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2016年7月 8日 (金)

『赤城詣』を実見

 先月、前橋市内の厳島神社(通称人丸神社)に行きました。この神社の境内には拾遺集に載る柿本人麻呂の歌を刻んだ歌碑があります。この歌碑については、神社の解説板に、「この碑は一四一年前、天保十二年の赤城登山記にあり、県内では最も古い歌碑の一つである。」と記されています。
Itsukushima05
 「天保十二年の赤城登山記」というのが日本古典籍総合目録データベースに載っておらず、この解説板の裏付けがとれませんでした。ところが、まほろぐメイトの源さんの後輩さんが探索してくださり、この「赤城登山記」というのは書名ではなく、赤城山に登った記録ということではないかとの観点から、実際の書名は天保十二年に書かれた『赤城詣』という本ではないか、そしてこの本は群馬県立図書館にある、というところまで調べてくださいました。

 以上、当ブログの「前橋の厳島神社(人丸神社)」「『赤城詣』」という2件をご参照ください。

 今日、前橋で仕事の日でしたので、群馬県立図書館に寄って、『赤城詣』を閲覧してきました。

 そこに、以下のような記述がありました。

>西に見ゆるは天台宗寿延寺は赤城大明神の御別当所にて
>御祭礼の節は登山して御代泰平民安全の御祈祷あり。
>同村土産(ウブスナ)は柿本人麿の古墳にや五輪あり。
>後に石に刻して人丸の古歌あり。
>  奥山の石垣沼の水こもりに恋や渡らんあふよしをなみ
>依て柿宮村と云しや。

 ここに登場する天台宗寿延寺は、厳島神社(人丸神社)の南東1.7kmほどの位置にあり、やや距離があるように思いますが、歌碑の歌詞は合っていますし、人丸神社の所在地は江戸時代に実際に柿宮村と呼ばれていたようで、その点は符合します。下の地図で、厳島神社は地図左上の前橋市役所の真南、寿延寺は地図下端の中央右寄りにあります。
Juenji
 「人麿の古墳にや」という五輪塔は人丸神社境内には見当たりませんでした。

 県立図書館所蔵の『赤城詣』は、近代に書写されたもので、前橋市立図書館の罫紙に書かれています。奥書は以下の通りです。

>此ノ書サマテ価値アルモノトモ思ハス参考トスヘキ文献トモ思ハサレドモ、
>郷土ノ事ヲ叙セルモノナレバ謄写セリ。用字ノ誤リ、テニオハノ誤リ頗ル多ク
>文辞拙ナルトコロ多シ。今改メスソノマヽトセリ
> 昭和八年一月十一日
> 佐藤雲外子

 そして、『赤城詣』自体の奥書は以下の通りです。

>天保十二年辛丑年晩冬雪日
>門人応需八十八□人(□は耆または耋か)
>    一徳斉光龍書

 「一徳斉」は「一徳斎」でしょうが、佐藤雲外子の誤写でしょうか。先掲の『赤城詣』の引用に「土産」とあるのも、「ウブスナ」ならば「産土」でしょうが、『赤城詣』の誤記か、雲外子の誤写かは分かりません。

 『赤城詣』の写本は、現在のところこの昭和八年の書写本しか知られていないようです。

 ということで、人丸神社の解説板にある「天保十二年の赤城登山記」というのは、天保十二年の『赤城詣』を指すものと見て良さそうです。とすれば、この歌碑は天保十二年にはすでに存在していたものということになりそうです。

 源さんの後輩さんに改めて御礼申し上げます。

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コメント

ご無沙汰しております。

不確か、かつ半端な調べ物で、源さんに見て来て下さいと
言わんばかりの情報を差し上げて、失礼しました。

奥書のご様子からは、佐藤氏はこの書をあまり重視して
いらっしゃらなかったようですが、謄写して下さっていて
良かったですね。貴重な資料だと思います。

源さんの後輩さん

 その節は御教示ありがとうございました。やっと県立図書館に行くことができました。現物を見ることができてすっきりしました。

 以前御教示頂いた中に、ネット上の「往来物解題」(http://www.bekkoame.ne.jp/ha/a_r/B4a.htm)がありました。そこには、『赤城詣』について、以下の記述があります。

>◇あかぎもうで [0005]
>赤城詣∥【作者】奈良一徳斎(文蔵・右門・峻沢・光竜)作・書。【年代】天保一一年(一八四〇)作・書。
>【分類】地理科。【概要】『上毛古書解題』によれば、原本の所在は不明で孔版一冊本が伝わる。……

 この記事の執筆者は『赤城詣』の現物は見ておらず、『上毛古書解題』に依ってこの項を書いているようです。

 ここには「天保一一年」とありますが、これは『上毛古書解題』の誤りかもしれませんね。また、「孔版一冊本」というのも気になります。県立図書館に所蔵されている『赤城詣』は孔版ではありません。

 ただ、昭和八年佐藤雲外子の奥書に「郷土ノ事ヲ叙セルモノナレバ謄写セリ。」とある「謄写」をガリ版と誤解した可能性があるかと思います。日国に次のようにあります(用例省略)。

>とう‐しゃ 【謄写】〔名〕
>(1)書きうつすこと。うつしとること。書写。
>(2)謄写版により印刷すること。また、その印刷。

 念のため、『上毛古書解題』も見なくてはいけないですね。この本も県立図書館にあります。

 一度で用が済まない私。(^_^;

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