地もなじみがないので、このようなことを書くのは気がひけますが、Googleマップで耳成山と香具山の間を通るように線を延ばしてみると、源さんが撮影なさった「雷の交差点から東」のあたりを通って、岡寺の付近に行きます。Googleマップの左上のメニューで「地形」を選び、地図を引いて(ズームダウンして)いくと岡寺の付近は標高200mくらいのようです。甘樫丘が147m、香具山が152mと上の地図にありますが、何かヒントになるでしょうか。

源さんの後輩さん

 お久しぶりです。

 お調べ頂いて、ありがとうございます。

 岡寺のあたりに至りますか。私は橘寺あたりも候補に考えていました。

 ありがとうございます。今度飛鳥に行くときにまた実地踏査をしてみます。岡寺は標高がちと高いですけど。(^_^;

こんばんは、ずいぶん前にコメントさせていただいたものです。
奈良に来られていたのですね。^-^/
写真左端の建物は飛鳥寺の本堂ではないでしょうか!
「ゆきゝの岡」登ってみたくなりました。

Kさん

 お久しぶりです。
 2年前には、久米寺前の道しるべにコメントを頂きまして、ありがとうございました。

 絵はがきの画面左側の建物は飛鳥寺らしいですか。

 だとすると、「ゆききの岡」は、源さんの後輩さんご指摘の岡寺の可能性が高そうですね。橘寺からでは飛鳥寺はもう少し右に寄ってしまいそうです。

 ありがとうございます。今度岡寺に行ってみます。高齢なので、岡寺まで行くのはやや難儀ですけど。(^_^;

 あ、いや。

 岡寺まで行かずに、酒船石のあるあたりかもしれませんね。万葉文化館の南。まず、そちらに行ってみます。

こちらこそ通りすがりでしたのに謎解きに参加させていただけて嬉しかったです。
ありがとうございました!

絵はがきですけれど、
この場所は飛鳥寺のすぐそばに見えます。歩く人が見える距離。
私が思った場所はたぶん私有地(?)で入れないかも(?)しれませんが、
万葉文化館の展望ロビーからは高さは少し足りないですが、
絵はがきとほぼ同角度の景色が見れます。^-^/

Kさん

 なるほど。岡寺からでは飛鳥寺が遠すぎるかもしれませんね。

 万葉文化館の展望ロビーから同角度の景色を見ることができるというのはありがたい情報です。高さが少し足りないとなると、酒船石あたりが候補になりましょうか。ただ、酒船石のあたりには木がたくさん生い茂っていて、眺望がきかなかったような記憶がありますが。

 Kさんは飛鳥にお住まいなのでしょうか?

私は橿原市在住です。
私は絵はがきと地図をよく見たところ、
耳成山と香具山をこの角度でそして香具山を遮る物なく見れる集落は『飛鳥』しかありませんし、
絵はがき左端の寺院風建物は飛鳥寺(本堂の形が酷似しています)だと仮定して、
飛鳥寺からこの距離の斜めの道はバス道しかなく、
バス道の電柱(写真左下)が大きく写っているのでそこから数10mの距離の丘はここしかありません。
その確信している場所は万葉文化館のすぐ横(西)の高台です。

グーグルのストリートビューで確かめると
その丘は竹が茂っていて展望はききそうにありませんし私有地かもしれません。
でもすぐ東となりの万葉文化館の展望ロビー(建物の一番北側)からは飛鳥集落が見えそうと思っていたら、
たまたまストリートビューで館内の展望ロビーからの風景を見れました。

Kさん

 Kさんは橿原にお住まいでしたか。

 論理的な推定、大きな説得力を感じます。

 その地には竹が繁っている上に私有地の可能性もあるというのは残念ですね。
 地形が変わっていなくても、竹や木が茂っていて眺望がきかないと同じような写真は撮れませんね。

 今度、万葉文化館に行ってみます。

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