『上野国地誌略』
先日来『日本地誌略字引』のことを何回か取り上げてきましたが、ご縁といいましょうか、この度『上野国地誌略』という本を入手しました。またまたネットオークションです。
上下2冊で、私が入手した上巻は明治19年刊の初版の再版、下巻は明治23年刊の改訂版です。群馬県が編纂し、群馬県内の尋常小学校で用いるための教科書のようです。
下の画像は下巻の奥付です。売捌書林の筆頭にある煥乎堂は今も存続している群馬県内で最も有名な書店です。
上巻巻頭の「附言」の冒頭は以下の通りです。これによれば、尋常小学校2年次に近所の地理を学び、それ以降にこの本で群馬県のことを学ぶという順序を想定しているようですね。この附言自体は大人(教員?)向けに書かれていますよね。小学生には難しすぎましょう。
本文は例えば以下の通りです。
これも小学校3年生には難しいでしょうね。ルビは全くないし。でも、教員の解説付きで、これで学んでいたのでしょうかね。
なお、左ページの中程には「榛名山は上野三山の一にして」とあります。上毛三山というくくりがいつ頃から行われていたのかに関心があったのですが、1つの資料になります。
巻末には折り込み地図も収められています。下の画像は上下左右が欠けていますけど、実際はちゃんと群馬県全体が収められています。
« 節分のSuicaペンギン | トップページ | ぐんまちゃんの「おくすり手帳」再び »
「群馬あれこれ」カテゴリの記事
- 高崎でG7のデジタル相会議(2023.04.29)
- 明治27年の「旅館改良組」(2023.04.21)
- 方言せんべい(6)(2023.04.03)
- 明治36年の『一新講社』(2023.03.29)
- 「ぐんま広報」の3月号に群馬弁の解説(2023.03.24)
「史料・資料」カテゴリの記事
- 複製本『宸翰』(1)(2023.05.28)
- 明治2年の『増補新令字解』(2023.05.23)
- 『名頭苗字尽』(2023.05.20)
- 明治12年の『小学習字 名頭字尽』(2023.05.11)
- 明治19年の『西洋遊戯 かるた使用法』(2023.05.09)
しかしまあずいぶんと難しい教科書ですね。
これで授業し、それをある程度理解していたとなると、当時の子どもたちの読む力というのはどれほどのものだったのかと思われてきます。
自分の父親も戦前の国民学校しか出ていたかったのですが、かなりの読解力があったことが思い出されます。戦前の国語教育のありようなのでしょうか・・・聞いてみると「なあに、ただ何回も音読させられただけだ・・・」と答えるだけだったんですが・・・つまるところ、繰り返し読む・・・と言うことだったんでしょうかね。
でも、これを使って教えるとなると先生達も結構大変そうな気もするんですが・・・
投稿: 三友亭主人 | 2015年2月 5日 (木) 07時38分
三友亭主人さん
コメントをありがとうございます。
ほんと、難しい文章ですよね。でも確かに音読すると心地よい響きがありそうに思えます。
論語など漢籍の素読をしていた流れなのでしょうかね。
先生達は大変そうですね。こういうのを見ると、「地誌略字引」は教師用という気がしてきますね。(^_^)
投稿: 玉村の源さん | 2015年2月 5日 (木) 07時53分
とても興味深い本です。ご紹介ありがとうございます。売りさばき書林は、前橋の煥乎堂のみならず、沼田にも山田屋ありました(最近は知らないけど・・・)。藤岡の松野屋は書店はやめたけど、教科書の取り次ぎは続けています。ここに出ている書店は今も、教科書を卸しているんじゃないでしょうか。
竹内輝吉さんの「群馬県平民」ってなんじゃ~~という感じですね。「明治は遠くなりにけり」です。
投稿: しーちゃん | 2015年2月 5日 (木) 19時06分
しーちゃんさん
私が知っているのは煥乎堂だけでしたが、あのリストには、他にも、現在も、あるいは最近まで営業している書店があるのですね。
今から125年も前のお店が続いているって、凄いことだと思います。
投稿: 玉村の源さん | 2015年2月 5日 (木) 21時23分