「素髪」
今日、大井町線に乗っていたら、ドアにこのような広告が貼ってありました。
ポイントは「素髪」です。この語、初めて見ました。
「素肌」「素手」「素足」「素顔」「素うどん」などから考えるに、「素」というのは、「何も加えていない」「何も飾っていない」といったような意味と考えられます。
「稲羽の素兎」という例もありますが、これは朝倉山のオニさんにコメントして頂いても、……と、いきなり振ってしまいます。(^_^)
ともあれ、「素」の意味をこう考えれば、「素髪」の意味も何となく分かります。
「素髪(すがみ)」は『日本国語大辞典』には立項されていませんでした。新語ですね。しかし、ググってみましたら、「素髪」は結構出てきました。2012年の例もあります。新語とはいっても、ここ2~3年の語ではないようです。
そして、語義については、私は単純に「染めていない髪」、または「パーマを掛けていない髪」と考えたのですが、どうもそうではないようです。
ググって得た結果によると、「素髪」というのは、「その人本来の健康的な髪のこと」「髪に必要最低限の栄養を与えたもの」「”洗顔と化粧水と美容液を正しく行っているキメ細かな美しいお肌”の髪版」といったところのようです。
どうも「素髪」という語は、「素」の根本的な意味を踏まえて作られた語ではなく、直接的には「すっぴん」の派生語という風に理解すれば良いのではないかと思います。
電車の中であの写真を撮るのにちょっと勇気が要りました。(^_^; 幸い、私は終点で降りますので、終点1つ手前の駅を発車したところで、あのドアの前に陣取り、わが身を楯にして素速く撮りました。多分誰にも気づかれなかったと思います。多くの人はスマホを見ていますしね。(^_^)
なお、日国には「そ‐はつ【素髪】」は立項されていました。この語の意味は、「しらが。白髪。」とあります。新撰朗詠集〔12C前〕の例が挙がっていました。
「素」には「ありのまま」の意味の他に「白」もありそうです。この例はどうでしょうね。そのまま「白髪」なのか、それとも「染めていない白髪」なのか。
広告1つで、思考があれこれ広がりました。
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ちょいと「素人 語源」でググってみたら・・・白塗りをしただけの「芸のない」遊芸者を白人(しろひと)といっていた・・・というようなことがでてきましたが、「『素』というのは、『何も加えていない』『何も飾っていない』といったような意味だとするならば、素人を「しろうと」と読む根拠となるのでしょうが・・・
投稿: 三友亭主人 | 2018年5月19日 (土) 07時37分
三友亭主人さん
コメントをありがとうございます。
日国で「しろうと【素人】」の項を見ると、「語源説」に「愚人をいうシレヒトの転ともいうが、シロ(白)は素の義〔俚言集覧〕。」とありました。
『俚言集覧』の理解は、「きちんとした修行などをしていなくて、まだ素(す)の状態の人」ということでしょうかね。
語源はなかなか決めがたいものもありますね。
投稿: 玉村の源さん | 2018年5月19日 (土) 12時16分
一太郎の辞書にも登録されていない「素髪」は、美容室のサイトやブログなどで見かける言葉ですね。先日行った美容室のサイトでも使われていました。
カラーリングをしておらず、トリートメントやオイル・ジェル等を使っていない状態で、傷んでおらずなおかつ美しいさらさら髪、といった感じだと思います。源さんが調べられたイメージですね。
「素」の原義をありのままで美しい、だとされてしまうと、個人的にちょっと困ります。
素菟の解釈に影響が出てしまう。笑
一般に素菟の素は、ホワイトカラーの被毛(を衣服に見立てたもの)と解されることが多いのですが、それには疑問の余地がありそうと考えております。
日本書紀など、他の文献の素の用例を見てみると、単に色目の白をいっているだけではなく、染めてない、加工していない、生地のままの、むき出しの、といったニュアンスがあるのではという気がします。
当該神話の中に「衣服をはがされた」といった記述があることからも、素菟とは被毛をむしられた状態ではないかと思うのです。
野ウサギの被毛は、実は非常に抜けやすく、鷹などに捕まりそうになったときには捕まれた部分だけぽこっと外れるようにできているのだそうです。(逃げやすくするため)
古代人は、所々毛がむしられた(場合によっては薄皮ごと剥がれた……痛そう)野ウサギを目にすることは珍しくなかったのでは、と想像します。
話は元に戻りますが、美しい髪の表現としての素髪という言葉は、中古などにみられる「なまめかし」、ゴテゴテと化粧をしたり飾り立てたりしていない自然で生き生きとした美しさ、に近い感じかなと思っております。
ナチュラルビューティーですね。
ナチュラルビューティーを手に入れるために、化粧品などをあれこれ使ったりするのですが。( ^^)
投稿: 朝倉山のオニ | 2018年5月20日 (日) 12時57分
朝倉山のオニさん
コメントをありがとうございます。
いきなり振ってしまって、大変に失礼しました。(^_^;
オニさんは、「素髪」という語に先刻接していらしたのですね。私が遅かったのでした。
私は髪の毛の手入れなど何もしていないのですが、「素髪」とは言えなさそうですね。(^_^;
「素兎」のご説明、大変によく納得できます。被毛がなくなって素肌があらわになった状態を指しているということですね。
野ウサギの被毛が非常に抜けやすい、とのお話しも「おお!」です。
トカゲの尻尾といい(イカやタコの足もそうですかね)、野生動物は、わが身を守るために、体の一部を犠牲にすることがあるのですね。失われても再生するにしても、厳しい世界と思います。
ありがとうございました。
投稿: 玉村の源さん | 2018年5月20日 (日) 15時02分