磯部温泉のこと
昨日の群馬学連続シンポジウムでは、私の話の中で、文化14年(1817)の温泉番付をプロジェクターでご披露しました。この番付は以前ネットオークションで入手していたものです。まほろぐでも、去年の10月4日 (土)に「文化14年の温泉番付」というタイトルでご披露しました。
ネットオークションで入手したものが役に立つこともたまにあります。(^_^)
上半分が番付で、下半分は草津温泉の絵図になっています。これは上半分です。
東の大関に草津温泉、前頭三枚目に伊香保温泉があります。
東の三段目には、まほろばやまほろぐにも登場した川原湯温泉が。
西の三段目には嶋の湯(たぶん四万温泉でしょう)と老神温泉が見えます。
勧進元には沢渡温泉の名も見えています。さすが群馬は温泉県です。ところが、磯部温泉の名はありません。文化14年の時点ではまだあまり知られていないようです。この画像からはそんなことを話すつもりでした。
ところが、私の前に話をしてくださった、パネリストのお一人である大工原豊氏が下のようなデータを示されました。
この画像を示しつつ話されたところに依れば、磯部温泉は天明3年(1783)の浅間山の噴火で刺激されたのか、この時に源泉が湧出し、天保12年(1841)(画像の「天明」は「天保」の誤り)に温泉小屋が作られ、大手拓次の生家に繋がる貸し浴場が建設されたのは文久2年(1862)とのことです。
温泉番付の文化14年(1817)の時点では源泉はすでに湧出はしていますが、温泉小屋すらまだ作られてはおらず、番付に載るまでには到っていなかったのでしょう。
大工原氏のお話がこの番付としっくり繋がりました。すっきりして気持ち良かったです。(^_^)
磯部温泉の歴史については、「磯部温泉 吾妻鏡」でググると、結構たくさんのサイトがヒットします。そして、本文には、判でついたように、「吾妻鏡の中に「磯部村此所に塩の湧き出る所あり」とあることから、鎌倉時代にはすでに温泉が湧出していたものと推測される。」という文章が書かれています。そしてさらに、それらには判でついたように吾妻鏡のどこにそう書いてあるのか、所在が全く書かれていません。
私も吾妻鏡の中を探してみたのですが、この記事は見つかりませんでした。どうも吾妻鏡にはこの記事はないようです。そんなことも話したところ、大工原氏もうなづいていらっしゃいました。大工原氏もこの記事が吾妻鏡には載っていないとお考えのようです。
誰かが誤った記事をサイトに載せてしまったのでしょうね。それを多くのサイトが無批判にそのまま転記してしまったか、あるいは裏付けを取ろうとはしたが取れないまま転記してしまったのでしょう。
いい加減なもんです。
自分で確認していないのなら、せめて、「吾妻鏡の中に……という記事があるそうだ」という伝聞形式で載せるのならまだしも、見てもいないものを「吾妻鏡の中に……とあることから」などと、自分で見たかのように書くのはアウトです。こういうレポートが提出されたら「不可」を付けてしまいます。
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いやあ・・・終わりのほうのお言葉、耳が痛いです(笑)
これからはせいぜいアウトにならぬよう気張ります。
ところで・・・やっぱり、草津と有馬ですねえ。東の7番目(前頭の4枚目)が我が郷土の「鳴子」。
嬉しいですねえ・・・
でも、見る限りでは大和はありませんね~
投稿: 三友亭主人 | 2015年12月14日 (月) 23時02分
三友亭主人さん
いやぁ、自戒の言葉でもあります。(^_^)
でもほんと、ネット上の記事は玉石混淆ですから、気をつけないとあぶないですよね。
草津と有馬、さすがの両巨頭ですね。
あ、鳴子は伊香保とお隣同士ですね。画像を切り貼りするとき、伊香保で切らなくて良かったです。(^_^)
大和がないのは寂しいですね。今もあまり温泉は無いのでしょうか。
投稿: 玉村の源さん | 2015年12月14日 (月) 23時23分