海原はかまめ立ち立つ
今日の夕方、勤務先から駅へ向かう途中で見た光景です。
休耕田に水が溜まっていて、そこに鳥が来ていました。東から西にカメラを向けることになり、逆光で、色も飛んでしまっています。この鳥は鴨の仲間でしょうか?
筒井先生のご教示を期待しつつ、アップです。
もう1枚。
なかなか自然豊かな土地です。(^_^)
これを見て、ふと万葉集の2番歌を思い出しました。
舒明天皇の国見の歌で、「国原は けぶり立ち立つ 海原は かまめ立ち立つ」という部分があります。奈良も群馬も海なし県ですので、海は見えません。「ダムを見て海だと叫ぶ群馬の子」という川柳も思い出しました。
あの2番歌を解釈するに当たって、以前は、ため池を海に見立てたのだろうとか、ユリカモメならば川を遡って内陸まで飛来する、などと言われていました。
今は、実景である国原を出したことで、言葉の上で対になる海原を持ち出し、そこを結節点として奈良の意味で歌い出されたはずのヤマトを、日本の意味のヤマトにすり替え、スケールの大きな歌に仕立て上げた、大変に技巧的な歌とする解釈で良いのでしょうか。
私はその解釈で良いと思いますが、舒明天皇はあるいはこんな風景も見ていたのかなぁ、と思った次第です。
見立てならば、見えている鳥は別にカモメでなくても良いわけですし。
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カモをカモメに見立てて詠んだ、ということですね。ありうるカモ(笑)。
でも、冬季に海の近くに行ったことがあるのかもしれません。
伊予行幸は冬ではなかったでしょうか。
この歌のカモメが伊予行幸時のカモメだということではなく、実際にカモメを見たことがあった可能性は否定できないのではと思ったことでした。
写真の鳥たち、餌と涼の両方を求めて水辺にやってきたのでしょうか。
早く涼しくなるといいですね。
投稿: 朝倉山のオニ | 2015年8月10日 (月) 23時33分
朝倉山のオニさん
あ! 確かに。
舒明天皇の時代に伊予行幸がありましたね。普段海を見ることができなかった舒明天皇も、この時に海をご覧になり、カモメもご覧になったかもしれませんね。
その折の記憶が2番歌に反映しているというのは大いにあり得ることと思います。
斑鳩とヒメにも興味を示されるなど(これは皇后の方でしょうか)、鳥に関心があったのかもしれません。
おもしろいです。
カモとカモメと、語源的に関係あるかなぁ、などとも考えますが、カモメの古形がカマメだということになると、この思いつきは成立しがたいかもしれません。(^_^;
水田にはあまり鴨は来ず、休耕田には普通水はないのでやはり鴨は来ず。この休耕田はなぜか水を湛えていたので、こういった光景を見ることができました。珍しかったので、ついシャッターを切ってしまいました。
本当に、餌と涼と、その両方を求めてのことかもしれませんね。
餌は植物ですかね。いえ、先日見かけたオタマジャクシのことがちょっと心配になりました。(^_^;
投稿: 玉村の源さん | 2015年8月11日 (火) 00時31分
人麻呂でもだれでも・・・あの時代の大宮人は本当に海に出かけると我を忘れて・・・って感じではしゃいでますよね。
でも、これは今の奈良県人も同じで・・・海を見ると本当に無邪気に喜んでしまいますよ。
海辺育ちの私ですから、この辺りを客観視できますので、そのあたりを指摘すると初めてそんなこと意を言われたって顔をしますからね
いつだったか・・・修学旅行の引率で福島まで行ったとき、子供たちは途中で見えた浜名湖や、向こうで見た猪苗代湖を見ては海だ海だとはしゃいでました・・・
でも、時々思うんですよ。大和盆地から水が抜け出しているのは大和川一本。しかも王寺を過ぎたあたりはいつ崩れてもおかしくない細い渓谷になっていて・・・もしここが大地震かなんかで崩れたら・・・どうなっちゃうんだろうかって・・・
そんな時はまさに「海原に」って感じになっちゃいますよね・・・本当の海ではありませんが・・・
投稿: 三友亭主人 | 2015年8月11日 (火) 20時42分
>そんな時はまさに「海原に」って感じになっちゃいますよね
「海原は」でした。すみません。
投稿: 三友亭主人 | 2015年8月11日 (火) 20時48分
三友亭主人さん
「ダムを見て海だと叫ぶ群馬の子」は群馬だけのことではなかったのですね。(^_^)
海なし県同士、親近感が湧きます。♪
海って、怖いものでもありますけど、魅力的なものでもありますね。
大和盆地の水の出口は1つだけでしたか。そうなると、そこが封じられてしまったら確かにエライことですね。
投稿: 玉村の源さん | 2015年8月11日 (火) 21時35分
濟みません、呼ばれてゐたのに出が遲くなつてしまひました。
一般に淡水鴨は北海道以北の地で繁殖し、冬鳥として本州以南に渡來します。ただ輕鴨(かるがも)のみは全國的に繁殖してゐて留鳥です。したがつて今の時期に見られる鴨はほとんど輕鴨のはずです(實際には、眞鴨(まがも)との交雜種である合鴨(あひがも)を含む)。
形態上の分りやすい特色は嘴の先が黄色く、足が橙色であることです。嘴については2枚目、3枚目の寫眞でも確認することができます。
投稿: 筒井茂徳 | 2015年8月12日 (水) 00時05分
筒井先生
こちらこそ済みません。
勝手にお呼び立てしてしまいました。鳥のことなら(もちろん、書は元よりですが)筒井先生という強い信頼感がありますので。
明解なお答えをありがとうございました。なるほど、場所と季節とを組み合わせることによって、絞り込めるのですね。
色もろくに分からないような写真で申し訳なく存じます。
本当にありがとうございました。
投稿: 玉村の源さん | 2015年8月12日 (水) 00時30分