好評の(?)創作童話の第5弾です。
うさぎの学校ではいろいろなことを学びます。

中でも、「いなばのしろうさぎ」と「うさぎとかめ」は、学習指導要領が変わっても、変わらずに教えられています。
「いなばのしろうさぎ」からは、人をだましてはいけないということを、「うさぎとかめ」からは、どんな状況でも油断してはいけないということを学びます。
あとは、うさぎの生き肝を食べても何の効能もないということも学びます。デマと戦うためです。
「うさぎとかめ」の話を学んだぴょん太は、うさぎがかめに負けたことが残念で堪りません。大昔のことなのに、この話は多くの人に知られています。何とかして名誉回復したいと思いました。
でも、今さらかめと再戦しても仕方ありません。足の速さは比べものになりませんので、勝って当たり前です。
そこで、仲良しのかえるのけろきちくんと競走しようと思いました。

「ねえねえ、けろきちくん、ぼくとかけっこしない?」
「いいね。でも、うさぎとかえるとでは勝負にならないよ。そこで、こういうのはどうだい。今年のNHK大河にちなんで、浜松から豊橋まで競走しない? 途中に浜名湖があるから、ぼくは泳ぎ、きみは浜名湖の北の岸を走る。それでハンディになるんじゃないかな」

「けろきちくん、相変わらず日本地理に詳しいねぇ。これは、ほら、あの、……」
「たにぐくのさ渡る極み」(^_^)
「あ、それそれ。じゃ、1週間後に」
その夜、ぴょん太くんは夢を見ました。
夢に、黒、白、灰色のうさぎが現れました。

黒うさぎがこう言いました。
「この勝負は絶対に勝たないとね。どんな手を使っても。どうだい、知り合いのワニくんに頼んで、背中に乗せて貰うとか、空飛ぶぐんまちゃんに頼んで空を飛ぶか、舞ちゃんに頼んで空飛ぶクルマに乗せて貰うとか」



すると、白うさぎがこう言いました。
「そんなのダメだよ。卑怯な手を使って勝っても意味ないよ。正々堂々と戦わないと」
「何を言ってるんだい。かめに負けた雪辱戦なんだから、絶対に勝たなくちゃ。バレなきゃいいんだよ」
「誰も見ていなくたって、お天道様は知っているし、自分だって知っている。ズルして勝ったら、一生後悔するよ」
「灰色うさぎはどう思う?」
「それぞれに正しい」
夢から覚めたぴょん太くんは、正々堂々と競走することにしました。友達のけろきちくんをだます様なことはしたくなかったのです。
当日、ぴょん太くんは全力で走りました。湖を回り切ったあたりで疲れ果てました。
ちょっと休憩しようと横になったら、あっという間にそのまま寝てしまいました。

どれくらい寝たでしょうか。はっと目が覚めると、日は西に傾いています。
「しまった!」
大急ぎで立ち上がると、全力で走り出しましたが、けろきちくんは既にゴールしていました。
何のことはない、「うさぎとかめ」の再現です。
ぴょん太くんは家に帰ると、泣きながら寝てしまいました。
その夢にまた3羽のうさぎが現れました。

黒うさぎは、「だから言っただろ。言われたとおりにすれば良かったんだ」と言いました。
白うさぎは、「ズルをしなかったのは偉いけど、寝ちゃったんじゃ何にもならないよ」と言いました。
灰色うさぎは、「正々堂々と戦って、立派だったよ。途中で寝てしまったのは、全力で走って疲れたせいだよね。油断したわけじゃないんだから、仕方ないよ。けろきちくんともずっと仲良しでいられるし、良かったんじゃない?」
一方、けろきちくんは、ぴょん太くんとは別の道を通ったために、ぴょん太くんが途中で寝てしまったことは知りませんでした。
もし、同じ道を通っていたら、道で寝ているぴょん太くんに気づいたことでしょう。
そうしたら、けろきちくんの頭の中にも黒いかえると白いかえるが出てきて、
「お! チャンスチャンス。ぴょん太くんを起こさないように、そうっと脇を通ろう」
「ダメだよ。起こしてあげないと」
などと、言い争いをしたことでしょう。別の道を通って幸いなことでした。
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