源氏の猫
今朝の朝日新聞「天声人語」で久し振りに恩師のお名前を見ました。
いろいろと理不尽な批判をされることもあった恩師ですが、丸谷才一氏と井上ひさし氏は常に変わらず応援団を自任してくださっていました。
今日の話題は丸谷氏との対談『光る源氏の物語』の中にある「若菜」の巻の猫を取り上げたものです。源氏関係の本はほとんど持っていない私ですが、この本は持って「は」いました。
ネコを飼っている人は増えているようですね。散歩をさせなくても良いとか、犬よりも楽な面があるのも一因のようです。
「天声人語」がこの話題を取り上げたのは、そういうこともありましょうが、一昨日が「古典の日」ということと、今日が「文化の日」ということが主たる理由です。
「天声人語」の近くには「折々のことば」というコラムも連載されていますし、かつては大岡信氏の「折々のうた」の連載もありました。こういうものが新聞の第1面に毎日載るということは、いかに文学や文化が多くの人の関心を引きつけるものであるのかを如実に語っていましょう。文系の学問は大切です。なのにねぇ……。
「天声人語」には源氏物語に猫の鳴き声を「ねうねう」と表記していたことが引用されています。「ねこ」の語源は不明で、よく寝るから「寝子(ねこ)」といったというのは納得しそうですが、山口仲美先生の説でしたか、「ねうねう」という鳴き声から来ているのではないかとする説には説得力を感じます。
今、猫の鳴き声は「にゃーにゃー」と書くのが普通でしょうが、にゃにゅにょという拗音が表記されなかった平安時代には、「ねう」で表したのでしょうね。「にゃん」が「ねう」かな。
「べーべー」鳴くから「べこ」だとすれば、「ねうねう」鳴くから「ねこ」というのはよく理解できます。
丸谷氏は、「日本文学史を闊歩するすばらしい猫」が2匹いる、ということで、この「若菜」の猫と漱石の猫とを挙げていることが「天声人語」に書かれています。
そういえば、NHKの「歴史秘話ヒストリア」で、最近、漱石の猫の回と、忠犬ハチ公の回とがありました。この2回を1枚のDVDに入れて保存しておこうと思っていたら、デッキが不調で、今、修理に出しています。無事に直って帰ってきたら、早速実行しようと思います。
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丸谷才一さんや井上ひさしさんはとても好きな作家さんでしたのでよく読んでいました。どちらも山形のご出身、そして井上さんは青春時代を宮城で過ごしていらっしゃったせいなのか、妙に一々の言い分に共感を感じることが多くって・・・
そんな文章の中によく源さんの恩師の先生は出て来ていたのは覚えています。源さんの御師匠に対するバッシングが強くあった頃は、私が丁度大学にいた自分で・・・なにぶん京都の方の方々が多い大学でしたので論調はそちらの方に傾きぎみで・・・
右も左もわからない私たち学生はどうしてもそちらの方に引きずられていましたが・・・やはり萬葉集を読んでいくとなるとどうしても頼りにしなければならない方ですからいつも「?」「?」「?」でした。
ただ週に一度いらっしゃっていた、伊勢の方の大学にいらっしゃったM先生は、源さんの御師匠についてそんなバッシングとは異なる内容のお話をしていらっしゃったように記憶しています。
投稿: 三友亭主人 | 2015年11月 3日 (火) 23時05分
三友亭主人さん
かなりバッシングがありましたよね。本質とは関係ないような部分でも。
丸谷さん、井上さん、M先生などは本質的な部分に対しての強い信頼をお持ちだったのでしょうね。
直木孝次郎先生も、古くからの友人同士としての信頼をお持ちだったと思います。
投稿: 玉村の源さん | 2015年11月 4日 (水) 02時14分
すみません・・・M先生ではなくN先生でした。
投稿: 三友亭主人 | 2015年11月 4日 (水) 07時26分
三友亭主人さん
あ、N先生でしたか。
いや、伊勢の方の大学ということで、真っ先に思い浮かんだのがN先生でしたので、はてなと思いました。
で、伊勢の大学出身で、今そこにお勤めのM先生が思い浮かび、そちらを念頭にコメントした次第です。どちらの先生もわが恩師のことを高く評価していらしたと思います。
投稿: 玉村の源さん | 2015年11月 4日 (水) 10時23分