東海大学で古事記学会(2)
昨日の古事記学会の公開講演会のうち、「古事記と景観・天文考古学」という演題で講演をしてくださった北條先生は東海大学文学部歴史学科にご所属で、専門は考古学だそうです。
講演の目次は以下の通りでした。
このうち、3の「大和東南部古墳群の配列と龍王山」が興味深い内容でした。
箸墓古墳から西山古墳に至るまでの古墳群は、龍王山の520mの山頂を強く意識して営まれているということでした。
西山古墳といえば、以前は名前さえ知らなかったのですが、4年前に天理大学で萬葉学会が開催されたときに、蜂矢先生に教えて頂いて見学した古墳です。思わぬところで繋がりました。
さらに西に目を転ずると、唐古鍵遺跡も同じく龍王山を意識した位置に存在するとのことです。
そして、唐古鍵遺跡の位置は、夏至や冬至の太陽の昇る方角とも関係しているということでした。
さらにその西の伝応神天皇陵、伝仁徳天皇陵も一直線上に乗るのだとか。
これらの誤差は極めて小さく、また、視認可能な位置にあるとも述べられていました。
その点で、いわゆる「太陽の道」の線上に乗るとされる伊勢の斎宮などや、また出雲大社とあとどこか2ヶ所が一直線上に乗るという説に対しては、誤差の大きさがはっきりしない点、視認できないほどの距離にあるという点で、懐疑的な考えを持たれているようでした。
お二方目の「神話の体系化と神々―タカミムスヒノカミをめぐって―」という演題で講演をしてくださった寺川先生は、古い皇祖神と考えられるタカミムスヒがアマテラスにその位置を追われることになった結果、
1.天地創造神としての性格を失った。
2.多くの氏族の祖となる子神との関係を断たれた。
3.天孫に設定されたホノニニギとの関係を弱められた。
という3点を、根拠を丁寧に説明なさりながら、述べられました。
どちらの講演も、大変に興味深く拝聴しました。
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寺川先生のお話は興味深いですねえ。あのあたりの、古事記の冒頭では主役格の神様がいつの間にか影が薄くなってゆくのは、以前から疑問に思っていたところでした。聞きたかったなあ、このお話。ところで・・・アメノミナカヌシはどこにいっちゃったんでしょうねえ?
そしてそれにもまして興味深い竜王山と古墳群のお話し。こういう話はワクワクしましょね。それだけに世には結構強引なお話も出回っていますが、この御話はきっと安心してお聴きできたんでしょうねえ。
投稿: 三友亭主人 | 2018年6月11日 (月) 21時02分
三友亭主人さん
寺川先生ご本人は、「まとまらない話で」と言っていらっしゃいましたけど、興味深い内容でした。
造化三神は、記紀の冒頭部では大きく扱いが異なりますよね。
そして、アメノミナカヌシ。古事記では冒頭部に名前しか出てきませんね。日本書紀では全く登場していませんよね。
北條先生のお話はパワーポイントが効果的でした。
構成の3は本当にわくわくしました。
2つの講演は、来年の『古事記年報』に掲載されることと思います。楽しみです。
投稿: 玉村の源さん | 2018年6月11日 (月) 21時17分