カタカナの起源
数日前のNHK NEWSWEBに、「カタカナの起源は朝鮮半島にあったか」という記事が載っていました。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130902/k10014204441000.html
西暦740年ごろ新羅で書かれたあと奈良時代に日本に伝わったとされる、東大寺所蔵の「大方廣佛華厳経」に、漢字を省略した多くの文字が角筆で書かれているのが発見されたということです。
広島大学の小林芳規名誉教授と韓国の研究グループが、この中の1つの巻物を調査したところ、墨で書かれた経典本文の横に、角筆で書かれた文字が見つかり、それらは1100行余りの全編にわたって360か所に書き添えられ、中には、「伊」のつくりの部分など漢字を省略した文字も多くあったということです。
小林名誉教授によると、これらの文字は漢文を読み下すために使われたとみられ、漢字の横に添えられた読みがなとみられる文字は、新羅の言語だということです。このため小林名誉教授は、「漢字を省略して作るカタカナの起源が当時の朝鮮半島にあった可能性が考えられる」と話しているとのことです。 注目すべき発見と思います。
経典が書写されたのは740年頃ということで、角筆による書き込みはそれ以後のものでしょうが、その書き込みが新羅語だということなので、書き込みは日本に伝来する前になされたものでしょうね。この経典の日本への伝来が本当に奈良時代なのか、あるいは実際はもっと下るのかというあたりが課題として残るとは思いますが、興味深い発見です。
もっと古い時代の日本にも、たとえば左に図を載せたように、七世紀後半の滋賀県の北大津木簡に「阿佐ム加ム移母」と記したものがあり、大宝二年(702)の戸籍にも「ツ」の文字が見えますので、これらもカタカナの源流とはいえましょうが、今回発見されたものは、経典の訓読を示したものという点でカタカナと直結しそうです。
この記事について、ネット上では結構批判的なことが書かれているようです。こうあって欲しい、そうあって欲しくないという気持ちは分かりますけど、大事なのは真理の探究ですから、学問的なことには学問的な姿勢で向かうべきです。
仮に、カタカナの起源が朝鮮半島にあったとしても、向こうではそれは広がることなく廃れてしまい、表音文字を自由に使えるようになるのは15世紀のハングル登場まで待たなければなりませんでした。
一方、日本では、9世紀にはひらがな・カタカナが用いられるようになり、これによって日本人は自由自在に日本語を表記できるようになりました。そして現代では、日本語文は、漢字・ひらがな・カタカナ・ローマ字を、それぞれの用法によって混用することで、読みやすく豊かな表現を可能にしています。
それは大いに誇るべきことでしょう。そういうことを理解する方が大事なのだと思います。
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ニュースでこの発見が流された時には、ちょいと興奮しましたよ。本当に興味深い発見ですね。
今回の発見が直接日本の片仮名に繋がって行くものかどうかは、まだいくつかのステップを経ないといけないのでしょうけれど、その進展が楽しみです。
・・と同時に、ネット上での反応については予想されたことではありますが少々げんなりさせられたものでもありました。
自らの思いこみや願望ではなく、事実を大事にしてほしいと思います。
投稿: 三友亭主人 | 2013年9月 5日 (木) 18時44分
三友亭主人さん
コメントをありがとうございます。
今後の展開が楽しみですね。
ネット上での反応はほんとにどうかと思います。虚心坦懐ということが大切ですね。
本人達はある種の愛国心の持ち主なのでしょうが、「何を馬鹿なことを言っているのやら」という評価を受けたのでは、結果的にマイナスにしかなっていないわけで、愚かなことです。
投稿: 玉村の源さん | 2013年9月 5日 (木) 22時15分