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2016年7月27日 (水)

西河原森ノ内遺跡木簡

 ネットオークションであれこれ買っていますけど、博物館等の展示会の図録も収集品の1つです。(^_^)

 先日、「古代地方木簡の世紀-文字資料から見た古代の近江-」という図録を入手しました。平成20年の7月に開催された企画展で、会場は、近江風土記の丘 滋賀県立安土城考古博物館です。
H2007oumimokkan01
 中身をお目当てに落札しました。100ページ近くの充実した内容で、大満足です。
H2007oumimokkan02
 それはそれとして、品物が届いて開封した時、表紙を見て「おお!」と思いました。表紙左側の西河原森ノ内遺跡出土木簡の写真が、今まで見た中で一番大きく鮮明だったからです。授業で使えます。(^_^)

 あまりにも鮮明なので、「はて?」と思いましたが、これ、どうも現物ではなく複製のようです。そりゃぁ鮮明なはずです。(^_^) でも、教材に使えます。

 この木簡、字順がほぼ日本語の通りであるということで、貴重な木簡です。時代は天武朝中期とされます。上野三碑の1つである山上碑は天武10年のもので、これまた日本語の字順通りです。両者、どちらが古いか微妙なほど時期が接近しています。その両者が同様の特徴を持っているということで、セットでお互いの価値を高めています。

 釈文は次の通りです。

 ・椋直伝之我持往稲者馬不得故我者反来之故是汝卜部
 ・自舟人率而可行也  其稲在処者衣知評平留五十戸旦波博士家

 訓読文は次の通り。

 椋直(くらのあたひ)伝ふ。我が持ち往(き)たりし稲は、馬得ぬ故に、我は反り来し。故(かれ)、是の汝卜部、自ら舟人率(ゐ)て行くべし。其の稲の在処(ありか)は、衣知評(えちのこほり)の平留(へる)の五十戸(さと)の旦波(たには)博士の家ぞ。

 日本語の字順と異なるのは2ヶ所。1つは、 「不得」(得ぬ)、もう1つは「可行」(行くべし)です。これらは、さすがに「得不」「行可」とは書けなかったのでしょうね。助動詞を万葉仮名で書ければ、「得奴」「行倍之」となるところですが、万葉仮名は固有名詞にしか用いられていません。助詞助動詞を万葉仮名で書くという発想がまだなかったのでしょう。あとから見ればコロンブスの卵のようなことなんですけどね。

 ただ、漢文の助字「者」を助詞の「は」、「而」を助詞の「て」として使った例はあります。「稲者」「我者」「其稲在処者」、「舟人率而」です。

 山上碑では助動詞の「ず」や「べし」が用いられていませんので、全体が日本語の字順になっていますけど、もし「ず」や「べし」があれば、そこは森ノ内遺跡のような字順になっていたかもしれません。

 この先、まだまだ興味深い木簡が出土してゆくことでしょう。上代にはそんな楽しみがあります。

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コメント

もしやと思い,滋賀県立安土城考古博物館を検索してみました。
今年の4月,朝鮮人街道を歩いた時に,安土城にも寄ったのですが
そのとき,ニアミスしていました。
歩くのが主目的なので,道から見えましたがパスしたところでした。
機会があれば,行ってみたいと思いました。

萩さん

 お近くまで行かれたのでしたか。

 街道歩きが目的だと、あちこち立ち寄っていては捗りませんから、どうしてもパスすることが多くなってしまうのでしょうね。

 遅ればせながら、私もググってみました。この博物館は、この附近の遺跡等をメインにしている関係上、弥生時代・古墳時代と、中世から近世初期にかけても城郭建築と織田信長が柱のようですね。常設展示も、特別展・企画展も充実しているように思いました。

 図録のバックナンバーも販売していますね。私が買った図録もありました。1000円のところ半額の500円で、送料82円。ネットオークションで良い買い物をしたと思いましたが、博物館から直接買う方が安かったです。(^_^;

表紙の寫眞の木簡が複製とすれば、どの程度精確に摸寫されてゐるか不明ですから、釋文を穿鑿しても詮無いことですが、字面だけからの判斷ながら私には相當に無理な釋文に見えます。右の表面の簡は、
椋□□之我□□稻者馬□傳故我者反來之故是汝卜部
とするほかないやうに思ひました。

筒井先生

 日中留守にしていましてコメントが遅くなりました。済みません。

 ご指摘、ありがとうございます。

 今まで鮮明な図版を見ることができず、公開されている釈文をそのまま受け容れていました。

 この図録に現物の写真と赤外線写真とが掲載されていましたので、ご指摘を受けて、遅ればせながら検討してみました。

 ここには画像を貼れませんので、新規記事としてアップしました。
http://mahoroba3.cocolog-nifty.com/blog/2016/07/post-aaa9.html

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